炭水化物の解禁が導いた、フルサン活躍の舞台裏

「もっと食べるようにしたんだ。」

「大した秘訣なんてない。より多くの炭水化物が、レースのより多くの燃料になる。トレーニングにとってもね。」

アスタナの総合エース ヤコブ・フルサン(中継ではしばしフグルサングと呼ばれる)は今季、クリテリウム・デュ・ドーフィネで総合優勝し、ブエルタでステージ1勝、リエージュではそれまで接戦の末負け続けていたアフラフィリップを下し優勝するなど、キャリアハイとなる活躍を見せた。

英CyclingNewsのインタビューで34歳のベテランライダーは、覚醒した理由をたくさん食べるようになったからだという。

軽さという呪縛

「軽くなるという点において、僕の食事方法は正しくなかったんだろうね。」

これまでトップクラスの実力者であると認められてきたフルサンは、ここ一番で力を発揮できず、ここ数年辛酸をなめてきた。そしてその原因を、それまでの食事方法にあったのだと語る。

「常に空腹で、常に何かを食べていた。でも問題は、その時にサラダや野菜を取るか、あるいは一皿のパスタ・ライスを食べるかという選択について真剣に考えてこなかったからなんだ。」

自転車選手は、特にフルサンのような登坂力に特徴のある選手にとって体重は成績に比例する。パワーレイトレシオ(体重1kg辺りどれだけワット数を出せるか表した割合)を高めるためには、ある程度体重を軽くする必要があるからだ。しかし選手は同時に、200kmを超えるレースの最終局面で力を発揮するためのエネルギーも蓄える必要もある。

「基本的に激しい運動に見合ったものを食べていなかったんだ。『明日は軽いステージだから、あるいは今日(のレース)は激しくなかったから食べるのは少しだけにしよう』と思ったとしても、次の日がとても辛く燃料が空っぽになってしまう。良いパフォーマンスには(十分な)エネルギーが必要だということに、その日の終わりに気が付かなければならない。」

競り負けから圧勝へ

今年のクラシックの主役はジュリアン・アラフィリップだった。それに対しフルサンはストラーデ・ビアンケで2秒差の2位、アムステルゴールドレースでは3位、フレッシュ・ワロンヌで再びアラフィリップと争い、スプリント勝負で破れた。

僅差で勝利を逃し続けていたものの、総合系選手という印象だったフルサンのクラシックでの活躍のインパクトは大きかった。

「目に見えるぐらい大きな違いが生まれた。特に長くて厳しいレースでは。トレーニングでも違いは出てきて、より追い込むことができるようになった。大きな変化となったんだ。」

そしてフレッシュ・ワロンヌから四日後のリエージュ~バストーニュ~リエージュ(距離が256kmにも及ぶサバイバルな特性のレース)で、アフラフィリップらを置き去りにする飛び出しにより、自身初となるモニュメント勝利を上げたのだ。

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残り15km地点付近で集団から抜け出したフルサンは、途中ヒヤッとする左コーナーをみせながらも、2位と27秒差をつけてリエージュ~バストーニュ~リエージュ優勝を掴んだ。

銀メダリストが目指す2020

 2018年シーズン終了時にその年の反省をしたフルサンは、トレーニングの効果をレースで十分に得られていない事実と向き合ったという。

そしてその原因が、体重を増やしてはいけないという一種の強迫観念からだったと話す。

「おかしいよね。選手はとにかくもっと痩せたい痩せたい痩せたいと思っている。そして『もっと体重を軽く、もっと軽く』(と周りは言ってくる)。」

しかしチームの栄養士の協力もあり、大きな改善に繋がった。

2016年リオ五輪ロード銀メダリストは最後に、今シーズンで得た知見を使い総距離234km・総獲得標高4,865kmのタフな2020年東京オリンピックを目指すと語った。