オーナーのリック・デラニーが語るアクアブルースポート解散の真実

2018年8月27日(月)、」Twitter上でチーム解散を発表したアイルランド籍のプロコンチネンタルチームアクアブルースポート。一体彼らに何があったのか?アクアブルースポートのオーナーであるリック・デラニーが英メディア「The Cycling Podcast」のインタビューに答えた。

▼目次

      1. アクアブルースポート創設直後
      2. UCIやASOへのロビイング
      3. 3Tのシートポスト
      4. スナイパー・サイクリングとの合併交渉
      5. 無慈悲なUCIと、高すぎる出場権
      6. 解散以外の道はなかったのか?
      7. メールでクビ、というデマ
      8. 3Tとスナイパー・サイクリングへの取材報告

 

順調すぎた一年目

ーーこのスポーツでチームの解散は珍しくないが、シーズン途中で活動が停止するのはあまりないことだ。なぜこの事態になってしまったのだろうか?

リック・デラニー:

2年前にアクアブルースポートというチームを始めたところから、話を始めなくてはならないと思う。

まず僕たちはUCIに対して、何をしたいか、どんな目標を持っているかを説明した。そしてレースの主催者たちにも同じ話をした。そして承認され、チームができた。みんないいアイディアだと褒めてくれた。その後、選手を探し、契約し、レース計画を立て、実行した。

ASO(ツール主催者)や、ジロの主催者に会って、その他にも様々なワンデーレースの主催者たちと話をした。すべての人たちからポジティブなフィードバックを得ることができた。みんな僕たちの活動に好意的だったし、ジャージや、チームにもだ。

昨年は自分たち的にも良いスタートができ、ブエルタに出場できた。だから、その成功の流れのまま二年目にも突入できると思っていた。

完璧な機材スポンサーと契約し、非常に楽しみだった。その時はね。チームへのサポートに尽力してくれると期待していた。(彼ら=3Tは)革新的なテクノロジーで、いまのスタンダードではないが、未来では当たり前になるような技術を使って…これはみな今年の1月時点での話だ。

今シーズンに興奮するような機材が現れて…未来は明るかった。

もちろん前ギヤが二枚のモデルも提供されると思っていた。9月前にはね。

その後、我々のECサイトで販売できると。完璧な組み合わせになると思っていた。

↑3Tのジェラード・ヴルメン守護霊インタビュー

出場権というハードル

今年の1月、昨年と同様にRCS(ジロ主催者)に話に行ったのだが、ミラノ〜サンレモとジロには出場できず、ストラーデ・ビアンキについてはその時点でまだはっきりしていなかった。

彼らが主催する3、4つに出場できるという感触だった。その時に、次のシーズン(2019年)のジロ出場への話し合いもした。とてもよい話し合いだった。

だが、その後も連絡を試みたのだが…何の返事もなかった。ゼロだ。完璧なる無視だ。

そして、レース出場が続々と発表されるなか、われわれの席は一つもなかった。ゼロだった。

それが、今年が難しい年になるという予感の幕開けだった。

ASOとも話をした。フィードバックはポジティブだった。とても好意的だった。我々が行っていることも含めてね。だけど、ツールの出場権は得られなかった。

これ以上の問題が機材に起こった。何も隠し事はない。だから、これで名誉毀損で訴えられることはない。事実なのだからね。

僕はチームや選手からプレッシャーをかけられていた。彼らが使う機材についてだ。チームのマネジメントへも影響が出る問題だ。

しかし、僕たちはあと2年半もこのサプライヤーとの契約が残っていた。

↑リック・デラニーが今年4月にツイッター上でUCIやASOなどに対して不満を漏らした事件。

欠陥だらけの商売道具

どうすればいいのか?

そのサプライヤーは一度もレースに訪れることがなく、チームに何の興味も示さない。ゼロだ。

なのに、僕らが決めたカラーリングで世界中に販売を開始した。僕たちのサイトで販売する前にだ。

彼らは僕たちチームに何の関心もないんだ。ゼロだ、ゼロ。

この8ヶ月、フラストレーションが溜まりまくっていた。

ツール・ド・スイスの第3か4ステージで、うちのメカニックはディスクブレーキのパッドを他のチームから借りなければいけなかったんだ!ストックがなかったからな!

それだけではない。シートポストの調整にも問題が起こっていた。僕たちでは解決できない種類の問題だ。メカニックは僕に「これではレースにならない。違う自転車を探してくれ」と懇願してきた。

望んでいたスポンサーからのサポートは…何もなかった。

これが僕らの状況を難しくした。法的にね。なぜならあと2年半も契約が残っていたのだからね。

じゃあどうすればいいのか。どうやったら彼らと離婚できるのだろうか?

