日本人選手がフォロワーを増やすために実践するべき10箇条

SNSでフォロワーを増やす唯一の方法は、

フォロワーにとって有益な情報をひたすら発信し続ける

です。

しかし注意しなければならないのは、決して「フォロワー=ファン」ではないということです。

いくらフォロワーが多いからといって、その人たちがあなたを観るためにレース会場に足を運びませんし、SNS上で応援コメントを投稿してくれることもありません。

ではどうしてフォロワーの数を増やすことが大事なのでしょうか?

それはフォロワーが「潜在的ファン(将来ファンになる可能性が高い人たち)」だからです。

SNSはストリートライブ

「フォロワーを増やす」という行為を「路上ライブ」に置き換えてみましょう。

プロ選手として日常的にレースに出場し、トレーニングをしていることは「路上でライブしている」状態と同じです。つまり、すでに「売れるための場」には立っているのです。

そこで次の課題は「どうやって道行く人を立ち止まらせ、自分の歌を聴いてもらうか?」。

その答えこそが冒頭の「有益な情報(みんなが知りたいこと)の発信」です。もちろん一番手っ取り早い方法はワールドツアーチームに移籍して活躍することです。

みんなの知っている曲を上手く歌えば、人は振り向いてくれ、次第に人が集まってきます。そしてその数が多ければ多いほど、あなたのファンになる可能性のある潜在的ファンも増えていくのです。

ただ、その「多くの人が求めている情報」とは何なのか?その「多くの人(マジョリティ)」はどこにいるのか?

答えは「ロードレースファン」ではなく「ホビーライダー」にあります。

情報の質と量を整えよ

これはエビデンスのない肌感覚で恐縮なのですが、速くなることに興味があるホビーライダーは、レースファンの約10倍近くSNSに存在しています。

つまり、自転車について発信する時のターゲットにすべきはレースファンではなく、昨年のツール・ド・フランスの総合優勝者さえも答えられない(興味がない)ようなホビーライダーなのです。

しかし、彼ら彼女ら(数は圧倒的に男性優位)も自転車に興味がある点で言えば、潜在的なファンになり得ます。

そして、そのホビーライダーたちが求める情報とは「機材」「速くなるための方法」です。

もちろんスポンサーから機材の提供を受けるプロ選手にとって、機材について語ることに制限はありますが、それらをかいくぐり積極的に発信しているのが伊藤雅和選手(愛三工業レーシング)です。

伊藤選手のブログでは「ハンドル幅がダンシングに与える影響」や、「ステムの長さとシッティングで高出力時の関係性」、「フレームサイズのメリット・デメリット」など、誠実な言葉で綴られています。ちなみに伊藤選手がこれほどの発信しているのにも関わらずフォロワーが増えない理由については「日本人選手のブログが10倍読まれるようになるたった一つの方法」というクソみたいなタイトル(案)のエントリで後日説明します。要するにフォロワーを増やす行為とブログというメディアの相性の悪さです。

こういった情報を拡散されづらいブログではなく、写真と共にコンパクト(140字以内)にまとめて投稿すれば「このアカウントは有益な情報をくれる」と判断され、フォロワーが増えていきます。インスタでも基本的な考え方は同じです

実際こういった有益な情報でフォロワーを増やし続けているのが、陸上競技・長距離の新谷仁美選手です。

東京五輪の代表に内定し一気にメディアの露出が増えた彼女ですが、昨年1月に始めたTwitterがめちゃくちゃ上手く、SNSの使い方には関しては日本トップクラスです。

そして、こういった「人が読んで得した気分になる」ツイートを、習慣化(週3~5回程度)することで、フォロワーは雪だるま式に増えていきます。ちなみにKPIは「いいね」がフォロワーの10%を越える(フォロワーが1000人なら100いいね)ツイートです。スベったツイートは1週間以内に削除するのが望ましく、直近の3ツイートを常に意識しましょう(その3ツイートで自分のプロフィールに訪れた人がフォローする・しないを判断されるから)。

