12月19日にスペイン・アリカンテで、2019年ブエルタ・ア・エスパーニャのコースレイアウトが発表された。
第74回大会はスペイン南部バレンシア州の街トレビエハで開幕し(チームTT)、途中フランスに立ち寄りながらスペインを反時計回りに巡る。
例年通りのクライマーズレース
全21ステージで平坦コースが6、丘陵コースが4、山岳コースが9、チームタイムトライアルが1(18km)、個人タイムトライアルが1(36.1km)という内訳。頂上フィニッシュは6ステージと、2018年同様クライマー向きの厳しいレースが予想される。
また、今年はマイヨ・ビアンカ(白ジャージ)が、いままで誰も理解しえなかったコンビネーション賞(複合賞)から大会初となる新人賞ジャージに変更される。
ファンからすれば「やっとかよ!」といった改定なのだが、今回それ以上に注目を集めたのが…200km以上のステージがない、ことである。
時代を先取る決断
以下は今年のブエルタで距離の長い上位5つのステージである。最長でも第17ステージの199.7kmになっている。
・第17ステージ 199.7km(平坦)
・第6ステージ 196.6km(丘越え)
・第2ステージ 193km(丘越え)
・第20ステージ 189km(山岳)
・第14ステージ 189km(平坦)
あるジャーナリストによると、200km以上のステージがなかったのは近年のブエルタでは2003年以来三度目のことで、ジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスではいままで存在していない。
The 2019 Vuelta a Espana will have no stages longer than 200km. Here is a history of how often that has happened in the Grand Tours:
Tour de France: Never
Giro d'Italia: Never
Vuelta a Espana: 2000, 2003, 2019— Cillian Kelly (@irishpeloton) December 21, 2018
また、総距離も3272.2kmと、ジロ(3,518.5km)とツール(3,460km)よりも短めになっている(前年のブエルタの総合距離とは1kmしか変わらない)。
短距離化の理由
ステージが短くなった背景にはペーター・サガンの「退屈」発言が表しているように、レースのエンターテイメント性を高める狙いがある。
ブエルタ主催者のハビエル・ギレン氏はその意図をこう語った。
「今回は短く厳しいステージを用意した。革新的で新しい、ブエルタにいままでなかった登りだ。これがブエルタであるし、それは変わらない。逆にそのブエルタらしさを強めた(コースレイアウトに)なっている」
このブログで何回も言及していて聞き飽きたと思われるだろうが、去年クイックステップがシーズン73勝したのにも関わらず10月までスポンサーが見つからず、「勝利に市場価値はない」ことを広く証明してしまった。
このスポーツ全体の課題として、レースをいかに激しく面白いものにし、マーケット的価値を高めるかにある。
ドラマのジロ、退屈なツール、リベンジのブエルタ
2018年ツールでは65kmの超ショートステージ(第17ステージ)を取り入れるなど、視聴者に飽きさせない工夫が施されたが、総合順位に大きな影響もなく効果は薄かった。
また、2019年ツールも個人TTの距離が短いため、タイムを失いたくないチームが山岳で保守的な走りをするのは目に見えており、ツールがエンターテイメントとして前年より面白くなる可能性は極めて低い。
そのため、トム・デュムラン(サンウェブ)やプリモシュ・ログリッチ(チームユンボ)らがピュアクライマーに有利なツールではなくジロへの注力を宣言。2017年、18年と二年連続最もドラマチックだったグランツールはジロ・デ・イタリアだったように、今年もジロの盛り上がりは間違いない。
一方近年のブエルタは、ジロ・ツールで振るわなかった総合選手たちのリベンジの場と成り下がってしまっている。だからこそ、この短距離化が実を結び、文字通り目の離せないレースへと変わっていって欲しい。