その解決策として、他チームとの合併があった。

↑アクアブルーの選手による3Tバイクへの不満はこちらのエントリに詳しい。前シングル、シートポスト、フリーハブに問題を抱えていたようだ。

難航するスナイパーとの合併交渉

だから、スナイパー・サイクリング(ベルギー籍のプロコン「ヴェランダスヴィレムス・クレラン」の運営母体)と交渉をはじめた。オーナーのクリス・コンパニとモナコで会った。

彼は合併を求めたが、私にはその興味がなかった。我々は運営会社の株式のパーセンテージを彼らに売ることにしか関心はなかった。

向こうのチームの負債をはじめ、スポンサーを引き継ぐ。そうすればチームジャージがスポンサーのロゴで汚くならないですむ。名前もアクアブルースポートのままだ。そしてスナイパーサイクリングは支払代理人になる。

そうすれば、晴れて僕らは彼らが使用している機材が使えるようになる。未来は明るいだろう?

こういった交渉は2ヶ月半ほど続いた。だが、この交渉が人生で一番フラストレーションの溜まるものとなった。なぜなら、彼らがその段階で彼らは嘘に次ぐ嘘、そしてまた嘘ばっかりを言ってきのだからね。

我々はアクアブルースポートがヴェランダスヴィレムス・クレランとの合併を伝えるプレスリリースを打った。

向こうのニック・ニュイエンス(ヴェランダスヴィレムス・クレランGM)がそう言ったからだ。彼はその午後にウチのチームのCEOとともにベルギーへ行き、ニキ・テルプストラに移籍のオファーを直接する予定だった。ツールを走っていたアンドレ・グライペルにも同様の話をする予定だった。

しかし、その午後に彼らは「そんな交渉すらしていない」というプレスリリースを発表したんだ。

ーーちょっと待って。つまり、ヴェランダスヴィレムス・クレランのプレスリリースが出たとき、合併の合意はされていたの?

そうだ。ニック・ニュイエンスの言葉だからね。プレスリリースを読んでみると、「ニック・ニュイエンスはこの合併にとても喜んでいて〜」と書かれている。

僕たちのプレスリリースの二時間後に、彼から電話が来て、取り下げるようにって言われた

…はぁ??!!

取り下げるってどういうことだよ??!!何を言っているんだよ??!!

…だから取り下げた。

それから1ヶ月半近く(実質は3週間ほど)、法的なことをクリアするために約350万円(€27,000)と、彼らの質問に対応するため、莫大な時間を費やした。

しかし、いざ金曜日にサインしようとしたら、すっぽかされた。ほんと「またかよ」と思ったさ。

そして月曜日に起きたらルームポッドと合併の噂がある聞いた。

意味がわからない!!

みんな知っている。チームの合併が一週間そこらでまとまるワケがないんだ。交渉には何ヶ月もかかる。特に何社もスポンサーがいる場合はね。個別の契約書が必要になるからね。何週間もかかるんだ。

なるほど。われわれは遊ばれたのだな、と理解した。

これはプランBだったのかと。

そして僕たちがマヌケ野郎に出来上がった。

だからスタッフや選手たちに言ったんだ。もうダメだ。もう無理だと。終わらせるしかない。このチームを終わらせるしか方法はないとね。

改善すべき理不尽なシステム

胸くそ悪い。

胸くそ悪いのは別に彼ら(スナイパー・サイクリング)だけじゃない。

UCIもだ。

2年前、UCIに助けをもとめにいったんだ。しかし、何もしてくれなかった。何もだ。

彼らが聞いてくるのは、「いくらお金があるか?」「そのお金はどこらか来ているのか?」「銀行の保証書を見せろ」。

だから言われたとおりにした。

それ以外、こちらからのお願いにはすべて「ノー」だ。とにかくこちらの希望には「ノー・ノー・ノー・ノー」

二言目はない。常に「ノー」だ。

月曜日にチーム解散を発表した後に、安っいスーツを来たUCIの職員がきて色々聞いていったよ。そんなことしかしないんだ。信じられない。

ーー(解散を発表する)月曜日の前にUCIからどういった手助けを求めていたの?

アドバイスさ。ここ最近ではなく、1年半の間ずっと求めていた。ずっとね。UCIの仕事は何なんだ?このスポーツの総括団体じゃなかったのか?

レースの招待システムにもフラストレーションが溜まっている。

レースの招待は黙っていても来ないんだ。出場する資格を得なければならない。もうこれを言っても関係ないから言うけど、その資格はなんだと思う?

