【翻訳】スカイが直面している最大の窮地。ウィギンスはドーパーだったのか?DCMSのレポートとは何なのか?ベテランジャーナリストたちが語る。

自転車ロードレースのポッドキャスト番組の最大手である『The Cycling Podcast』が、サー・ブラッドリー・ウィギンスのTUE問題について語っていたので、一部を抜粋し(順序を入れ替え)翻訳しました。

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リチャード・モーラ(以下リチャード):さぁ、今週あった「スカイとウィギンスのこと」についてどこから始めようか?

まずDCMS(英国デジタル・文化・メディア・スポーツ省の特別委員会)からのレポートが34日の深夜に公開された。衝撃的というわけではなかったが、「チームスカイは倫理的に認められる一線(ethical line)を越えた」という内容だった。大事なのはそれが「合法の一線(ルール違反)」ではないということだ。内容自体はこの18ヶ月間ほどのウィギンスTUE問題に関しては議論されてきたことと同じだが、それがDCMSの特別委員会による報告という事実はいままでの意味合いと異なり、本件に重みと権威が加わってくる。この事実とそれに関する報道によって、スカイは最大の危機に直面することになっている。

ライオネル・バーリー(以下ライオネル):まずレポートには、スカイとウィギンスがTUE(*事前の手続きが認められれば禁止物質であっても例外的に使用できる制度)を利用してトリアムシノロンを使用した詳細が書かれており、しかしそれは「倫理的な一線(ethical line)」を越えているという内容だ。いままでのどの機関も、ここまで強い批判はしていない。また、スカイが2012年ツールに向けた練習で、組織的に選手にコルチゾンを服用させていたということも記載されている(選手名は明かしていない)。しかし、それらはアンチ・ドーピング機構が禁止していることではない。つまり倫理的に問題があるかもしれないがルールは犯してはいないんだ。今回の報告で目新しい事実といえば、当時の英国自転車協会とチームスカイに関わっていたリチャード・フリーマン(Richard Freeman)という医者の名前があったことぐらいだろう。

まとめると、このレポートは特別委員会の見解の主張であり解明ではなかった。そうであったため、ウィギンスが直ぐに反論ツイートをしたのだろう。

また、ファンシーベアハック事件以来、ウィギンス本人からの本件に関するコメントが得られていなかったが、今回のレポートを受けBCCのインタビューに答えている。
*ウィギンスのインタビュー動画付き。ここでは「TUEは論理的に正しかった」とDCMSの報告を批判している。

この一件でわからないのが「なぜこの事件の中心であるウィギンスが参考人として事件の解明に参加(貢献)していない(できない)のか」ということだ。TUEは彼(の症状)に対して与えられたのにも関わらずだ。

リチャード:もう一つ不可解なことはコーチとしてチームスカイと英国自転車協会に関わったシェーン・サットン(Shane Sutton)の発言が挙げられる。彼は以前「ウィギンスの治療について何も知らない」と答えている。つまりその時点で彼はその治療が「倫理的に問題があるという認識がなかった」ということだ。しかし彼は後になって「マージナルゲインの為にTUEを利用した」とチーム・スカイの医師であるリチャード・フリーマンを批判した。だからこの辺りの事実関係が明らかになる必要がある。*BBCのインタビューでウィギンスは「シェーン・サットンの発言の真意が分からない」と発言している。

