晴天のもと土煙撒った第117回パリ〜ルーベは、36歳のフィリップ・ジルベール(ベルギー/ドゥクーニンク・クイックステップ)が、25歳の伏兵ニルス・ポリッツ(ドイツ/カチューシャ・アルペシ)とのヴェロドローム・スプリントを制し、自身4つ目のモニュメント制覇を果たした。
レースは前半の石畳区間では逃げが決まらない落ち着かない展開となったが、セクター23の直後に35名の先頭集団が形成。その後、セクター9では勝利したジルベールやサガン、ランパールトを含めた6人の先頭集団にメイン集団が追いつけないまま、レースは終焉を迎えた。
その集団には、オリバー・ナーセンやシュテファン・キュング、グレッグ・ファンアーフェルマートなどの有力勢がいたが、プロコンチネンタルチームに所属する一人の無名選手も残っていた。
フランスのディーレコ・マルセイユ・プロヴァンスに所属するリトアニア人のエヴァルダス・シシュケヴィシウス*(Evaldas Šiškevičius)だ。
なんと彼は、名だたる優勝候補たちを抑え、9位入賞を果たしたのだ。
諦めない、諦められない。
シシュケヴィシウスを知っている人は少ないだろうが、この写真を見たことある人は多いのではないか。
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2018年パリ〜ルーベで、スタッフにゲートを開けてもらうシシュケヴィシウスの姿だ。
このレースで他選手から大幅に遅れたシシュケヴィシウスは、最後尾の選手たちを回収するスウィーパーカーを拒否、残り30kmでペーター・サガンの勝利を聞いてもなお、走り続けた。
「スウィーパーカーの運転手が、僕に早く止めて欲しいことは知っていた。でもここまで230km走ってきたんだ。あと30kmだったんだ」
回収車と並走する形で走り続けたシシュケヴィシウスだったが、残り17km地点でパンク。だが、壊れてしまってレッカー移動されていたチームカーから、自らスペアバイクを降ろし、再び走り出した。
ペーター・サガンとシルヴァン・ディリエがフィニッシュした約1時間後、ヴェロドロームに到着。しかし、すでに表彰式は終わり、チームや観客は帰り、当然ゲートも閉まっていた。
そして、スタッフに頼みゲートを開けてもらったシーンが、自転車ファンの間で「決して諦めない」という言葉と共に拡散された。
その後シシュケヴィシウスは、規定通りヴェロドロームを一周半を周りフィニッシュ。もちろん記録上は制限時間超過のDNFだった。
面目躍如
昨年は1時間遅れの最下位(DNF)から、わずか47秒遅れの9位と、大躍進を果たしたシシュケヴィシウスは、インタビューにたいし喜びを語った。
「とにかく嬉しい」
「僕にも何かができることを示したかった」
「みんな沿道で叫んでいたし、チームカーはお祭り騒ぎだった」
「とても、感動したよ」
Source: CyclingWeekly, CyclingNews
*この選手名の読み方に全く自信がない