SNSは弱者のメディア

自分がここで書いていることは「SNSの戦略的な使い方」です。

そして戦略を立てる上で「そもそもSNSとは何なのか?」という定義が必要です。

その定義とは、

SNSとは弱者が工夫して知名度を獲得するためのメディア

です。

新城幸也・別府史之を除く全ての現役日本人選手は、知名度(≒フォロワー数)で言えば弱者と呼ぶことができます。

そして弱者が強者のSNSの使い方を真似しても、フォロワーは増えません。

新城幸也選手が投稿する食事の写真に価値がある(たくさんのいいねが集まる)のは、知名度があり、尚且つ多くのファン(&フォロワー)がいるからです。

それをフォロワーもファンも少ない選手が真似したところで、その写真に価値はないのです。そんな投稿、無価値です。ゼロです。誰も見たくないし、求めてません。

もちろんSNSの使い方は自由なので、ファンとの交流を楽しんだり、ただ選手としての自尊心を満たしたいのあれば、何も問題はありません。自由です。

しかし、引退後のキャリア形成*や今後の成績向上**に繋げたいのであれば、ある程度の戦略を持ってSNSを活用しないと、何の価値も生み出さないどころか、容易にネガティブ・ブランディング(個人としての価値を下げる)になってしまいます。そのくらいSNSはシビアな場所なのです。

*現役引退後にファンが増えることはありません。引退後は現役時代に獲得したファンを何人繋ぎ止められるかという戦いになります。

**ファンの数はそのアスリートの成績に影響します。J2などややマイナー規模のスポーツのファンには共有認識かもしれません。ある日突然注目を浴びた選手がそれ以来プレーが一変するのはもはやあるあるですし、自転車界でもそういった例は…ない?

アイコンでプロ選手だとアピールする。

具体例に戻りましょう。

路上で歌う歌手なんて誰も知りません。

つまり誰もあなたのことを知らないという前提でSNSをするのが、正しい姿勢ということができます。ここからより一層上から目線になっていきます。

あと今更ではありますが、前提としてこのエントリではコンチネンタルチームやJプロツアーなどに出場するチームに所属する選手を「プロ選手」と呼んでいます。厳密に言うとUCIコンチネンタルチーム以下のカテゴリに所属する選手はプロではないのですが、面倒臭いのでここではプロ選手と呼ぶことにします。(プロの定義については宮本あさかさんによるコチラが詳しい)

はい、それでは早速始めていきます。

まずは「SNSのアイコン」をプロ選手とひと目で分かるものにしましょう。

コチラ↓は、ダメな例です。0点です。

一見するといい感じの写真なのですが、こういった「ライド中の写真」をアイコンに使っている人はE1~E3(アマチュアのカテゴリー)選手など死ぬほどいるので、ホビーレーサーと判別がしづらいです。

また、ターゲットとしている潜在的フォロワーが皆「宇都宮ブリッツェン」というチームとジャージデザインを知っていると思うのは傲慢です。

正解例はコチラ↓。

アイコンに関しては100点です。

何が良いかを解説すると、フォロワーに対して「自分はプロ選手である」ということが明確に伝わる写真だからです。

ちなみに更に良くするためには、背景画像(青い部分)にMeridaのロゴが書かれたダウンチューブの写真を持ってくれば「チームは知らないけどMeridaは知っている人」にも訴求できます。

プロという立場を活用せよ

プロの自転車選手による投稿にはある程度の説得力があります。しかもそれは自転車界のことを良く知らない人(レースファンではなくホビーライダー)に対しては尚更です。

また、厳密なプロ選手の定義なんて無視して「プロ自転車ロードレーサー」とプロフィールに書くべきです。コンチネンタル(あるいはそれ以下のカテゴリのチーム)が自転車RRのピラミッドのどこに位置しているかなんて、よっぽどコアなファンでないと知らないですし。

また、プロフィール欄には出来る限り「地名」を入れることも、潜在的フォロワーとの共通点を用意してあげることになり重要です。

例)宇都宮ブリッツェン所属のプロ自転車ロードレース選手「山田太郎」です。栃木県小山市生まれ、作新学院高校出身、宇都宮大学卒。

これで少なくとも栃木県出身者や、何か栃木と縁のある自転車好きは立ち止まらせることができます。プロフィール欄には土地の名前を入れて郷土愛をくすぐってください。そんなちっぽけな共通点だけで、人はフォローしますし、ファンになってくれたりするのです。*好きな食べ物やアニメなどは基本的に無価値です。弱ペダの好きなキャラだったら層が被るからギリギリOKかも。

マニアック過ぎる情報なんてない

弱者(=新城・別府ではない)選手のツイートがタイムラインに流れてくるだけで、その人のSNSは十分にニッチです。奇特な人です。それぐらい日本における自転車ロードレースは「マニアックなジャンルなんだ」という意識が必要です。

