イタリアのプロチーム(旧プロコン)ヴィーニ・ザブ・KTMが、今季からレース中のパワーメーター使用を禁止したと、伊ガゼッタ紙に伝えた。
かつては宮澤崇史や佐野淳哉が所属していた同チームのルカ・シント監督はその理由をこう語る。
「多くの選手が(パワーメーターの)数字ばかりを考え、影響を受けてしまう。そんなことは終わりにして、選手には自由に走れるようになって欲しい」
レース中のパワーメーターが選手にもたらす悪影響として、結果が出ない言い訳としてパワー値を持ち出すからだという。
「選手が言う『400W出していたのに負けた』『300W以上出さなかったから今日は結果が出なかった』『心拍数が上がらなかったから自分はう疲れているのだろう』などの言葉には飽き飽きしているんだ」
イネオス包囲網とは異なる理由
自転車ロードレースにおけるパワーメーター不要論はここ数年活発になっており、特にツールのディレクターであるクリスチャン・プリュドムが2018年にASO(ツール主催)を代表してパワーメーター禁止をUCIに訴えたことが話題になった。
またその直後、アレハンドロ・バルベルデやナイロ・キンタナも「レースがつまらなくなる」という理由で賛同している。
しかし、それはあくまでもチームスカイ(当時)が他チームがアタックできないような集団コントロールをあらゆる数値を用いて行う手法に対する批判の一貫だった。
広がるデータ活用格差
今回のヴィーニ・ザブ・KTMの場合は練習では認めているといえ、チームがレース中のパワー値を否定した珍しい例だ。
この決断には昨年までバーレーン・メリダに所属していたチームの中心であるジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア/37歳)は賛同しているものの、チーム内に一定数反対する選手もいると、ガゼッタ紙は伝えている。
チームスカイの登場により、ここ10年の自転車競技には著しい科学化、データが進んだ。そしてパワーメーターや心拍数など選手やチームが得られる多くの数値が等しくなったものの、データを有効活用し、選手が数字に振り回されないようコントロールする運営手腕の格差は、広がってしまっている一方なのかもしれない。