フィリップ・ジルベールがベテランの底力を見せた2019年のパリ〜ルーベ。直前のヘント〜ウェヴェルヘムで勝利を上げ、優勝候補の一人にも挙げられていたUAEエミレーツ所属のアレクサンダー・クリストフ(31歳/ノルウェー)だったが、3度のパンクに見舞われ、14分15秒遅れの56位で辛酸をなめた。
チーム唯一の完走者
クリストフはもとより、チームそのものが崩壊状態だった。
レース前にフェルナンド・ガビリアが体調不良で欠場し、期待の新人トム・ボーリは落車、スベンエリック・ビストロームも途中コンタクトレンズを失いレースを去った。
パンクしたクリストフを集団復帰させるべく、ヤスパー・フィリプセンらが粘ったが力及ばず、結局UAEでヴェロドロームまでたどり着けたのは、クリストフ一人だけだった。
自身の結果について聞かれたクリストフは、インタビューに対しその原因を語った。
「先週使っていたチューブレスタイヤという、大きなリスクと共に挑んだ」
「大きなリスクだと理解していたが、このタイヤ(チューブレス)がすごく良かったんだ。これで走ったここ数週間は成功していたし、今日の具合も良かった。パンクするまでは、だけど」
チューブレスという選択
以下が、クリストフがパリ〜ルーベで使用したタイヤとホイールだ。
タイヤ:ヴォットリア Corsa Graphene 2.0 25mm tubeless tyres
ホイール:カンパニョーロ Bora WTO tubeless-ready wheels
プロがレースで使用するタイヤは、チューブラーとチューブレスの二種類に分けられる。
前者は、中にインナーチューブが入ってタイヤとチューブが一体となっているもので、現在プロトンにいるほとんどの選手が使用している。
一方、チューブレスとは文字通りチューブを必要としないタイヤで、クリンチャーと似ているが、チューブがないのでリム打ちパンクの心配がない。
またチューブレスのメリットとしては、総合的な耐パンク性能の高さや、パンクしても急激な減圧が起こらず、タイヤ交換するまでしばらく走行が可能、などがある。
クリストフが好んだ理由
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パンクの多い石畳レースにおいて、チューブレスタイヤは合理的な選択のように見えるが、メリットはそれだけではない。
チューブレスはチューブがないことでタイヤとの摩擦がなくなり、転がり抵抗が低く、乗り心地が良いのも特徴の一つなのだ。
パリ〜ルーベ直前のクリストフも、インタビューでこの乗り心地の良さを絶賛している。
「とにかく感覚が良いんだ。(チューブラーと)大きな違いについてはよく知らないんだけど、転がりがいいし、石畳でも悪くない、むしろ心地が良いぐらいだ。この冬(オフシーズン)にチューブラーを試したけど、感触が悪かった。覚えている限りは、だけど」
しかし、前述した通り今回のパリ〜ルーベでクリストフは3度のパンクに見舞われている。
原因は本当にチューブレス?
「ベルギーでは上手くいっていた、(ルーベの)試走でもだ。だがこのレースのように密集してしまうと、穴が見えない(避けられない)。アレンベルグの森の前までで二度パンクして、集団への復帰は不可能になった。合計で3度のパンクの後に、ノーマルタイヤをつけた自転車に乗り変えたんだ」
チューブレスタイヤのメリットの一つである”パンクに強い”は、偽りだったのだろうか?
この報道を知った世界中のサイクリストからは、その原因がチューブレスではなく、25mmというタイヤ幅にあったのではないか、という意見で占められている。
石畳を含むクラシックレースでは、プロトンの半分以上は28mmのチューブラータイヤを使っており、今回のパリ〜ルーベを制したフィリップ・ジルベールも28mm(チューブラー)を使っていた。選手のなかには30mmを使っていた選手もおり、それらに比べるとクリストフが選んだ25mmは細い。
クリストフはレース前のインタビューで、タイヤ幅について以下のように語っている。
「これは25mm幅のタイヤだ。しかし実測ではもう少し太い、およそ26mmだ。だが、空気圧については秘密にさせてくれ」
自転車ロードレースについて発信しているツイッターアカウントのグライド(@R3Glide)氏は、その理由を以下のように考察している。
ツイートへの反応で『25mm?なんで28mmじゃないの?』という反応が多いので、記事内情報から考えられる推測(邪推?)を…
・フレームはCOLNAGO CONCEPT(28mm幅までOK)
・ホイールはカンパのBORA WTO 60
・クリストフは「タイヤ25mmだけど実測26mmある」と発言
→28mm版の実測値だと干渉してた??— グライド (@R3Glide) 2019年4月15日
Source: CyclingNews Ⅰ, CyclingNews Ⅱ, FRAME, GOODYEAR