【後編】ランス・アームストロングによる「ロンド・ファン・フラーンデレン(ツール・デ・フランドル)」評

ランス・アームストロングのポッドキャスト番組『STAGES』による「ロンド・ファン・フラーンデレン(ツール・デ・フランドル)」評の翻訳、後編です。

【前編】ランス・アームストロングによる「ロンド・ファン・フラーンデレン(ツール・デ・フランドル)」評


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単騎で挑むサガンの内情

ーー(残り13km地点で)サガンがブリッジをかけ単独追走を試みた。結局上手く行ず集団に吸収されたんだけど、あれは作戦?それとも本能に従っただけ?

あれ本気でブリッジをかけようと考えてのアタックには思えないな。

ーーじゃあ三位を狙うためだったということ?上手く行けば二位をと?

うーん。それもあるかもしれないが、たぶんサガンはフランドルの三位とかどうでもいいだろうな。二位でも負けだよ。サガンにとっては。それより、レースを観てたらジョージ・ヒンカピーからメッセージがきたんだ「サガンは呼吸をしていない」って。集団の登りでサガンだけが呼吸をしていないように見えた。

ーー君の表現を借りると「鼻に指を突っ込んでる」ように見えた。他の選手が苦しくて舌が出ていたのに。

サガンについて聞きたいのだけど、彼ほどの選手がチームの力不足によって勝てないのはどういう気持ちなんだろうか?サガンは今のチームで満足しているの?それとももっと大きなチームに移籍したいと思ってるのかな?
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そもそもサガンは大きなチーム(ティンコフ)からボーラにやってきた。お金につられてな。別に批判しているわけではない。全てのスポーツ選手が同じだからな。だが同時に「このチームはどれだけ自分をサポートしてくれるのだろうか?」と考えるわけだ。「このチームでフランドルやグリーンジャージは手に入るだろうか?」ってな。サガンは一人でも勝てるが、さすがに全てのレースは無理だ。俺はボーラの総予算がいくらか知らないし、クイックステップのも分からないが、クイックステップはクラシックに特化したチームだ。彼らはツール・ド・フランスなんて狙っていない。春のクラシックを全力で勝ちにいっている。他のチームと予算がさほど変わらなくても、彼らはクラシックに資金を集中させ、勝てる選手を集めている。だから毎年9月のブエルタでクイックステップを見かけないだろう?クイックステップ4人を相手にサガン一人が勝てるわけないんだ。よっぽど運が良くない限りな。

また、今回はルフェーブルGMにとって11回目のフランドル勝利だ。俺調べだがな。つまり1993年のヨハン・ムセウから数えたら11回も勝っている。凄いことだ。

ーーレースを観ていてもGMの話なんて出てこないし、自転車ロードレースでは他のスポーツに比べ監督の話も少ない。それは何故だい?戦略の話とかもっと聞きたいのに。

それは時代の流れかもしれないし、単純に個性的な人が今いないだけかもしれない。俺が現役の頃は、多くがヨハン・ブリュイネール(元USポスタルやディスカバリーチャンネルのチームディレクター)の話をしていた。当時のGMや監督は個性的だった。いまはデイブ・ブライルスフォード等がそうかな。少し前のルフェーブルはもっと表にでてきていたのだが、ある日を境に一線を退いた印象がある。そういえば今日もフィニッシュ地点で見かけたな。

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そうだ。ずっと言いたかったことなんだが、フィニッシュ地点にいるメディアを締め出すべきだ。あの光景はアホすぎる。世界一バカな光景だ。選手は250km以上を走ってきたんだぞ。奥さんやチームメイトやスタッフ、GMと喜びを自由に分かち合わせてやれ。

ーー君は毎回あの光景に怒っているよね。その度に血圧が上がってる。笑

ああ、わかってる。でもあれはひどい。いまStravaをチェックしてるんだけど、まだテルプストラのデータは上がっていないな。

南北で異なる二つのベルギー

ーー話題を変えよう。ベルギー籍(クイックステップ)のチームのオランダ人(テルプストラ)が勝った。その意味を聞かせてもらえるかい?これつまり、メジャーリーグのワールドシリーズをカナダの野球チームが勝つようなことなのかい?

まず、ベルギーとオランダは国境を面している。オランダではオランダ語、ベルギーではフラマン語というオランダ語の方言のうような言語だ。二つの言語は互いに意思の疎通が取れる。しかしどこの国でもあるように、隣り合う国同士にはライバル心がある。サッカーのベルギー代表とオランダ代表の試合の盛り上がりは凄まじい。例えばベルギー対スイスの試合の比ではない。そういうものだ。

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確かに、今回の勝利にベルギー人は不満を持っているだろう。いま俺は言葉の選び方に気をつけて話しているぞ。どっちの国も好きだからな。

興味深いのが、ベルギー人は勝てなかったが、ベルギー人のジルベールが三位に入った。だが、彼はベルギーでもフランス語圏出身なんだ。ここがまたややこしい。同じベルギーでもオランダ語系のフランデレン地域とフランス語系ワロン地域があるんだ。この二つの地域は同じベルギーだけど全然違う。仮に今日ジルベールが勝ったとしても、フランドルの人たちは「なんだよ!」って思っただろうな。

ーーそもそもクイックステップがオランダ人のテルプストラと契約した時に反感はあったのかな?

それは恐らくなかっただろう。ちょっと調べたのだがテルプストラは2011年からクイックステップで走っている。レース中継でも言っていたが、テルプストラは自由を与えられるレースもあるらしい。それぐらい信頼されているということだ。今日も自由を与えられた結果だったのかも知れないが、スティバールでもジルベールでも、最初に仕掛けたやつが勝負する権利を与えられる、みたい感じだったのかもしれない。

ーーそろそろまとめようか。何か言い残したことは?

今日のレースは本当に興奮した。春のクラシックシーズン開幕戦だった「ミラノ〜サンレモ」でニーバリが勝った時のように、強い選手が勝つべくして勝ったという展開だった。ニバリも運で勝ったワケではない。勝つために戦略を立て、実行した選手が勝った。偶然が重なった勝利などではないんだ。

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ーー君はこういった勝利の方が価値があると思っているのかい?

いやいや、15人の集団スプリントによる勝利でも同等に素晴らしいと思う。だが、俺も現役時代、一つの勝利に向けてチームが作戦を立て、戦術を実行するチームにいたから、今回のクイックステップのような勝利は個人的に思い入れてしまうんだ。本当に素晴らしかった。

最後に、「ミラノ〜サンレモ」を7回、ツールを5回勝つなどとてつもない成績を上げた、俺の古くからの友人であるエディ・メルクスの言葉を引用したい。

「ツール・デ・フランドルは本当に難しい。だってこの俺が2回しか勝てなかったんだだからな」

ーー次の放送予定は?

『パリ~ルーベ』だ。

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『STAGES』はYoutubeでも配信していますので、是非。