「スクインシュの後輪、アレは…なんだ?」ランス・アームストロングによる2018年ツール第9st評

今季ツールのハイライトの一つ第9ステージの石畳コースを制したのは、トレックのジョン・デゲンコルプ(29歳/ドイツ)だった。2016年シーズン序盤の大怪我からの復帰を印象づける、2015年ルーベ&ミラノ〜サンレモ覇者による見事な勝利となった。

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ランス・アームストロング:
今日は楽しみにしていたルーベ・ステージだ。てか、今日はなんて日なんだ。ルーベ・ステージの他に、サッカーW杯の決勝戦と、ウインブルドンの決勝戦まである。なんて日だ。

そして今日はスペシャルゲストにジョージ・ヒンカピーが来ている。ジョージにとっての庭だもんな、ルーベは。

過去のツールで最も長くて多い15の石畳区間があった。約160kmの距離を平均時速が46kmだ。すげえ。

ーーそして悲劇がたくさん生まれたね。

ランス:いいや。それは合っているし、同時に間違いでもある。確かに、たくさんの落車が起こったが…

ーーあまり総合に影響しなかった。

ランス:俺が絶対に生き残れないと思っていた、ロマン・バルデ、ナイロ・キンタナ、クリス・フルームたちが無事だった。

ジョージ・ヒンカピー:
総合勢の頑張りには目を見張るものがあったよ。注目は今日のステージからどう回復するかだね。山岳ステージなどとは身体にかかる負担が違うからね。明日は休息日だけど、第10ステージには厳しいコースが待っている。

ーー今日の石畳は乾いていたね。情報によるとここ4週間ほど雨が降っていないって。その影響からか、春の濡れている石畳より滑りやすいように見えた。

ヒンカピー:たくさんの選手がコーナーで滑っていた。それがタイヤの空気圧の判断ミスに起因することなのかわからないが、砂埃のせいなのか、ドライの状態であんなに落車が多いレースは観たことがないな。

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ランス:奴らはワケがわかっていなかったんだ。レースに激しく入りすぎた。

ヒンカピー:でもジルベールも同じように激しかった。彼はプロトンのなかでも冷静で、バイクハンドリングもうまい選手だろ?

ーーメイン集団の先頭を走っていたスカイの選手を見て、ジョージは「先頭なのになんであんなに速いスピードでコーナーに入っていくんだ?」って不思議がっていた。

ヒンカピー:石畳で大切なのは、なるべく集団の前で石畳に入ることだ。だが、選手はプロだし、周りを観察する余裕がある。だから石畳に先頭で入ってスピードを緩めれば、後ろの選手たちが自分たちの後ろに集まってきて、ストレスを与えることができる。だから速いスピードでコーナーを走るメリットはない。リスクしかない。なぜだか、それを選手たちは何回も繰り返していたのだけどね。

ランス:とにかく砂埃がすごかったな。

ーーあんなところ走っていたら、埃が鼻や口から肺に入って大変じゃないか?それを全て出しきるのに二日とかかかるんじゃないか?

ヒンカピー:ああ。レース後は一日ずっと咳き込むだろう。それに落車したランダ、TJは明日の休息日にショックがくるだろうな。そのまま翌日の厳しい第10ステージに臨むんだ。



ーーあんなに多くの選手が落車するなんて、クレイジーなレースだったよね。

ランス:俺は今朝5:30に目覚ましをセットしたのだが、5:26にジョージからメッセージが来たんだ「ポートが棄権した」とな。

映像をわざと映さないのか「観客との接触」があったみたいだ。そして棄権。二年連続な。

ーーしかも去年も第9ステージだった。

ランス:鬼門だな。リッチー・ポートにとって。最初は鎖骨骨折と報道されたが、骨折はないと訂正が入った。

BMCのジム・オショウィッツGMは、「彼(リッチー・ポート)の鎖骨は折れていなかった。そしてどこも骨折していない。現地の病院に行き、いまアナシーに向かっている。荷物が彼をそこで待っている」とコメントを出した

ーーこれつまり「骨折していないのだからレースを続行するべきだった」というGMからメッセージっていう意味?

