ワールドチャンピオンかつ自転車界のスターであるサガン(スロバキア人)が、カヴェンディッシュに対する進路妨害(疑惑)で一発退場となった一方で、クイックステップの選手に得意のパンチをお見舞いしたフランス人ブアニには、罰金と彼にとってはどうでもよい総合タイムの加算処分しか課されませんでした。
そして今回のウランとベネット。禁止区域で観客から水を受け取ったとして処分が下されたのに(その後取り下げられた)、フランス人のバルデにはお咎めなし。
選手やチーム、メデイアだけでなく、われわれファンにとっても不可思議かつ不明瞭に思われる判断をUCIは下しています。
ランス・アームストロングを現役の時から知っているファンから「お前が言うな」という声が聞こえてきそうですが、フランス贔屓の処分に対するモヤっとした気持ちを、ランスの一喝が(多少ですが)晴らしてくれています。
ランス・アームストロングによる2017年ツール第13st評 【前編】「フルームはランダを “仲間” だと思っていないよ」
前編はこちら ↑ から。
15:35 辺りからです。
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ランス:
俺らの話によく出てくる “ASO” や “UCI” という組織について、この辺りで簡単な説明をしておこう。
UCIとは自転車競技を取り仕切っている連合で、ツールにとって NFL のような存在だ。 IOC(国際オリンピック委員会)の一部で、ルールやレースのカテゴリー、アンチドーピングなどはすべて彼らの管理下にある。
一方で、ASOは もはや自転車レースとイコールの存在である “ツール・ド・フランス” のオーナーだ。 彼らはツール以外にも、レキップ紙(フランスのスポーツ紙で、ツールお昼寝予測でもお馴染み)、ダカール・ラリー、パリマラソンなど様々なスポーツ大会を持っている。その中でもツールは最大規模だ。
まとめると、ASOは ツール・ド・フランス の所有者で、UCIは管理している組織だ。
ー では、昨日(第12ステージ)あったペナルティについて話そう。ウランとベネットが、路上にいた観客から水の入ったボトルを受け取った。
ランス:
それにフランス人のバルデもだ。ウランはコロンビア人で、ベネットはニュージーランド人。オーストラリア人ではなくね。
Why no time penalty like Uran and Bennett? pic.twitter.com/GrW6PJwV7V
— Stephen Wood (@SteveWood999) 2017年7月13日
観客からボトルを受け取るバルデとベネット。
ー 最終山岳の頂上付近での出来事だった。
ランス:
これはルールなのだが、とても不満に思っている。ただ、これについて話すには、俺自身の立番について、気をつけて話さなければならない。なぜなら、俺がスポーツにおけるルールの一貫性について話すことに、自分でも可笑しいと思うからだ。(Sometimes, me speaking about consistency in the sports, myself funny to some.)
ペナルティの一貫性のなさについては、この10日間のツールで、俺らはさんざん見せられてきた。サガンとカヴェンディッシュの件や、スプリントでのブアニのパンチなど、あれらの罰則に一貫性などない。昨日(第12ステージで)、ウランは水のボトルを受け取った。そしてルールではゴールにある一定距離近づいてしまうと、ボトルを受け取ってはいけないことになっている…実に馬鹿げたルールだ!
誰が気にするんだ!補給ぐらいさせてやれよ!なんで世界で最も過酷なスポーツをしているのに、ゴール付近では水も飲んではいけないんだ!こんなおかしいことがあるか!?
このルールが変わることを願っている。また、ウランがあの状況でスタッフ・メンバーではない人から水を受け取ったことが、彼にとって良い方向に働いたことは事実だ。しかし、そのシーンはカメラで撮られてしまっていて、彼はペナルティを受けた。ここで興味深いのが、ベネットとバルデもその(禁止)区間でドリンクを受けとったことだ。しかも観客から。
ー ホントにクレイジーな行為だな。
ランス:
その通りだ。観客はその水の中になんでも入れられる。ウォッカや、尿や、とにかくなんでも入れられてしまうんだ。毒だってありえる。ベネットとバルデは、同じ観客から水のボトルを受け取ったんだ。そしてベネット、ニュージーランド人だけにペナルティが課された。一方、フランス期待の星であるバルデはお咎めなし。
なんでそんなことがありえるんだ!
