苦しむウルリッヒにランス・アームストロングが会いに行った理由

8月19日、ランス・アームストロングのInstagramに一枚のツーショット写真が投稿された。

 

「この男とは最高の時を過ごした。多くの人が知っている通り、私はヤン・ウルリッヒが大好きだ(翻訳:AFP)」

ヤン・ウルリッヒ。

1997年ツール総合優勝、1999年ブエルタ総合優勝、二度の世界選手権個人TT優勝(1999/2001)、シドニー五輪ロードレース金メダル。

輝かしい成績を持つドイツのヒーローがいま、苦しんでいる。

2007年に現役を引退したウルリッヒは、8月10日にフランクフルトのホテルで女性と口論の末に暴行した疑いで逮捕。後に保釈されたが、その直後に精神科へ入院した。

さらに、その一週間前もスペインでドイツ人俳優を脅したとして身柄を拘束されていた。

そんな不安定な状態にある元ツール覇者に、現役時代のライバルであったランス・アームストロングが会うため、渡独。

その時の様子が、冒頭のInstagramの投稿である。

「自分にとっては特別なライバルで、怖ろしい存在だったが励みでもあり、彼がいたからこそ自分の全力が引き出された。自転車の上ではまさに一流だった(翻訳:AFP)」

ランス・アームストロングがここまでウルリッヒの為に行動するのには、ある理由があった。

それを2017年ツール・レビューのポッドキャストで語ってくれていた。

ランス・アームストロング:

ヤン・ウルリッヒとはたまにテキストメッセージのやり取りをする仲だ。親しい友達だったことはないが、好きだし、尊敬もしている。もちろん現役時代は嫌いなフリをしなければならない時もあったが…まぁ本当に嫌いだったこともあったがな。

しかし俺たちは奇妙な時代を走っていた。

今年(2017年)のツールがドイツ・スタートで、会場にウルリッヒが招かれていなかった事実にガッカリした。こんなクソなことがあるか?(ツールが)あるべき姿ではない。

こういう率直なこともメッセージでヤン(ウルリッヒ)に送ったりするんだ。

ーー多くの君のファンがウルリッヒを尊敬する理由に、君が彼を尊敬していることがあるだろうね。彼の体重コントロールやスポーツマンシップなどが惹かれる理由だろう。

ランス:ああ。そうかもな。

俺が7回目のツール・ド・フランスを勝った2005年のことだ。引退を決めていたレース。その時、ウルリッヒは2位だった。

ツール直後に行われたパリでの優勝パーティには、700人を越えるアメリカ人のファンや、ディスカバリーチャンネルのファンが集まっていた。

その1時間前に、ウルリッヒの広報担当から「ヤンがパーティーに出席したい」という連絡が入ったんだ

俺たちは「ヤツは気が狂ったんだろう」と思ったさ。

さらに担当者は「出席だけでなく、みんなの前で一言話したいと言っている」とつづけた。

俺の返事はもちろん「ダメだ」だ。

ただのジョークで、とても本気とは思えなかったからな。

しかし実際にヤンは現れ、マイクを掴み俺やチームのことについてスピーチをしてくれたんだ。

それは俺が現役時代にされた最も上品な振る舞いだった。絶対に忘れない。彼のことが大好きな理由だ。

別に毎日話すような仲じゃないが…そんなこと誰ができる?

俺は絶対に無理だ。もし立場が逆だったら、あんなことできるワケがない。

人生で絶対に忘れない出来事だ。

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「時はあっという間に過ぎ去り、友人は今、難しい時期を過ごしている。それを見過ごせなかったからこそ、私はドイツへ来て彼とともに過ごすことにした。どうかみなさん、ヤンのことを思い、彼のために祈ってほしい。彼は今、私たちのサポートを必要としている(翻訳:AFP)」