ランス:わからない。俺は引用しただけだ。

ヒンカピー:厳しい言葉だね。でも僕の経験から言わせてもらうと、アレは骨折よりよっぽど痛い怪我だよ。

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ーー今日はホントに色んな選手が落車した。フルームや、ランダ、ウラン、フルーネウェーヘン。

ランス:タイヤがめちゃくちゃになっていたもんな。そんなに激しくぶつけたのだろうか?

ーー落車した選手たちは、今日は問題なく走り出すことができたけど、その日の夜や、次の日、あるいは2日後への影響はどんなものなんだい?ひどくなったりするの?

ヒンカピー:落車した選手たちの休息日はなくなってしまったも同然だね。

ランス:TJも落車したな。しかも膝から着地したように見えた。

ーー今日一番ガッカリした選手と、予想以上の走りをした選手は?

ヒンカピー:ナイロ(キンタナ)が問題なく走り終えたのは、一番の驚きだったな。

ランス:その前に今日のMVPは?

ヒンカピー:勝利したデゲンコルブ(29歳/トレック)だよ。

ランス:俺のMVPはロマン・バルデだ。落車して、また落車したと思ったら、三回目も落車したんだ。しかも三回目のタイヤ交換がめちゃくちゃ遅かった。

もし自転車選手になりたい人がいたら、タイヤ交換は自分でできるようにならないといけない。ボランティアのスタッフに任せては駄目だ。自分でやらないと。45秒もかかっていたぞ?だったらタイヤをスタッフから掴み取って自分で交換しないと!



ランス:そして、全ての悪いことはツイッターから始まるのだが、今日はトレックの若い選手トムス・スクインシュが落車から復帰するシーンの映像が、タイムラインにはたくさん流れていた。

…後輪がとても速く回転していた。

ーー山岳賞ジャージを着用している選手だね?

ランス:ああ。モータードーピングは自転車ロードレース界ではありえない。確かにUCIはタブレットやX線検査を使って調査をしているが、そんなことありえないと思っている。

だが、この動画は…説明がつかない

俺はこの動画を50回は見たが、ここに映っている現象を説明することができない。

ーー注目すべきは、山岳賞ジャージの白い自転車の後輪だね。

ーー自転車を持っているだけなのに、後輪が勝手に回っているんだ。これは…信じられない。今日の話題の中心はこの映像になるだろうね。

ヒンカピー:この直前に彼がどういう行動をしているのかが分からないのだけど、落車して外れたチェーンを戻して、その後、確認する為に後輪を回したとも考えられる。それをしかたどうか、この動画には映っていないけどね。

ランス:ジョージ、タイヤは地面を離れた瞬間に回転しているんだぞ?

ヒンカピー:トムスはそんなことをする選手じゃないよ。これが僕の意見だ。でも変な映像だということは確かだけどね。

ランス:何が起きているのか分からないが、説明は求められるだろうな。メカニカルドーピングにどんな種類があるのか、シートチューブにエンジンを仕込むのか、磁気的なシステム何かによるものなのか分からないが…

ヒンカピー:プロトンを走る選手たちの中で、モーターを仕込んで走っている選手がいると思っている選手はいないよ。でも確かにこの動画は変だし、説明が求められるだろう。

ランス:俺もモーターを仕込んでいると疑われたことあるからな。

ヒンカピー:あったね。

ランス:他のことは知らないが、俺の自転車にモーターはなかったよ。

ーーこの疑惑はどうなっていくの?

ランス:UCIはヤツの自転車を調べるだろうな。

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ヒンカピー:スクインシュはチェーンを戻して自分で後輪を回したんだよ。僕の主張はね。

ランス:ジョージ、タイヤは地面を離れた瞬間に回転しているんだぞ?

ヒンカピー:あそこには溝があったんだ。説明つくだろ?その証明は難しいかもしれないけど。ていうか、僕はビデオ解析の専門家ではないのだけどね。

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〜追記〜

モーター・ドーピングを疑われたトムス・スクインシュ(27歳/トレック)についてですが、その後以下のような別角度の動画が拡散されました。

左奥に映るスクインシュがチョーンを戻した後、自転車を持ち上げる直前に、右手で後輪を回している(右腕と後輪の回転が一致しているように見える)様子が映っています。

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・一部を抜粋し、多少の意訳を加え翻訳した音源はコチラ↓

・ランスの盟友ジョージ・ヒンカピーも登場するランス自伝はコチラ↓

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