ー しかも総合タイムに20秒の加算というペナルティだ。
ランス:
総合上位の選手にとってそれはかなり大きな処分だ。こんなにも秒差がない展開では特に。だが、その後 バルデが同じようにボトルを受けとっている映像 が流れた。にも関わらず(クソなこと)、次の日の彼ら UCI の結論は、”下された判断は覆らない” だった。これは恥の上塗りだったわけだが。そしてその後、”ウランとベネットのペナルティを撤回する“と発表した。なんだこれ?
ー 彼ら(UCI)の一貫性のなさがわかったよね。サガンは一発で失格になったのに、パンチしたブアニはまだツールで走っている。それに沿道の観客が差し出したボトルを受け取ったということは、のどが渇きは相当だったということだよね。
ランス:
その通り。もし俺が若いライダーに話すとしたらこう教える。知っている人から手渡されたボトルなら、飲んでいい。知らない観客から渡されて、そのボトルが未開封だったら、それも飲んでいい。とても暑い日に知らない観客から渡されて、それが蓋の空いているボトルだったら、頭や背中にはかけていいけど、飲んではダメだ。特にいまの時代、絶対に飲んではいけない。確かに厳しいツールで、あの状況の選手はなんでも飲んでしまうだろう。まあこれは理想論だけど、とにかく絶対飲んではいけない。
しかし、本当に問題なのはUCIだ。UCI が選定し派遣された審判者は、何がどうなることを期待していたんだ?俺ら観客があのペナルティを期待していたか?まったく…。
ー あの時、水を積んだニュートラルカーは何をしていたんだ?
ランス:
ゴールに近すぎるということで渡してはいけなかったんだ。
ー それが、キミが変えるべきだと思うルール?
ランス:
まあそうだね。古いルールだ。確かにこれは伝統あるスポーツだが、これは変えられるし、変えるべきルールだ。
でも、今日の第13ステージは非伝統的だったし、本当に素晴らしいレースだった。今日は1996年以来最も短いのコースだ。その時俺も出ていたんだがね。一体いま何歳だよって感じだけど。その時は雪の影響で短くなったんだ。100kmという短い距離は、選手に “俺も勝てる” という気にさせる。ヴォクレールでさえ勝てると、スタートの旗が振られた時に思っていただろう。
俺は今日のステージが好きだよ。テレビを観ていた俺ですら、最後の20、30kmは何が起きているかわからないぐらい激しかったし。
ー 特に総合勢は凄い戦いだったね。
ランス:
まずアルにはチームメイトがいなかった。しかし、最終山岳でUAEの2選手が前を引き始めた。一時的に敵同士であるカザフスタンとUAEのチームが手を組んだんだ。どういう取引がなされたのかわからないけどね。ただ、彼らUAEの言い訳はわかる。メインチェスのために引きだったと言うだろうね。
だが、重要な点はそこではなく、アルにはチームメイトがいないことだ。
骨折をしているのにも関わらず今日スタートしたヒーロー、フグルサングがいたが、リタイアしてしまった。まあブレーキをまともに握れない彼の後ろで走りたいとは思わないけど、彼は頑張ったよ。とにかくアルはチームメイトがいないんだ。だから、総合勢のグループに秩序はなかった。先頭集団がどんどん離れていくのに、なぜ協力し合わなかったのかがわからないよ。
ー スカイの時は完璧に統制が取れていたのにね。
ランス:
(先頭を引かなくてよかった)スカイにとっては今日はいいプレゼントになっただろうね。
ー 総合争いの展望を聞かせてくれ。
ランス:
ランダを含め、約一分ぐらいのタイム差に6人もいる。その中で誰が勝っても不思議じゃない。
ー 滅多にないことだよね。
ランス:
みんなにチャンスがあるよ。ウランでさえチャンスがある。各チームの監督は選手に「勝てるぞ!可能性があるぞ!」と言い聞かせていることだろう。ただ、フルームは強いよ。第12ステージは彼にとってのバッド・デイだったが、今日は調子良かったし。彼は強い。
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Time for a rest day.
😴😴😴#TDF2017 pic.twitter.com/EymjKoEVwd
— Le Tour de France UK (@letour_uk) 2017年7月17日