人種差別的ツイートで謹慎処分を受けたシモンズが「罰は重すぎた」と不満を語る

昨年9月より二ヶ月間の謹慎処分を受け、シーズン開幕戦を迎えたクイン・シモンズ(アメリカ/19歳)が取材に答え、「処分に値する行為だったとは思えない」とチームの処分を疑問視する意見を語った。

「ブランド(チーム)を代表する行為ではなかったという自覚はあるが、それによって(2020年シーズンの)クラシックに出場が叶わなかった。率直に言えば、出場できていればチームのために大きな役割を果たせたはずだ。それを犠牲にする謹慎処分は恐らく、いや、絶対に相応しくない」

ことの発端はアメリカ大統領選挙真っ只中の2020年9月30日、オランダ人ジャーナリストの「私のフォロワーでトランプの支持者がいたら、ここから去ってくれていい」というツイートに対し、シモンズが黒い肌の手を振る絵文字を添えて「さよなら」と書き込んだことにある。

この行為に対しトレック・セガフレードは即座に声明を発表し、「クイン・シモンズの発言は対立をあおり、扇動的で、チームやプロサイクリング、ファンやこのスポーツの未来に対し害をなすものである」と糾弾。チームはUCIの判断を待たず、自主的にシモンズに謹慎処分を下した。

ジョークだった

処分直後にシモンズは、人種差別的な意図はなかったと説明し、謝罪した。

「絵文字の色を人種差別的だと感じた人々に対し、そういった意図はなかったと伝えたい。また、あのツイートによって気分を害した人たちに謝罪したいし、僕は人種差別に強く反対している」

そして今回のインタビューで、この絵文字はSNSで広く使われているジョークの一つだったと釈明した。

「どれだけの人が知っているかは分からないが、あれは少し前の映画に出てきた『さよなら、フェリシア』というジョークなんだ。これは何度もSNS上で目にすることができるジョークで、友達に対しても送ったことがあるかなり一般的なジョークだ。僕の周りではよく使われていたので、それが広く知られているジョークだと勘違いしてしまった」

米VeloNewsのFred Drierは、たしかに2015年頃から「黒い肌の手を振る絵文字」は黒人・白人を問わずSNS上で「バカなことを言っている人を追い出すためのフレーズ」として使われている、と説明する。

「正直、僕が考えもしなかった(人種差別的な)意図として伝わってしまった。あの絵文字の(肌)色は、僕が最も最近に使っていたものだったんだ。なぜなら入力すると一番最近に使われていた色になるからね。以前も同じ目的(ジョーク)で使ったことがあったから、そのまま使われてしまったんだ。僕の意図とは反してね」

クレイジーだ

ジュニアカテゴリで走った2019年シーズンは世界選手権ロード男子ジュニアの優勝を含む11勝を上げ、昨年鳴り物入りでトレック・セガフレードに加入したシモンズ。

今回の問題について、以下のように反省と総括を語った。

「今回の問題で学んだことは、二度とこのようなことをしないということ。そしてこの類の議論には近づかないということだ。この問題についてはまだ納得いっていないことがあるが…こんなことになるとは想像もしなかった…本当にクレイジーだよ。色の変わる絵文字が怖い。いまは色の変わらない絵文字しか使っていないよ」

「僕の仕事はサイクリングを普及するため。自転車に乗っているときも、乗っていない時もチームを代表することだ。僕は政治コメンテーターではない。そしてアスリートの普遍的なルールは、(政治には)近づかないということだ」

約5ヶ月振りとなるレース復帰をフォーン=アルデシュ・クラシック(1.Pro)で迎えたシモンズは、強豪選手が顔を揃えるなか、いきなり10位に入り実力を見せつけた。

一騒動になった理由

ここからは個人的な感想というか、なんでこの問題かこれほど大きな議論を生んだのかについて。

ちなみに「いや、そもそも大した話題になってねーし!」というツッコミは当然で、日本の自転車メディアはこの問題を一切スルーで、AFPしかまともに記事にしていないから。ややこしい問題だしね。

そもそもトランプ支持を訴えることに何も問題はないし、トレックもシモンズがトランプ支持だから処分したのではなく、その表現方法がプロ選手にあるまじき行為だったということから(ここが一つ目の勘違いポイント)。また、トランプ支持者が必ずしも人種差別主義者っていうのも短絡的なので、シモンズの謝罪の言葉に何の矛盾もない(でもここが燃える争点になった)。

ただし、今回のインタビューで「あの絵文字はジョークだった」という釈明がなされるまでは、自分も「シモンズ=人種差別主義者」で、彼の「僕は人種差別に強く反対している」という謝罪文を「いや、無理あるってそれww」って冷ややかに思っていた。退団やむなしとさえ。

なぜかというと、問題になったツイート後にシモンズがしたつぶやきにある。

絵文字ツイートの翌日、この騒動に対し著名なアメリカ人ジャーナリストが「人種差別を支持する選手は応援できない」とツイート。それに対し、シモンズはハートの絵文字つきで「なんて損失だ」と投稿したのだ。伝わるかなこれ…

オフィシャルの文面で「差別主義者でない」と否定する一方で、こんなツイートされたらこっちは「おい!認めてるじゃねーか!」って、思われても仕方がないだろそりゃ。

 

終わり