ソックス長さ規定の原因は俺。ランスによる2019年ツール第2stレビュー

ベルギー・ブリュッセルの観光地を巡る27.6kmのチームTTは、第1走者で2時間近くホットシートに座っていたチームイネオスを最終走者のユンボ・ヴィズマが20秒上回る快走を見せステージを制した。

この日はツイッター上で拡散されていたUCIコミセールによるソックス長さ計測の話題とともに、ジョージ・ヒンカピーがチームTTの走り方を解説した。

ソックス規定は俺のせい

ランス・アームストロング:選手がソックスの長さを測られていたが、あれは俺のせいだ。

関連記事:校則かよ!UCIが来年から靴下の長さ規定を厳格化

ランス:着圧ソックスを使い始めたのは俺たちなんだ。その当時、世界記録を出すなどマラソン界を席巻していたポーラ・ラドクリフというイギリス人のマラソン選手が着圧ソックスを履いて走っていた。それもお年寄りや旅行時に履く、そこら辺の薬局で買えるソックスだ。だから俺たちも買って試してみたら上手く行ったんだ。

ーーそれはどういう原理なの?

ランス:俺は科学者じゃないから詳しいことは分からないが、どうやらふくらはぎは下半身に血液を送り出すポンプの役割をしていて、その心臓へと渡る血流が強ければ強いほど…、とにかく実際に上手く行ったんだ。

理由は忘れたが、当時のツール主催者とランチをしていた時に「一体何を履いているんだ?」って聞いてきたんだ。だから「最近試している着圧ソックスだ。ツールでも履こうと思ってる」って答えた。そしたらやつの顔色が白くなって、おそらく直後にUCIに電話して「あいつら着圧ソックスを履こうとしてるぞ」って伝えたんだろうな。

ーーその時はまだ(ソックスに関する)ルールはなかったんでしょ?

ランス:もちろんだ。そして次の日(UCIは)ソックスの高さに制限をかけるルールを発表したんだ。

実際に効果あるんだ。まるでそういう会社の宣伝みたくなっちまったけどな。

ジョージ・ヒンカピーによるチームTT講座

Embed from Getty Images

ジョージ・ヒンカピー:今日のチームTTはユンボ・ヴィズマが他を圧倒したわけだが、ここでチームTTの複雑さについて説明したい。

今日のコースは27kmだった為、選手は激しくペダルを回さなければいけなかった。そのためスタートではゲラント・トーマスのようなトラック経験者がスタートで先行していた。

今日のAG2R(1分19秒遅れ/19位)やモビスター(1分5秒秒遅れ/17位)を見てみると、彼らは非常に気の抜けたスタートをしていた。おそらく最初の500mで10秒は失っただろう。

一方でイネオスやユンボは、常に最後尾のことを考えていた。彼らはできる限り早く一列を形成しようとしていた。先頭を牽く選手は最後尾の選手のことを考えながらね。なぜなら最後尾の選手はコーナーで少し割を食ってしまうからだ。

フォーメーションになった後ははできる限り一つの塊を保つようにする。もちろんそれは空気抵抗をなくすためだ。

チームTTにおける2つのスタイル

その後ヒンカピーは、チームトライアルの2種類のローテーション方法の解説をはじめた。

一つ目はダブルペースライン。これは先頭に出る選手のラインと、牽き終えて先頭交代して後ろに下がって行くラインの二つでローテーションする方法だ。逃げ集団が形成されたばかりの時によく見られるフォーメーションだ。

これだと選手一人一人が先頭を牽く時間が短く、速度は速くなる一方で、あまり効率的ではないという。なぜなら先頭交代が早いのでリカバリーする時間が短く、TTの得意な選手と苦手な選手の先頭を牽く時間が同程度になるので、彼らの強みを活かすことができないからだ。

そのため多くのチームは一つのラインを保ち、TTの得意な選手が20~30秒先頭を牽き、苦手な選手は先頭を牽かずフォーメーションを崩さないように先頭に出るだけで後方に戻るローテーション方法をとっている。

ヒンカピー:チームTTで大事なのは先頭を牽いた後は、大きく横にズレなければならないということだ。少し横に出ただけでは、一つ後ろの選手が引いているのか引き終わったのかが判別がつかず、それがタイムロスに繋がってしまう。

TTのタイムが良いチームは、選手のラインから大きく外れる動きをする。そして大きく離れて後ろに戻る。なぜなら選手のラインの近くで下がると、空気抵抗の邪魔(乱してしまう)になってしまうからね。そして後ろに下がる選手は前から5人目の辺りでスピードを上げ始めラインに戻る。