今シーズン万全とは言えない創立一年目のバーレーン・メリダに所属しながら、ジロ・デ・イタリアで三位、ブエルタ・ア・エスパーニャで二位、そして先日行われたイル・ロンバルディアでは優勝と、目覚ましい結果を残した ヴィンツェンツォ・ニバリ のインタビューがCycling Newsにて公開されたので、訳しました。
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よく、「とても良いシーズンだったけどグランツールは勝てなかったね」と言われるんだ。無視しているけどね。
確かに優勝はできなかったが、それを目指して21日間も戦ったんだ。たとえ二位や三位であったとしても素晴らしい結果だと思っているよ。
フルームがブエルタで優勝できた最大の要因は ”チーム力” だ。彼は孤立することもトラブルに遭う回数も少なかった。タイムトライアル後のロス・マチュコス(第17ステージ)でのバッド・デイも、フルームには五人ものチームメイトが一緒だったんだ。
フルームにスカイのチーム力がなかったらブエルタを勝てなかっただろう。これは俺の個人的な考えだが、フルームがスカイというチームに所属していなかったら、ツール4勝はなかったはずだ。
選手は皆それぞれ弱点がある。フルームにとってそれは ”孤立” することだ。レースの重要な局面での単独走行に慣れていないため、力を発揮する方法を知らないんだ。
コンタドールのように残り100km地点でアタックするようなことをしない。そんなことをする必要ないからね。フルームには助け守ってくれる強いチームメイトがいるから、残り3km地点まで動かなくていいんだ。チームが万全な環境を整えてくれる。まるで250mまで連れて行ってもらわないと力が発揮できないスプリンターみたいなものだ。用意されたポジションとその登坂能力で勝つ。それがフルームが専門としている手法だ。
常に強いチームメイトに囲まれているお陰で、フルームは自信を持ってライバルたちと向き合えているんだ。
チームにはそれぞれ一長一短があって、スカイの特性に俺は合わないだろう。実は、過去にスカイへの移籍が決まりかけたことがあったんだ。しかしそれは実現せず、彼らが俺に興味を示すことは二度となかった。
これまでいくつかのチームを渡り歩いてきたが、どんなチームでも一定の成果は上げ続けてきた。
自転車ロードレース界にいる人間はみな、チーム・スカイが300万ユーロ(約40億円)という豊富かつ、無限にも思える資金力のある特別なチームだということを知っている。また、彼らはその資金をチーム強化の為に正しく使っているんだ。これは嫉妬などと言った個人的な気持ちの話ではなく、その気になればどんなトップレベルのクライマーやスプリンターでも獲得(独占)できてしまうという影響力の問題なんだ。
だから一チームに所属できる主要選手の人数を制限することが必要だと考えている。全てのチームが可能な程度かつ、同等の資金で運営されるようにして、さらにサラリーキャップ(年俸の上限を設定する制度)の導入も必要だろう。
これまでコンタドールのような上世代の選手たちと戦ってきた。そしていま(フルームなど)の世代と戦い、これからはデュムランやチャベスのような次世代の選手たちと戦っていく。彼らはどんどん追い迫ってくるが、俺は変わらず戦っていくつもりだし、その姿勢は2018年も変わらない。
選手やスタッフを”かき集め”てできたバーレーン・メリダだったが、初年度にしては良く戦えたと思っている。俺個人として今シーズンはとても良かったとし、チームとして達成した成績も誇りに思っている。それはチームとも共有している結果だ。
同じ年に二つのグランツールで良い結果を出すことは非常に難しい。それにジロもブエルタも大きいライバルがいたんだ。だからジロで三位、ブエルタで二位という結果は、良い一年であったことを表している。シーズンを通して俺らが懸命に戦い続けていたということの証明だ。
デュムランは素晴らしいタイムトライアル選手だし、なにより世界選手権王者だ。ジロでは二度、彼好みのタイムトライアル(第10・21ステージ)でかなりのタイムを稼がれた。俺は五位に入ったのに二分半も失ったんだ。
だが、確かにデュムランは強いが俺もそんなに悪くはなかった。
俺はどんな地形でも強い選手だが、どれかに特化しているわけではない。俺にも良い日・悪い日がある。また、ライバルたちより強い時もあれば弱い時もある。これがグランツールの真髄というものだ。
ジロは調子が良く、特にブロックハウスのフィニッシュに向かう感触は良かったから、行けると思って踏んだんだ。あのような状況で他の選手同様に攻めた。それが実る時もあればダメな時もある。そういうことだ。
「ヴィンツェンツォ・ニバリ」という選手を評価してくれる人がいるのは嬉しいことだが、俺にとってそれは当然なことだなんだ。なぜなら、その評価に値する走りだという自信があるからだ。俺は狙ったレース全てで勝てるスタイルではないかもしれないが、この「常に戦う姿勢」が好きなんだ。
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