「行き過ぎた規制が、選手を不幸にしている」ランス・アームストロングによる2018年ツール第2st評

ーー昨日の第1ステージで落車したローソン・クラドック(EFエデュケーション/アメリカ)について話そうか?

ランス・アームストロング:

そうだな。昨日、彼からメッセージが送られてきたのだが、肩甲骨を骨折して一晩を過ごし、今日はリタイアをぜす出走した。

俺も鎖骨を骨折したことがあるのだが、痛み方も違うだろうから、ヤツがどんな状態かはわからない。だが、ローソンは万全からはほど遠いだろう。今日も実際そのように見えた。左に傾いて見えたし…

ーー強いね。

 

ランス:そうだな。ローソンについて称賛すべき点は三つある。

まずちゃんと集団についていったことだ。後半は後ろで何もしなかったが、それは賢い選択だった。もう一度、落車にでも巻き込まれたら大変なことになるからな。ヤツの今日の目標は「無事にフィニッシュすること」だ。ツールを通した目標も同じだろう。

レース前のインタビューで記者が「昨晩、今日を迎える為に何をしたのか?」と質問していた。

ヤツは「カイロプラティック治療を受けて、薬(認可されている)を飲んで…」と、答えていた。

そうなんだ。プロの自転車レースでは、それができる最大限なんだ。

 

…そんなのクソだ。

 

これは世界で最も過酷なスポーツなんだぞ?

選手が落車で肩甲骨を骨折して、本人は競技をつづけたいと言っている。

だが、この自転車ロードレースというスポーツは色んなものに配慮しまくった結果、選手に「何も治療するなと」と言い放す。

「お前が快適な睡眠なんか関係ない」とな。

「アドヴィル(非ステロイド性抗炎症薬)と、痛み止めしか飲んじゃだめだ」と言うんだ。

俺はこの現状を具体的に解決する方法を知らないが…

アドヴィルよりもマシな治療法を認めるべきだ。

 

規制が行き過ぎた結果、選手を不健康にしている。

これは…何かを変えないといけない。

 

昔、ある選手が頭をハチに刺されて大きく腫れ上がったことがあった。その時、用途が誰の目からも明らかなのにコルチゾンの摂取が認められなかった。

 

そんなクソなルールなんてやめちまえ!

 

これは世界で最も過酷なスポーツだぞ?

別に、棚の中にある全ての薬を合法化しろとは言っていないんだ。

…まったく。

 

ーーローソンは明日のチームTTが心配だね。時間制限あることだし。

ランス:肩甲骨を骨折した状態で、DHバーに腕を乗せないといけないんだ。ちょっとの振動が直接骨に響くはずだ。これは生易しいことではない。

ーーどう乗り越えるか、見ものだね。

ランス:自転車ロードレースにおける怪我人については、何時間でも話せるが、そろそろポジティブな話題に移ろう。



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ーーサガンが勝った。君が予想していた通りにね。若干の登りフィニッシュだった。君がサガン好みと言ったように、実際にそうなった。

ランス:サガンはいつも正しい場所にいるんだ。対照的にグライペルは後ろにつく選手を素早く変えられなかった。

サガンは、とにかく間違えないんだ。

どこにポジションをとって、いつ飛び出せばいいか知っている。地形も含め、全てを把握できている。

ーーなぜサガンは「傾斜のあるフィニッシュ」が好きなの?他の選手よりパワーがあるから?

ランス:変に聞こえるかもしれないが、サガンはパワーがあるがスピードがない。

他のピュア・スプリンターと比べるとスピードは劣っているんだ。だけど、彼の筋肉でねじ伏せることができる。

実際、今日のスプリントではソニー・コロブレッリ(バーレーン・メリダ)が迫り、二人同時に自転車を投げだして決着がついた。もしフィニッシュ地点が10〜20m後方だったら勝者は分からなかった。

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ランス:サガンはいつ飛び出すか、どこで力を使うのかを知っているんだ。特別な力だよ。

それにレース前のサガンなんか、好きにならざるを得ないキャラクターを見せている。

ーーそうなんだよ。今日のレース後、メディアがマイヨジョーヌを祝う言葉を掛けたら「一日だけね」だって。可愛くない?

ランス:そうだな。

ーーそれに昨日SNSに上がっていた動画で、レース後にファンに囲まれていたサガンが道に落ちたファンのサングラスに気づいたんだ。サガンぐらいのスターならそのまま通りすぎてもいいのに、立ち止まり拾いあげて、「これ誰の?」ってファンに呼びかけたんだ。そういう小さいことだ。わかる?彼のファンや子どもとの接し方は、思わず好きになっちゃうよね。

ランス:自転車ロードレースのアイコンだな。



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ーー明日はチームTTだね。

ランス:そうだな。総合順位を狙う選手にとっては大事な一日になる。そして、俺も経験があるのだが、チームでTT能力が8番目、7番目の選手を、総合リーダーが話しかけ可能な限り鼓舞してやる気にさせなければならない。

俺が一番最初にやったチームTTは世界選手権で、たったの4人で100kmを走る地獄のようなレースだった。自転車ロードレースで最もつらい種目だろうな。

今回は8人だが、それでも辛い。だから総合リーダーは「レース半分だけは頑張って走ってくれ」と頼むんだ。時間制限もあるからその選手の為にもなるしな。

それに8人が綺麗に一列並んで走る姿は、それだけで美しい。自転車やヘルメットを含めてな。

ーーアマチュアのホビーレーサー同士が走っていたら、一人が前を引いて、力尽きたら後ろに入るだけだけど、プロのチームTTはどんなメカニズムで先頭交代をしているの?TTが得意な選手がより長い時間前を引くとかあるのかい?具体的に何秒、あるいは何分間前を引くとか決まっているの?

ランス:最悪なことは強い選手が前を引いた瞬間に加速することだ。そんなことをしたらTTが苦手な選手がちぎれてしまう。一番効率的なのは、強い選手ができる限り長い時間前を引くことだ。

 

(強い選手が)速く引くのではない。長く引くんだ。

 

ーー本当?逆だと思った。

ランス:一定のスピードを保ったほうがタイムは良くなる。

ーーローテーションの数は少ない方がいいということ?

ランス:ああ。そうだ。

 

ーーここでリスナーからの質問に答えようと思う。
「こんにちは。この番組は何のバイアス(偏り)もかかっていないから好きだよ」これは嬉しいメッセージだね。

ランス:そうだな。この番組にバイアスはない。俺の元チームメイトのダリル・インピー(ミッチェルトン)が見せた、昨日のコーナーリングはクソだった。

ほらな?

今日はここまで、また明日会おう!

 

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一部を抜粋し、多少の意訳を加え、翻訳した音源はコチラ↓

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これを発売直後に読んでいた人はまだ、後にツール7連覇して全て剥奪されたと知らなかった、と思って読むと尚おもしろい。

・ランス・アームストロングの暗部を知りたい人はコチラ↓

著者であるハミルトンの言っていることが全て事実ではない(らしい)けど、大体合ってるらしいってのがまた面白い。