アメリカで大ベストセラーとなり、日本でも翻訳本が話題になった『ヤバイ経済学』のポッドキャスト番組にゲスト出演したランス・アームストロングが、アメリカで体験したエピソードを話した。
浴びせられた当然の罵倒
ランス・アームストロング: コロラド・クラシックのポッドキャスト収録の為にコロラドの街を歩いていた時の話だ。
レース会場に向かうためUber(配車サービス)を呼び、地元のこじんまりとしたバーの脇を通ったら、テラス席の客が俺に気づき「ランス!」と声をかけてきた。
いつもだったら「調子はどうだ?」と続き、俺が「いいぜ!最高だ!」と返して終わるやり取りのはずだったが…
そいつは突然「ファックユー!」 って言ってきたんだ。
さらに「ファックユー!ファックユー!ファックユー!」と狂ったように繰り返してきた。
そしたらテラスいたすべての人間が「ファックユー!ファックユー!ファックユー!」 と呼応したんだ。
突然の大合唱だ。
そんなこと初めてだったから「…どうすればいいんだ」って震えたよ。
”ランス・アームストロング”としての振る舞い
とりあえず急いで車に飛び乗ったのだが、会場に到着してもショックのあまり、何もできなかった。
だが、自問自答の末に「お前はランス・アームストロングだ。この状況をなんとかしなければいけない。このまま放ってはおけない」という結論に至った。
だからそのバーに電話して、店のオーナーに繋いでもらった。そして彼にいま起こったすべてのことを事細かく説明したんだ。 そしたらオーナーは「申し訳無い。とても残念だし、二度と起こらないことを祈る」と言ってくれた。
だが、俺は「頼みたいことがある。これが俺のクレジットカードの番号だ。これであいつらの所まで行って、奴らが飲み食いしているすべてを支払ってくれ。そして、俺が ”お前らに言い分は理解した” ということを伝えてほしいんだ」と頼んだ。
大人になった元王者
10年前の俺だったら柵を飛び越えて殴りかかっていただろう。 だが、これが2017年の夏の俺が思いつく一番良い方法だった。
俺を罵倒する人々に対して「分かった。言いたいことは理解した」と伝える為にはな。
初めての経験だったが、明日また同じことが起こるかもしれないし、あと何百回も同じことが起こるかもしれない。 でも、これがいまの俺の生き方だ。
Source: Freakonomics Podcast
ランス・アームストロングは2018年4月、ドーピング違反に関して米連邦政府を欺いたとする訴訟で500万ドル(約5億4000万円)の和解金を支払い合意。これで現役時代から引退するまで続いた薬物違反騒動に関して一応の決着がついた。