ライオネル:ウィギンスはあくまでもトリアムシノロンを治療目的で使用したと強く主張している。その理由は数年に渡って苦しんできた喘息だ。その喘息を患っている事実をどこまで公表していたかなど、突っ込もうと思えば細かいポイントはいろいろと出てくる。だが、繰り返しになるがウィギンスのトリアムシノロンは医療目的だったという主張を、DCMSは認めていない。それが事実ならばスカイとウィギンスは、医療とか別の目的(能力向上)でトリアムシノロンを摂取したことになる。しかし、別の視点から観てみるとスカイとウィギンスは「その当時のTUEに違反していない(能力向上を目的だったとしていても)」ともっと強く主張することが可能なのだ。「UCIのルールに則っており、第三者機関である医療団体から正式にTUEと認められていた」とね。問題の論点があちらこちらにいってしまっている。僕自身DCMSの50ページに及ぶレポート全てに目を通したわけではないが、ドーピング規則に違反しているという事実はどこにも書いていなかった。また誰もウィギンスをドーピング違反者だと糾弾することは不可能だろう。正直、僕はこの騒動の現在地と、この議論が一体どこに向かっているかがわかっていない。

ダニエル・フリーブ(以下ダニエル):ウィギンスがドーピング違反になりうる仮説は二つ立てることができる。まずは「ジフィーバッグ」として有名なトリアムシノロンが2011年のドーフィネ期間中に使用されたのであれば、それは立派なドーピング違反になる。まぁそうであったとしても、規約違反というよりも規約を詳しく知らなかったぐらいのことでしかないし、その処遇も3ヶ月の出場停止程度のものだろう。*例としては2016年のTUE申請漏れで3ヶ月の出場停止を受けたサイモン・イェーツなどが挙げられる。

もう一つは、TUEの必要性をでっち上げていた場合だ。しかしWADAの規則のどこにもそういった場合の対処方法が書いていない。記載されているのは、症状を誇張したり、申請方法を誤ってしまった場合のみだ。その前例も、僕の知る限り…ない。

リチャード:興味深いことにDCMSレポートには「WADATUEルールの範囲内でウィギンスは服用したが、それは能力向上目的だった」とあるが、そもそもWADATUEの規則とは「医療目的」であるから、これは(TUEであると同時に能力向上目的だった)矛盾になってしまう。それにもしドーピング違反があったのだったらそれをそのまま書けばいい。

ライオネル:そもそも、2011年のドーフィネ最終日にフランスに小包が持ち込まれたと一番初めに報じたのはデイリー・メール(*英国の東スポ)でのマット・ロートン(Matt Lowton)という記者よるものだった。

この一件にはまた違う説があって、それはウィギンスはそのトリアムシノロンを2011年のドーフィネ最終ステージを完走した後に服用したというものだ。しかし、仮にレース後であってもその日の深夜まではレース期間なんだ。しかし、その証明もされていない。とにかく今回の報告にはそれらを打ち破るほどの事実は記載されていない。またウィギンスも「それは誤りであって、実際に起きた事実とは異なる」と主張している。つまり、この報告がなされる前と後で事実は何も変わっていないんだ。

だが、変化と言うならば「チームスカイとウィギンスの評判は間違いなく落ちた」ということだ。また本当にトリアムシノロンに能力向上の効果があるのかということも、様々な意見があるのが現状だ。今回の件によって、「ウィギンスは能力向上の為に薬を利用した」という物語が型どられてしまった。いまハッキリしている事実は、スカイは禁止されているラインに近づきすぎたということだ。それが越えていたのか否かは置いておいても、彼らはその近くまで行きすぎてしまった。また、本件がなぜ2011年、2012年に明らかにならなかったのか、数年して明るみに出たのかという側面も我々は意識しなければならない。

リチャード:これは倫理的(道徳的)判断(moral judgment)の問題なんだ。それに、どうやらイギリスの主要メディアはスカイとウィギンスを悪者に仕立てたがっているように見える。そして、それによって一般の人たちは非常に混乱しているのだと思う。僕の自転車ロードレースを知らない友人から「ウィギンスについてどう考えればいいのか?」と一行のメッセージがきたのだが、これに対して簡潔な答えができるわけがない。そういう複雑な状況なんだ。人々がドーピング問題に関して白か黒かハッキリしたがるのだが、本件はそうではないんだ。

