「ツールに柵はいらない」ランス・アームストロングによる2018年ツール第13st評

アルプス山脈3連戦で主要なスプリンターたちがツールを去った後、勝利したのはやはりペーター・サガン(28歳/ボーラ)。昨年逃したマイヨ・ヴェールをより確かなものにする今ツール5勝目だった。

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ランス・アームストロング:

今日はヴィンチェンツォ・ニバリ(33歳/バーレーン)のことから始めなければならない。昨日、落車して今日はスタートすることができなかった。どこを骨折したんだっけ?

ジョージ・ヒンカピー:

胸椎(きょうつい)の椎体(けいつい)骨折だ。時速10マイル(約16km)でラルプ・デュエズを登っていて落車で骨折するのは、相当な確率(アンラッキー)だよね。

ランス:だが、ニバリは再び自転車に乗り、もう少しでフルームたちに追いつきそうな所まで走ったんだ。俺は頚椎を骨折したことはないが、凄いガッツだ。

ヒンカピー:間違いない。

ーーここで議論に上がるのが「ラルプ・デュエズの観客たち」だ。毎回あんな感じなの?それに頂上までフェンスを設置するべきだという意見もある。二人はツールの象徴でもあるラルプ・デュエズでの警備体制についてはどう思っているの?

ヒンカピー:有力選手がああいったカタチでいなくなるのは…悲しい。それにニバリは僕たちの優勝候補だったわけだし。調子は良くなかったのかもしれないが、少なくともポディウムのチャンスはあった。観客を制御するもっと良い方法があったと思うけどね。



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ランス:まず煙幕や旗など視界を遮るものは、あの場にあるべきではなかった。呼吸もできなくなるしな。

誰かのインスタでみたのだが、原因はカメラのストラップがハンドルに絡まったことらしいな。ハンドルバーは何が触っても、簡単に落車してしまうんだ。それは(バイクハンドリングが上手い)サガンやヒンカピーであってもな。

それにヒンカピーも指摘していたが、スピードの遅いなかでの落車は、転がるよりもパンチのようなショックを受けるんだ。誰も時速80kmで落車はしたくないと思うが、その場合は転がるだけだ。だが時速13kmだったら、それはパンチになる。

ーー観客の制御について話してくれないか?

ランス:その前に、ヨハン・ブリュイネールインスタのコメントを引用したい。

「昨日のニバリの落車について様々な意見を読んだが、どれにも一理あったと思う。一番は観客に対し尊敬の念が必要だということだ。こういった問題はずっと昔から起こっている。一方で、自転車ロードレースというスポーツは年々拡大している。おい!ツール・ド・フランス!これはラルプ・デュエズだ。ツールの象徴だ。酔って狂った観客が道中にあふれかえることは想定できたはずだ。しかしフェンスはラスト4km地点からしか設置されていなかった。これが最も大きな問題だ」

つまり、ヨハンは柵を山の麓から頂上まで設置するべきだと主張しているように見える。

しかし、俺は反対だ。

そもそも観客の誰も柵の外にいたいと思うやつはいない。そりゃ選手と並走したいさ。つまりここでバランスを取る点を探らないければいけない。選手にとっては嫌であってもレースに柵はいらない。だが、観客は選手に向かってパンチや尿を投げつけてはいけない。選手を尊重しろ。でも制限のしすぎはだめだ。観客のパッションもスポーツの一部なのだからな。

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ヒンカピー:なるほどね。でも昨日のラルプ・デュエズの麓にも所々フェンスが設置されていた。あれは今までみたことないことだったね。

ーー規則とかあるの?観客に押された時の救済みたいな?

ヒンカピー:ないね。

ランス:規則ではなく法律はあるから、ある意味は存在するが、例えば、エディ・メルクスが観客にパンチされたことは有名だし、昨日の第12ステージでクリス・フルームがパンチされ(実際は小突く程度)、その観客が逮捕されたらしい。

また明日!

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