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スカイのスポンサー撤退を徹底解説

ランス・アームストロング:大変なことになったな。

ーー驚いたね。

ランス:しかし、まぁ10年もやったんだから十分じゃないか?大成功だろう。

ーー7年で6回のツール総合優勝だからね。

ランス:それも三人(ウィギンス、フルーム、トーマス)のイギリス人でだ。この価値は大きい。俺が走っていたころは英語は誰も使っていなかったのにな。

ーーでもみんな、あと10年はスカイが勝ち続けると思っていたんだろう?

ランス:ああ。それはチームの人間も同じだろう。ゲラント・トーマスとも契約延長したばかりだったからな。

ーーたしか3年契約(2021年末まで)だったよね。それにベルナルとも契約延長したんだよね?

ランス:5年だ。5年だぞ?1〜2年が普通な自転車ロードレースの世界で、5年は異例だ。それぐらいベルナルがとんでもない選手だってことだが…同時にチームは最低でも5年はつづいていくと思っていたということだ。しかし、それが突然…バーンだ。

ーーまさかだよね。

ランス:報道によると、チームは少なくとも2021年までは安泰だと選手や代理人に伝えていたらしい。最大で2024年までとも言っていたそうだ。

だが、これでチームスカイのデイブ・ブライルスフォードは新しいスポンサーを探さなくてはならない。それも急がなくてはならない。

ーーたしか、正式契約は8月1日から可能なんだよね?

ランス:ああ。しかし選手とチームとの合意はもっと前だ。有力な選手だとツール開幕前には大方決まっている。

ーーあと半年じゃないか!

ランス:いや、実際はもっと短い。チームスカイにはライバルチームがヨダレが出るほどほしい選手がゴロゴロいるんだ。その選手たちを引き止めておくためには、もっと早い段階で決まっている必要があるだろう。じゃなきゃ新スポンサーが決まったとしても、選手の大量流出は防げない。

ーー大変だね、見つかるのかな?

ランス:ツールを4回勝っている選手と、今年の優勝者がいるんだ。それに将来有望な21歳もいる。こんな美味しい物件、世界中探したって見つからないぞ。それがたった50億円で買えるんだ。プロスポーツの世界から見れば、破格の安さといっていいだろう。

ーーそもそもなんでスカイはスポンサー撤退を決めたの?やっぱりフルームのサルブタモール問題が影響したのかな?

ランス:いや、それは関係ないだろう。なんたって今年のツールを制したのは全くのクリーンなゲラント・トーマスだ。それに21歳のベルナルも控えていた。

評判じゃない。あくまでも金の話だ

ーーモスコンのパンチが影響したっていう報道もあるけど。

ランス:愚問だ。モスコンなんて選手だれも知らない。

ーー僕はてっきり今年のツールを失格になった後に、モスコンがこっそりパリでの祝賀パーティーに参加したのがまずかったのかと思っていたよ。

ランス:それは確かにアホとしか言いようがないが、全く関係ない。これは親会社のゴタゴタが巻き起こしたことだ。

ーー21世紀フォックスが関わっているんでしょ?あのルパード・マードックが。

ランス:これは少し複雑でな。そもそもチームスカイの運営会社はイギリスの衛星放送局スカイがすべて所有していた。しかし、親会社のスカイが売られることになったんだ。そこで手を挙げたのが、我らがアメリカの21世紀フォックスだ。アメリカ人が愛してやまないフォックスだ。君も好きだろう?

ーーもちろんさ。ニュースはフォックスしか観ないよ。僕のおばあちゃんとした約束なんだ。娘にもフォックス以外は観るなとキツく言っているぐらいだ!

ランス:おい、ここはテキサスだぞ?追い出される前に話を進めよう。

そもそもスカイは、アメリカのケーブルテレビ局であるコムキャストにも狙われていた。だが、コムキャストは同時にフォックス自体の買収も考えていたんだ。

ーーそりゃすごいね。まぁマードックもかなりの歳だからね。もう90歳近いだろ?

ランス:だが、今年の夏になってコムキャストはフォックスの買収を断念して、スカイの買収に注力しはじめたんだ。そうすれば欧州のネット局が手に入るからな。

ーー面白いね。で、結局どうなったの?

コムキャストのフォックス買収はなくなったが、フォックスは米ウォルト・ディズニーに買収されたんだ。(正確にはフォックスのコンテンツ事業)

ーーワオ。ややこしくなってきた。

ランス:その時すでにフォックスは39%のスカイ株を持っていた。つまりスカイの残り61%を、コムキャストとディズニーのどちらが握るかという争いになったんだ。

ーー来年のツールでチームスカイの背中にミッキーマウスが描かれるかもしれなかったってことだね。それはそれで見てみたかったな。

ランス:そもそも2016年末の時点でスカイはフォックスの完全子会社になることで合意していた。しかしイギリス政府の妨害もあり、今年の夏にフォックスのスカイ買収を認めたんだ。

ーーえっ?!なんでここでイギリス政府がでてくるの?

ランス:ユニオンジャックには青の方(民主党支持)が多いだろう?

ーー上手いねランス。

*実際はマードックがイギリスの他メディアも所有していたため、英政府はメディアの寡占を警戒し、子会社化の審査を長引かせていた。

ランス:そして。コムキャストとフォックスの間でスカイの競売が行われたのだが、結果的にコムキャストが勝利したんだ。

ーーえっと、つまりチームスカイの親会社はコムキャストってこと?

ランス:ああ、そういうことになる。まだスカイの39%をフォックスが握っているけどな。

ーーじゃあ悪者はコムキャストってことだね?

ランス:ビジネスに悪者も何もいないが、チームスカイからみればコムキャストが悪く見えるだろうな。それにフォックスはチームスカイの運営を支持していたみたいだしな。

ーーあのマードックが??

ランス:正確にはその息子のジェームズ・マードックだ。あのデイブ・ブライルスフォードと懇意だったらしい。ヤツは長くスカイの会長を務めていたが、10月に取締役会を去った。つまりチームスカイはスカイの最大の支持者を失ってしまったんだ。もしフォックスがスカイの完全子会社化していたら、チームスカイはそのままになっていた可能性は高いだろう。

*テスラに移ると噂されているジェームズ・マードック自身がチームスカイの新しいスポンサーになるのではないかという報道もある。

ーー皮肉だね。これからチームスカイはどうなってしまうのかな?

ランス:まずはスポンサーを探さないといけない。だが、いまの予算規模(約50億円)は難しいだろうな。当然、その半分程度にになる可能性が高い。俺たちが思っている以上にブライルスフォードが優秀だったら話は別だけどな。

ーー優秀だと思う?

ランス:ヤツが賢かったらUCI会長と口喧嘩なんてしないだろうよ。あれに何のメリットもないからな。それにサルブタモール問題の時のヤツの対応は0点だった。目も当てられないほど酷かった。ブライルスフォードが大型スポンサーを掴まえられるとは…とても思えない。

ーーだったら君はどうだい?Uberでかなり儲けたんだろう?

ランス:チームのオーナーよりUCI会長のになりたいな。そうしたらあの忌まわしいヘルメットとサングラスを廃止できる。

ーーその時は広報として雇ってくれよ。

Source: VeloNews, Reuters, 日本経済新聞

 

語られる内容は事実に基づいていますが、会話は全ては創作です。

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