「シートステーは飾り」サーヴェロ開発者が言い切る!

出場選手の半数以上が落車に巻き込まる、波乱の幕開けとなった2021年ツール・ド・フランス初日。

そのきっかけを作った段ボールお姉さんが世界的にバズるなか、ある意味それ以上にサイクリストの注目を集めたのが、シートステー1本でフィニッシュしたサーヴェロ R5だ。

このだまし絵のようなバイクに乗り完走したのはユンボ・ヴィズマのステフェン・クライスヴァイク(オランダ)。

ちなみに、クライスヴァイクは走行中「リアタイヤにパンクしているような感覚」があったものの、フィニッシュ後まで気づくことなく、走行データでは登りを含め通常時と変わらない数値を示していたという。

そして、そんな珍事にいち早く反応したのが豪メディアのCyclingTips。機材記事を担当するジェームズ・ハンが、この件についてサーヴェロのエンジニアリングマネージャー(開発部門主任)であるスコット・ロイ氏にインタビューした。

無くても剛性は変わらない

「朝起きてその写真を見た瞬間、大きな衝撃を受けつつもそこまで驚かなかった。エンジニアリングの世界ではよくあることだしね。でもみんながサーヴェロを褒めてくれていたのは嬉しかったよ」

と、非常にポジティブな話し出し。

「ただ、これはとても特殊な状況下だったので、みんなは落車したらバイクショップで点検してもらってくれ」

ごもっとも。そして話はさっそく本題へ。

この写真を見て世界中のライダーが抱くのが「シートステーってなくても走れるの?」という疑問だ。ロイ氏はこう答える。

「構造上の点から言えば、主に負荷がかかる箇所はダウンチューブとチェーンステーだ。ソロイスト(SOLOIST)かR3 SLを開発した頃だったか、負荷のかかるパーツを徹底的に調査したんだ。その結果得られた答えがあの細いシートステーの導入だったんだ。我々にとっては転換点となった出来事だよ」

そしてこの記事(エントリ)におけるサビがきます。

「現時点における軽量フレームにおいて、シートステーという部分は”シートステーをつけなくてはならない”という理由でしか存在しない。可能な限り細く小さくしていいならば、我々はそうするだろう」

マジですか!

(シートステーの)縮小化を阻んでいるのは(耐久)テストの結果ではなく、UCIの規定なんだ。これ以上(細く)小さくするとルール違反になってしまうからね」

そーなんですね!!

シートステーの存在意義とは?

残念なことにフレームにおいて「なくてもいい存在」だと明らかになってしまったシートステー。それでは現行モデルにおいて、シートステーは(最低限であったとしても)どの程度剛性に寄与しているのだろうか。ロイ氏が実に滑らかな口調でこう語った。

「(シートステーが果たしている役割は)とても小さいね。もしシートステーを取り除いたとしてもフレームの損なわれる強度は5%以下。つまり誤差の範囲だろう

誤差の範囲!!

気持ちいいぐらいに言い切ったロイ氏。もちろん「シートステーを切断した状態での耐久テスト」なんて行っていないので、正確な数字だとは言い切れないものの、軽量バイクにおける「シートステー飾り説」は濃厚のようだ。

むしろデメリットの方が大きい

シートステーがフレームの剛性に影響していない理由として、「フレームで最も負荷のがかかるボトムブラケット周辺*をより大きく設計することで、チェーンステーへの剛性が一層高まり、ますますシートステーへの負担が減る(=シートステーがいらなくなる)のだ」と語るロイ氏。*ダウンチューブからBB、BBからシートチューブにかけて

もちろん現行のロードバイクのシートステーを切断しても剛性は変わらないかもしれないが、クライスヴァイクが証言するように乗り心地には影響するだろう。だが、その設計はすでにサーヴェロ P5X(トライアスロン用バイク)で実行済みかつ、現状それほど難しくないのだと言う。

「シートステーをなくそうと思えば(できるが)…もちろんデザインや配置から設計をし直さなければならないだろう。ただ、”世界の終わりだ!”と嘆くほど難しい作業ではないんだよね」

シートステーが阻むロードバイクの進化

実は、今回の出来事の大分前よりサーヴェロは「シートステー不要論」を唱えている。最後にロイ氏によるシートステーを存続させているUCI規定への恨み節をどうぞ。

シートステーを取り除くことで得られるメリットは、シートステーの重量や阻害される空力などのデメリットを上回る。UCIによるこの規定はこのスポーツにおける伝統を守る目的なのだろうし、それは構わないと思っている。だが、その規定の届かないトライアスロンのバイクを見ていると”これが最先端のテクノロジー”だと…ワクワクするんだよね」

以上、とても正直なサーヴェロの開発者さんでした。