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リチャード:2010年のツアー・オブ・ブリテンの取材に行った時、たまたまデイブ・ブライルスフォードのそばに座っていたら、年老いた女性が近づいていって彼に「イギリスの自転車界を発展させてくれてありがとう。イギリスに沢山の金メダルをもたらせてくれてありがとう。」と感謝していたんだ。

だが、ここで強調しておきたいことは、僕らはこのチーム(スカイ)が勝とうが負けようがどちらでもいいんだ。ただ、スカイを今後信用できるかどうかが大事なんだ。そしてブライルスフォードはインタビューで「何も心配する必要はない。」と答えている。だが、僕らがよく議論していることだが、勝利への野心は信念を捻じ曲げ、越えてはいけない一線を越えさせてしまうことがある。他のチームより潤沢な資金と同時に、スカイは「清廉」を訴え続けている。だが、今回はその自らがかがげた「清廉性」に苦しめられている。その一方で、アンチ・ドーピングに関して何も信念を発表していないチームがフリーパスを受けている状態は果たしてフェアなのだろうか?

ダニエル:確かにチームスカイは自転車ロードレース界に参入してきた際、新しいファンを獲得する為に、新しい倫理感(アンチ・ドーピング)をアピールした。しかし、いまスカイはその新しいファンに対し、その倫理に沿った行動ができているのだろうか?

ライオネル:今回の件で思い起こさせるのはランス・アームストロングの一件だ。あれが自転車界の全てを変えたと言ってもいい。人々が自転車ロードレース界の中で何が起きているのかについて知るキッカケとなった。ランスや周りの人間のストーリーについてだ。また、それらが巻き起こったのは2012年の終わりの方だった。まさにブラッドリー・ウィギンスがツールで総合優勝した直後だ。

別に僕はショーン・イェーツ(Shawn Yates)一人吊るし上げようというわけではない。僕が思うに彼はドーピングについて詳しかったからチームスカイに雇われたのではなく、単に選手を強くするトレーニングの知識を買われたんだろうからね。確かに彼は選手時代、1989年のツアー・オブ・ベルギーで陽性反応を出している。Bサンプルでは陽性でなかったため、何の処罰も受けなかったけどね。

デイブ・ブライルスフォードはチーム・スカイ発足時に「過去にドーピングに関わった人をチームに加えない。」と宣言した。だが、ショーン・イェーツは現役時代モトローラでランス・アームストロングと共に走り、ディスカバリー・チャンネルでスポーツディレクターとしてヨハン・ブリュイネールと共にランスを指揮した。また1996年ツールの総合優勝者であり、後にEPOドーピングを告白したビャルヌ・リース(Bjarne Riis)と共にスポーツディレクターとしても働き、ドーピング違反で出場停止明けのヴィノクロフとアスタナで共に働いている。何が言いたいかというと、デイブ・ブライルスフォードが言う「ドーピングとの関わりがない人物」の定義とは何なのか?ということだ。

つまり、あの発言は結果的に自転車界に広まっただけで、本当はスポンサーのスカイ衛星放送の経営陣に向けた言葉なのだ。だから発言の裏取りをされるほど「潔癖(正確)」なメッセージではなかった。

リチャード:そこ、そこでで出てくるのが

ライオネル:すまん、リッチーもうちょっと続けさせてくれ。自転車ロードレース界のルールが変わたんだ。何が言いたいかと言うと、2012年の722日にウィギンスがツールを勝った時、ショーン・イェーツはスカイのチームカーに乗っていた。また、ウィギンスがロンドン五輪の個人タイムトライアルで金メダルを獲得したレースでは、彼はウィギンスの後ろを走っていたイギリスチームの車に乗っていた。