お金だよ。お金だ。お金。すべては主催者へのお金なんだよ。

昨年、僕たちはツール・ド・スイスに出場しステージ勝利を上げた。出場権を得るのに主催者に 20グラント(約260万円)を支払った。今年も同じ額を支払った。レースに出場するだけで €20,000(約260万円)かかるんだ。3.5億の利益を出して、レース毎に主催者に支払わなくてはならない。アムステル・ゴールドレースも10グラント(約130万円)払った。

なんて最低で胸くその悪いスポーツなんだ。

ごめん。許してくれ。間違った。このスポーツの運営方法が最低で胸くそ悪いんだ。

チームカーの後ろで自分のチームを観ている時がどれほど幸せか。この自転車ロードレースというスポーツの美しさを味わっているときの鳥肌に勝るものはない。

ただ、それ以外のこのスポーツに関するすべては…腐敗しきっている(rotten to the core)。

解散以外の選択肢、そして選手たちへ

ーーチーム解散は突発的な決断だったのか、長い間可能性として持っていた選択肢だったの?

違う(突発的な決断だ)。多くがいっているすべては計画されていた解散だなんてことはない。ナンセンスだ。

いくつかの選択肢があった。
1. 契約を不履行にしてその損害を訴えられるか、
2. いまの契約のままいくか、
3. 法的に言うことができないが、信じられないほど酷いオファーを飲むかだ。

だから、もう一つの選択肢である、終わりにすることを選んだ。

なぜなら、これは喜んで行う仕事であるべきだからだ。

週末に熟考し、月曜の朝6時に決断した。涙を流しながらね。なぜなら、これは僕の夢であり、情熱の源であったからだ。決して思いつきではない。

ソーシャルメディアでは僕のことを無鉄砲な野郎だと書いている人がいるが、信じられない。血が沸騰しそうだ。

僕はこのチームの為に、莫大な資金を費やしてきた。2年間に渡って42人の仕事を作り出した。そして誰一人として契約を破棄していない。彼らは毎年契約を延長する契約だったからね。そして毎月、その契約の解除が可能だ。つまり、彼らは好きな時に辞められるし、僕も解雇できる。平等のだよね。

選手は全員の給料は12月31日まで支払われる。

来年以降の契約は5人の選手としか結んでいない。そのうち2人は新しい選択を見つけている。残りは3人だ。その3人も次を見つけるのは難しくないと思うが、もし12月31日までに次の道が見つけられなかったら、僕はもちろん正しいことをする。それが僕がするべきことだ。翌年になっても契約が見つからなかったらもちろんサポートするつもりだ。

契約は有効だし、支払いは行われる。

誤解だった無慈悲といわれた解散通達

ーーリック。君の落胆ぶりはわかったし、選手たちもガッカリしているはずだ。その伝わり方も含めてね。

違う。それは間違いだ。全くの間違いだ。

月曜日の朝に42人に対して何かを伝えたい時にとる方法はなんだ?メールだろう?42人全員にそれぞれ電話することは不可能だ。その直後にチームの監督に電話した。そしてその後2時間待った。なぜなら10時から全スタッフが参加するチームミーティングがあったからだ。

僕は選手に対してソーシャルメディアでチームの解散、クビだということを伝えてなんていない。

その情報は間違いだ。全くのね。

僕のことを知っている人なら全員、僕が独善的でないことを知っている。レースに帯同するときは、選手と同じホテルに宿泊するし、エアコンのないシングルルームに泊まっている。みんなと同じ食事をし、選手と友だちになっている。僕はエゴイストではない。

人は「僕の好き勝手できなかったらからチームを解散させた」なんていっているけども、そんなのはナンセンスだ。信じられない。

ーー解散発表後に選手とは話をした?

ああ。何人かとはね。話しかけてくれた選手とは。

ーービジネスモデルについての話も聞かせてくれる?オンラインストアについて。現状はどうなっているのか?そして今後それはどうなっていくのか?

あれは間違いなく続いていく。しかし、最大の過ちはあのスポンサーの製品を販売してしまったことだ。そして今後も売り続けなくてはならない。それは最も大きな過ちだった。その契約がなければもっと自由があったのに。

ツアー・オブ・ブリテンのために、イギリスのメーカーからフレームの提供を受ける予定だった。でもそんなことをしたら訴えられてしまう。

ーー3T側は君のチームを法的に訴えるという脅しをしたことについて否定している。それについてはどう?

これに関しては言えることと言えないことがあるが、どんな契約でもそうだが、破棄して損害を受けたら訴える。それへの回答は「もし我々が契約に違反したら」だ。

ーー残りのシーズンをその(3Tの)バイクで走ることは無理だったの?

