「クウィアトコウスキー…なんて言いづらい名前なんだ」ランス・アームストロングによる2018年ツール第14st評

集団先頭:ストゥイヴェン(トレック)が逃げ集団から飛び出し → それを追ったフライレ(アスタナ)が追い → その更に後ろからアラフィリップ(クイックステップ)が追走した。勝者はフライレ。ストゥイヴェンは仕掛けるのが早すぎ、アラフィリップは遅すぎた。

総合勢:ダニ・マーティン(UAE)がパンク → クウィアトコウスキー(スカイ)がコントロールする先頭集団からログリッチ(ロットNL)がアタック → ベルナル(スカイ)が追い、ランダ(モビスター)が落ちた → その後、キンタナ(モビスター)&バルデ(AG2R)も落ち → ログリッチを先頭に、Gトーマスフルーム(スカイ)デュムラン(サンウェブ)が続いてフィニッシュした。

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ランス・アームストロング:
今日のフィニッシュは面白かったな。MVPはジャスパー・ストゥイヴェン(26歳/トレック)だ。確かに勝てはしなかったが、 逃げ集団にはジルベールやアラフィリップ、そして勝利したフライレがいたのだから飛び出すしか勝つ可能性はなかっただろう。俺を含め、中継を観ていた全員が逃げ切れると思っただろう。ジョージを除いてだけどな。いつもジョージの言う通りになるんだ。

ジョージ・ヒンカピー:
まあね。また僕の予想が当たった。

ランス:勝てなかったが、ストゥイヴェンという選手はなかなか強い。ジロとブエルタでも勝っているしな。

ヒンカピー:僕のMVPはジルベール(36歳/クイックステップ)だね。昔からの友達というのもあるけど、自転車ロードレースがチームスポーツであるということを教えてくれるような走りだった。アラフィリップの力になっていたよね。

ランス:そう言えばジルベールもこの番組を聴いてるって?

ヒンカピー:そうなんだ。そうテキストメッセージが来たよ。凄い番組だってね。

ーー総合勢の動きでは、誰が目立ったかな?

ランス:それなら、今日も俺が好きなミカル・クウィアトコウスキー(27歳/ポーランド)の話もさせてくれ。何回トライしても正しく発音できてる気がしないが、この選手は…ただただ最高だ。

もしいまツールが終わって、この大会全体のMVPを選べというのなから間違いなくミカル・クウィアトコウスキーの名前を挙げるだろう。

強いし、自己犠牲心に溢れていて、プロ意識も高い選手だからな。だが、この選手の名前を話題に出す度にリスナーから「その発音は正しくない」という指摘がくるんだが…何回正解を聴いても発音が全くわからない。
↑日本では決着がつきました…というエントリ



ランス:今朝起きて一番始めに読んだ記事に書いてあったのだが、どうやらニバリのバーレーン・メリダが「選手を十分に守れなかった」として、ツール・ド・フランスを相手に法的な抗議に出るらしいな。

この動きに対する俺の意見は…ノーだ。

こんなの頭がおかしいとしか思えない行動だ。

ジョージはどう思う?

ヒンカピー:これは僕もおかしい行動だと思うけど、いままで巨大な権力を有しているASO(ツール主催者)に対して「ノー」という態度を示したチームはいなかった訳で、そういった意味ではこの姿勢はOKだと思うけどね。

ランス:ASO側は「フェンスは設置していたのに観客が勝手に沿道にできたから、こちらの責任とは言い切れない」(ランスの引用の意訳)と主張している。

ーーお金で解決するってこと?

ヒンカピー:まぁ、ASOはこういった事態に備えた保険に入っているだろうからな。その可能性はある。

ーー他のプロスポーツでも度々起きることとして、お金で解決するとその後の物事が変わっていくね。

ヒンカピー:そうだね。もしかしたらパンドラの箱を開けることになるかもしれないね。

ランス:煙幕は選手の視界を奪うし、呼吸もしづらくなるから禁止するべきだが、柵があっても観客はコースに出てくる。昨日も言ったように、俺は柵の設置には反対だ。

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ランス:ゲラント・トーマスがポディウムでブーイングにあったらしいな。

みんなクリス・フルームに何があったのか知っている。ASOが出場を拒否したり、それが翌日に覆ったりな。だが、いまマイヨ・ジョーヌを着用しているゲラント・トーマスはその話に全く関係していない。チームスカイに所属しているってこと以外はな。

もちろんそのブーイングはクリス・フルームに向けられている訳だが、どういうわけか同じチームのゲラント・トーマスもその対象になってしまっているんだ。

こんなことがあっていいのか?

まず、そのブーイングしている観客たちが愚かすぎる。

次に、ツール開幕の一週間前にクリスチャン・プルードム(ASOディレクター)の「フルームはツールに出場するべきではない」という宣言を含め、クリス・フルームの評判を下げることが沢山言われてきた。

だが一方で、ツールが始まってからプルードムはずっとカメラの前で「みんな少し落ち着こう」と訴えつづけている。誰がその言葉を聞くだろうか?そんなプルードムの言葉を真剣に聞くやつがどこにいる?

(Gトーマスやフルームへのブーイングを止めさせる為に)フランス人は誰の言うことなら聞くのだろうか?そのためにはプルードムなんかではなく、フランスで解説を担当している元選手たちに「落ち着け。お前ら器が小さいぞ」と言わせればいいんだ。



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ヒンカピー:選手に対して尊敬の念は抱くべきだよね。選手はみな力を尽くして走っているし、特にゲラント・トーマスは人生で最も大きな舞台で2勝をあげたんだ。イギリス人のファンは彼をもっと讃えてあげて欲しいよね。マイヨ・ジョーヌの選手を守る意味でも。

ーーゲラント・トーマスはとても好意を持てる選手のようだしね。

ヒンカピー:ああ。素晴らしい人間だ。

ランス:それに、何かの記事で読んだのだが、バーレーンというチームは選手に「クリス・フルームのそばを走らないように」という指示をしたらしいな。

ーーファンがフルームに何かをして(そのとばっちりを受けて)危険だから?

ランス:ああ。

ヒンカピー:同じ話を、君が現役最後の数年間に聞いたことあるぞ。君に対するアンチもたくさんいたからね。特に危険は感じなかったけど。

ランス:俺がフルームの立場だったら、コースの外側に寄らないけどな。危険すぎる。

ヒンカピー:実際フルームは観客にパンチ?ビンタ?されたらしいからね。

ランス:また明日!

 

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・一部を抜粋し、回を重ねるごとに意訳の割合が増えながらも訳した音源はコチラ↓*なお、ゲラント・トーマスへのブーイングの部分に関してはそのまま訳すと分かりづらくなってしまったので、大幅な意訳をしました。

・ランスの盟友ジョージ・ヒンカピーも登場しているランス自伝はコチラ↓

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