その3年後、突然新聞記事に、誰も知らないベルギー人のピーター・ヴェルべケン(Peter Verbeken)がスカイで働いていることが問題になった。彼はUSポスタルでも働いていたスタッフだ。これは2015年当時、比較的大きく取り上げられた出来事だ。しかし彼は下っ端で、スペアのタイヤを運びドリンクを補充する程度の仕事しかしていないスタッフだった。しかし、その三年前に90年代〜00年代にかけて自転車ロードレース界で”何が”起きていたかを知っていた(関わっていただろう)人物であるショーン・イェーツに関しては、それほど話題にならなかったんだ。

何が言いたいかわかるか?つまり、その時代の流れが変わるにつれ話題になるニュースも変化するということだ。

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リチャード:今回のデイブ・ブライルスフォードに関して個人的な意見を言うと、彼の(メディアからの質問に対する)答え方は準備不分だ。僕らは彼のことを長く知っていて「クリーンな状況で(チーム発足から)5年以内にイギリス人ツール総合優勝者を出す」という宣言(目標)も聞いている。そしてそれを見事実現させた。注釈付きだけどね。

物事を白か黒で見ようとすること、善と悪に仕分けることは危険だ。人と人生はそれよりもっと複雑だからだ。チームスカイとイギリス自転車協会はここまでとても上手く計画を進めてきた。それに自転車界に多大なイノベーションをもたらした。それに関して疑いの余地はない。たしかに人が行うことには多少の乱雑さは仕方ないのかもしれないが、今回の医療記録の管理体制に関して言えば批判は当然だと言えるだろう。

*スカイの担当医師英国リチャード・フリーマン(Richard Freeman)が英国医事委員会(General Medical Cauncil)の調査を受け、チームスカイに関する当時の医療履歴を怠っていたことが発覚した。 

リチャード:スカイは最先端の慣習を自転車ロードレース界にもたらしてきた。それまで、チームに専属のコーチなどいなかった。それまで選手は各個人が契約しているコーチと共にトレーニングをしていたんだ。またウォームアップやクールダウンも常識になったし、ホテルの選手専用マットレスなどもそうなっていくのだろう。トレーニングキャンプで行われる練習内容も、過去どのチームも行っていないような内容だった。そして他のチームもそれを取り入れるようになっていった。資金面でもスカイは過去最高の金額を費やしているし、それは選手の年俸だけでなくスタッフや設備にも使われるようになった。だが、チームスカイも消滅する可能性も十分考えれるし、BMCなどの資金の多いチームがなくなる可能性だってある。先日、アスタナがスポンサーの支払いでゴタゴタしていたしね。今後、自転車ロードレース界が驚くような事態になる可能性は大いにあるんだ。

ダニエル:僕らのように、ツール中に三回の自己輸血をしたり、EPOやヒト成長ホルモンが当たり前だった時代から取材をしている立場から言うと、例えば「2012年のツールを総合優勝する選手が唯一使用したのはTUEを利用したトライアンシノロムだった。」と2008年の僕が聞いたら恐らくぶったまげるだろう。そして「なんて素晴らしいんだ!」と喜んだだろう。道徳の何もなかった、あのどん底みたいな状況と比べるとね。

スカイが雇ったショーン・イェーツやスティーブ・デ・ヨング(Steven de Jongh)などは、ドーピングが全盛の頃にチームで働いていた。そして彼らがドーピングに関わっていたという明確な証拠もある。しかし、その頃とはスポーツ・ディレクターという役割自体が変わっていて、もはや選手が使用する薬に関わるほどの影響力などない。過去にEPOを摂取していたからといって、いま選手にシリンジを打っているなんてことはないだろう。

確かに「2012年の出来事がTUEに適応するのか否か」は大事な議論だ。しかし自己輸血の血液が飛び交っていた19982004年を知っている者から言わせれば、TUEなんてちっぽけな出来事に思えてしまう。そういったスタッフをイギリス自転車協会が雇ってしまった背景には、単純に彼らがその事実を精査できるほどの体制が整っていなかった(未熟だった)からかもしれない。*事実、複数のスタッフが2012年でチームを去っている。