それには答えられないが、僕の経験上では…僕の視点からは、そのパートナーとはもう無理だった。

ーー創設時に4年で(スポンサーを必要としない)自立したチーム運営ができると言っていた。その計画の進捗はどうなの?現状では上手くいっていないと言われているけど。

これはとても野心的な取り組みで、たくさんの修正も行い、紆余曲折もあった。実行中だし、確実に進歩していっている。上手くいっている。それは疑いの余地はない。まだ十分な成果はないが、上手く行っている。

ーーこのシステムはチームへ良印象を与えていた。しかし、それは(今回の件のせいで)消滅してしまったように思えるけど…

ああ。その通りだ。だからいま君に話をしているんだ。僕は真実を話しているし、嘘はついていない。何も嘘をつくことなんてないし、その必要もない。これは僕のビジネスではない。趣味の一貫だ。自分の印象をよくしようとしているわけではない。

僕は君に真実を語っているんだ。僕が語った全ての言葉は信じるだ。

これを(真実であると)証明する書類もEメールも揃っている。

真実だ。あったことを話しているだけだ。

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【インタビュー後記】

リチャード・ムーア(インタビュワー):

感情的になってたね。怒っていた。SNS上の批判が過剰にさせたのかもしれないね。もし、残りの期間の給料を支払うという約束を裏切ったら、本当に怒るべきなのは、チームスタッフと選手なのだろうけどね。これはちゃんと見守っていきたい。

彼の主張をまとめると、機材スポンサーとのトラブル、少なすぎたレース招待、オンラインビジネスが上手く行かず…でもそれは継続していくというコメントは興味深かったね。

プロコンチネンタルチームは招待されないとレースに出場できないという既存の問題もあるだろうね。現在27のチーム(プロコン)がある。そのチームたちが数少ないレースの出場枠を争うんだ。その枠の獲得システムの修正も必要だろう。

それにアクアブルースポートが(多くのレースが行われるベルギーやスペイン、フランスなどではなく)アイルランド籍だったこともあるだろう。その分障壁が高くなるからね。

このインタビュー後、われわれは解散の原因としてリック・デラニーが言及していた、3Tとスナイパー・サイクリングに取材をした。

3Tに対して、チームが抱えていた自転車の問題について把握しているかどうかという質問したら、3Tの代表であるジェラード・ヴルメンが答えてくれた。

「それぞれのプロチームにそれぞれ自転車の問題はあるだろう。そして起こったら当然対処する。それを15年間行ってきた。チームによってそれが難しい/簡単という違いはある。あるチームはより組織が整っていたりなどね。十分なメンテナンスが行われていれば解決された問題だという認識であるし、ベアリングなどに多くのサプライヤーが利用しているサードパーティのメーカーのグリスを使用すれば解決しただろう。」

また、「契約期間中に3T以外の自転車を使用した場合、法的処置に出る」と脅しをかけたという質問に対しては、全く逆の回答だった。

「彼ら(アクアブルースポート)がスナイパーと合併すると言ってきた。当然2つのチームにはそれぞれにバイクサプライヤーがいるわけで、その時点で2018年いっぱいで契約を終了し、なるべき法的ないざこざのないよう解決しようと言った。保証金や、サプライヤー製品に返品などなしでだと言った。」

これは今回のリック・デラニーへのインタビューで詰めきれなかったことだ。脅しはあったのか?という疑問だ。

スナイパー・サイクリングに対しても取材をした。チーム合併の合意がアクアブルースポートのプレスリリース以前にあったのかという質問に対しては、「それは明らかに間違いである」という回答だった。

「合併に向けた交渉を進めているというプレスリリースをする予定だった」と。「その時点で最終的な合併の合意は取れていなかったから」と。

そうでなければ、それを「誤りであるという(スナイパー・サイクリング側からの)プレスリリースをする必要はなかったはずだ」と。

ライオネル・バーニー:

いま現在でアクアブルースポートの選手で、チームに対して悪くいう選手はいないだろう。そんなことしたら残りの給料がもらえなくなってしまう可能性があるからね。でも、選手がバイクに対して不満を持っていたのは事実であるし、短い期間での決断によって解散したただのチームよりはよっぽど複雑な状況だったということだ。

また、リック・デラニーが2019年以降の契約をすでに結んでいる選手で、次の所属先が見つからなかった場合の保証までしたのは、それが現実になるかはわからないが、言ったのだから注目したい。

リチャード・ムーア:

この自転車ロードレースというスポーツでは、残念ながらこれは珍しくない出来事で、チームは不安定であるのが常だ。アクアブルースポートというチームはこの2年にも満たない期間で、悲しいことになった。

彼らは去年のブエルタでとても良い印象を残した。アグレッシブな走りを見せていたし、コナー・ダンの物語もとても惹きつけられた。ステージ勝利を上げ、バスが放火され、違うチームがバスを貸してくれたりと…このチームは多くのファンを惹きつけた。だから、とても悲しい物語の終わり方になってしまったね。