なのでよく選手のブログで見かける「マニアック過ぎるかもしれませんが…」という枕言葉は必要ありません。なぜならば、あなたツイートを読んでる時点でその人はかなりニッチな人だからです。

つまり「伝えたいことが細か過ぎてフォロワーが理解してくれないかもしれない」と思い悩む必要は全くありません。むしろ細かければ細かいほどウケます。そしてフォロワーやファンが増えれば、リプライや引用RTで勝手に解説してくれます。なので安心して細か過ぎることをコンテンツにしてください。

むしろ初心者に向けた「どこかで聞いたことあるような情報」しか投稿できないのであれば、SNSには向いていないのかもしれません。

これをするとフォロワーが増えない

最後に「フォロワー増やしたかったらこれだけは死んでもするな」を箇条書きで挙げました。

・前澤社長のお金ばら撒きツイートに対してRTやいいねするな(→あなただけではなく所属チームのネガティヴブランディングになってしまいます。RTするとプレゼントが当たる系のツイートも同様です)

・一般人へリプライやRT、いいねはするな(→チームメイトや選手のツイートに反応するのは良いのですが、フォロワーが「こいつ誰?」と思うような一般の人と絡むとフォロワーは減ります。そういうのは裏垢でしてください)

・基本的にRTは使わない(→チームの告知ツイートなど必要なものはRTをして、宣伝の役割が終わった1週間後などに取り下げて自分のTLに現れないようにしましょう)*直近3ツイートでフォロワー増は決まるので

・安易にいいねしない(→フォロワーのTLに表示されてしまうので基本するべきではないです)

・実名ではない変なアカウント名(→詳しくはコチラ「日本人選手にお願いしたいこと」で書きました)

・私服の自撮り写真は投稿しない(知名度弱者な自転車選手のオフショットに誰も興味はありません。ジャージを着ていない時の自撮りはNGです)

・自転車の写っていない写真は投稿しない(理由は同上。写真を投稿する際は必ず自転車か機材を写してください。また顔はホビーライダーとの差別化になりますので積極的に投稿しましょう)

・構図や画質にこだわりのない写真は投稿しない(辻啓さんや海外のフォトグラファーのインスタで構図や加工の色味など研究しましょう。切り抜き含め、無加工で投稿するとか言語道断です)

・一言だけのツイートをしない(できる限り140文字ギリギリのツイートをするように意識してください。文字数を増やすだけでフォロワーは増えます。これマジです)

フォロワーをファンにする方法

以上がフォロワーを増やす方法でした。

少し抽象的に感じたかもしれませんが、もっと具体的に知りたいのであれば新谷仁美選手のツイートを遡り、「いいね」が1000を越えているものを抜粋して並べ、それを真似たツイートを作って投稿してみてください。

最初は上手くいかないでしょうが、それをコツコツと続ければある日突然バズります。そしてバズったものとスベったものを比較し、検証し、PDCAサイクルを回しまくってください。また、基本的に面白い系の一過性なツイートではフォロワーは増えません。有益なツイートを定期的に投稿することがフォロワーを増やす唯一の方法です。

基本的にプロ選手がレースやトレーニングで感じた課題や反省点、成功体験を言語化するだけでフォロワーは増えていきます。そこに機材のインプレが乗っかれば最強なコンテンツになります。

また、高品質な写真はフォロワーを増やす手助けになりますが、不可欠ではありません(遂行された言葉だけで十分です)。また思考の言語化は才能ではなく、訓練で培うことのできる能力です。しかもSNSという世界では、それがファンにとって「プロ選手の思考を覗ける」エンターテインメントとなるのです。本田圭佑のNowVoiceもそれをマネタイズしたサービスですよね。

しかし冒頭でも言ったように、いくら有益な情報を投稿してフォロワーが増えたところで、その人たちはファンではありません。

あなたがレースで勝とうが負けようが、ツイートを有益と感じなくなれば即アンフォローです。それぐらいシビアなのがSNSであり、人の心です。

それでは、どうすれば増やしたフォロワーをファンに転化できるのでしょうか?どうすればフォロワーが自分のレース活動に興味を持ち、応援しに来てくれるのできるのでしょうか?

キーワードは「叙情」です。

つづく。