また、この数週間でのクリス・フルームの処遇や、最近のカヴェンディッシュの状態を見ていると、「(イギリス)自転車界は終わった」という印象を受けるかもしれない。だが、もし僕がスカイのように莫大な資金と、マーケットとするイギリス国民を相手にするイギリス籍のチームのGMだったら上手く立ち回る自信はない。なぜなら、人々は今回の出来事のニュアンスを正確に理解し、受け入れることはできていないからだ。スカイが引いていた「倫理的な一線」を説明するなんて無理だよ。僕たちみたいに一日中自転車ロードレースのことを考えていられるワケではないのだからね。それに、自転車ロードレースには複雑なルールと、沢山の権力が混在している。まあ、この状況は今後も続いていく問題だろうね。

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リチャード:事実としてあるのが「チーム・スカイは何もルール違反を起こしていない」が、「彼らは、許されているギリギリまで近づいた」。だが、果たしてそれは「プロスポーツ選手がプロスポーツ選手という責任の元で許されるべき行いだったのだろうか?」これはいま現在の世論の代弁だ。

ここからは僕の個人的な見解だが、我々ジャーナリストも含め、思い出さないといけないのが、これ(アンチ・ドーピング)を(自転車ロードレース界で)最初に掲げたのは2008年のガーミン(現EFエジュケーションファースト・ドラパック)だった。興味深いのは、彼らはそのモラルで今もなおファンを獲得していることだ。ガーミン発足から起こったことを思い出してみてほしい。チームにドーパーがたくさん所属していたことが発覚した。2012年にジロ・デ・イタリアで総合優勝後のライダー・ヘシェダルが、過去にEPOを使用していたことが明らかになった。トーマス・ダニエルソンも過去のドーピングが明らかになっている。仮にこれらの出来事(スキャンダル)がチーム・スカイで起こっていたら、チームの存続は不可能だっただろう。それぐらいの出来事だった。しかしガーミンはそれが明らかになっても、昨年のクラウドファンディングで明らかなように生き残っている。なぜだろうか?それはもちろん”その哲学を発信し続けている努力”もあるだろうが、単純に「ツール・ド・フランスで勝っていない」からなんだ。

ライオネル:とてもいい視点だと思う。なぜならジョナサン・ヴォーターズがガーミン発足時「アンチ・ドーピング」を掲げ、一番はじめに契約を結んだのがドーピングで出場停止処分明けのデイヴィッド・ミラーだった。その矛盾したメッセージを成立させたのは凄いことだ。白・黒がハッキリ付けられない世界だということを言動で表しながら、彼は「このチームはアンチ・ドーピングという立場をとる」という強いメッセージを訴え続けた。同時に「このチームはセカンドチャンスの場だ」とね。彼は「僕に正直に過去のドーピングを打ち明ければ、それを公表することはない。」と約束したのだろう。ライダー・ヘシェダルによってそれが公になってしまったのだが。しかも、それはウィギンスがツールで勝利する1ヶ月前の出来事だ。そして事実上ライダー・ヘシェダルは無罪放免のような扱いになっている。

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リチャード:今回のことに加え、ウィギンスは脱税疑惑の件もあるし、デイブ・ブライルスフォードとウィギンスの両者は今後転覆する恐れがあるし、イギリスの主要メディアは今回の件をまだ暴こうという欲がみえる。彼らはその困難を乗り越えられるのだろうか?チームスカイの未来はどうなるのだろうか?

そろそろ話をまとめよう。誰からいく?

ダニエル:じゃあ僕から。本件のポイントとなるのは、依然として「TUEが妥当だったのか否か」だ。スカイの医師だったリチャード・フリーマン、デイブ・ブライルスフォードとウィギンスが揃っているのに、いまだ「処方が最善の選択肢だった」という旨の記者会見は行われていない。また、当時の詳しい症状の説明もされていない。それさえ行えばこの争い消え去るはずだ。ジフィーバッグという言葉だけが独り歩きしても事件の解明にはつながらない。たしかに本件は証明する方も非常に難しいのだけどね。

また、ウィギンスが公でスカイ批判しているのも、スカイとしては少し悲しい出来事だろう。こういう事態になる前にデイブ・ブライルスフォードは詳細な説明を行うべきであったと思うのだけど、君たちが最後に彼にロングインタビューをしたのはいつ?

リチャード:たしか…2016916日だったかな。

ダニエル:君たちはデイブ・ブライルスフォードに「MPCC(仏発のドーピング根絶を目指す倫理運動をする団体)」に関する質問をしていた。なぜそれが大事だったかというと、ツール準備の為、「コルチゾンの練習時における使用」に対する姿勢を暴くことになったからだ。つまりチームスカイがMPCCに加盟していれば、練習でコルチゾンを使用していたか否かが明らかになったのだからね。

ライオネル:MPCCに加盟することで、チームはWADAより厳しいドーピングのルール下(コルチゾンの使用等)に選手を置くことになる。なのでチームスカイがそこに加盟しなかった理由の一つは、レース以外でのコルチゾンができないからなのかもしれない。あくまで憶測に過ぎないが。

今後何がおきるか正直わからないが、間違いないことはツール覇者であるブラッドリー・ウィギンスの輝かしい栄光は陰りを見せるということだ。悪いニュースは広まりやすいからね。また一般の人はスカイとウィギンスがしたことと、ランス・アームストロングとUSポステルがしたことの違いなんて分かろうとしない。「ツールを勝つ為に薬を使った」という事実しか見ないからね。

何れにせよ(今回のレポートを提出した)特別委員会はもう「ドーピング違反があった」と証明することは不可能だろう。なぜなら、それができるならば今回の報告書でしていただろうし。つまり、本件は我々が思っているよりも単純なことではないということだ。僕の個人的な意見としては、それならば(ドーピング違反が証明できないのであれば)こんな報告をするべきではなかったと思っている。ウィギンスには喘息の症状があり、その治療薬が能力向上の効果もハッキリしていない中で、ウィギンスとスカイに対しての意見が堂々巡りする結果にしかなっていないのだからね。

本件のポジティブな面としては、UCIWADAやアンチ・ドーピングに関わる人が、今後TUEなどあらゆるグレーな部分を無くしていく作業が進むだろう。DCMSの報告書には「WADAはコルチゾンと鎮痛剤のトラマドールを禁じるべき」だと書いてある。

ダニエルそれに、UCIも先日DCMSの報告書を受けた正式なコメントを発表していて、UCIとしてはその二つの薬物を禁ずるようにWADAにロビイングすると述べている。

リチャード:ああ、またイギリス・アンチ・ドーピング機構の最高責任者であるニコラ・サップステッドもラジオで、その二つを禁止薬物に指定するようにWADAに数年に渡ってロビイングしていると発言していた。これらはとても良識的な動きだと思う。また、それを取り締まっているMPCCもね。スカイが加盟しなかったことは、今となってはシニシズム(道徳を無視するような態度)といえる。加盟はアンチ・ドーピングの良いプロモーションにもなっただろうし。だた、複数のチームは選手のコルチゾン数値によってレースの出場が禁止されてしまったことを受け、MPCCを脱退している現状もある。しかしMPCCはとても正しいことをしていて、スカイもその大きな役割を果たせる存在になれたはずだった。そして加盟しなかったことは残念だ。

ダニエル:あと最後に言いたいのが、TUEに対して許可を出したのはUCIということだ。いまになってDCMSのレポートを支持するのなら、最初からTUEを認めなければよかったんだ。だからUCIの調査対象はスカイだけではなく、UCI内部にも及ぶべきだということを付け加えたい。

リチャード:ああ、その通りだ。またこの件については時間を取っていきた。ありがとう。

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