新チーム発足?シーズン途中の移籍が浮上したフルームの行方

英CyclingNewsは5月14日に、クリス・フルームが現在複数のチームと移籍交渉を行っていると伝えた。また驚くことに今シーズン途中の移籍もあり得るという。

現在34歳のフルームは、ツールの4勝目を上げた2017年に当時のスカイ(現イネオス)と3年契約を結んでおり、今年はその最終年にあたる。

去年6月の大怪我から復帰という不透明な状態かつ、5月20日で35歳になるとはいえ、過去にツールを4度制している現役最強選手、移籍先には困らないだろう。

仏レキップ紙によるとフルーム側はすでに複数のチームと交渉しており、ツイッターでデマ情報が拡散されたイスラエル・スタートアップネーションをはじめ、NTT、モビスターなどのチームが候補に上がっている。

そして何より驚いたのが、2021年に新たにイギリス籍のチームが発足するという情報だ。

詳細は不明だが、レキップ紙によるとメインスポンサーにイギリスの大企業がつくのだという。

その新しい英国チームの顔としてフルーム以上の選手はいないだろうが、現実的に急増チームでツール・ド・フランスを勝てるわけがなく、そうなるとフルームの5勝目は絶望的になるかもしれない(今季フルームが勝てなかった場合orそもそも今季ツールが開催されなかった場合)。

先のCyclingNewsによると、現在フルーム側は特に有力な2チームとの話し合いが進行中なのだという。

以下、言葉使いが大分崩れます。

このフルーム移籍のニュースで、多く言及されるベルナルによる「フルームやゲラント・トーマスのアシストではなく、今年のツールでは自らの勝利を目指す」という発言は、無視でいいと思われる。(ちなみにこれはコンタドールとのインスタ対談で発せられた)

なぜならベルナルが「勝つ気は満々です」と発言しなければ、イネオスのトリプルエースという意味が半減するからだ。

仮にベルナルが「フルームの5勝を全力でアシストするよ。もちろんチャンスがあれば自分の勝利を目指すけどね」などと言えば、イネオスにアンフェア(政治でエース決めるんかい!)なイメージがついてしまい、チームとしてポジティブな効果は何もない。そもそもベルナルの聡明さはジャーナリストがよく知っているので、チームにネガティブになる発言を、しかもコンタドールとの会話の場で言うわけがない。(それがいま逆の作用してしまっているのだけども…)

話はちょっと変わりまして、、、

先月末に元クリケット選手のケビン・ピーターセンのインスタライブに招かれたフルーム。そこで「イネオスのエースを決める方法」を問われたフルームは「チームが数字を見て決める」と断言した。

「チームはペダル1回転の情報も逃さず把握していて、その数字によって誰がエースであるか、客観的に(チームの判断によって)決められる」と、あまりロードレースに明るくないピーターセンに対して説明したのだ。

また、現在の最大のライバルは?という質問に対し「ログリッチ」と答え、「引退した選手だけどコンタドールというスペイン人が強かった」と答えた(胸熱!!)。

話はさらに変わりまして、、、

最後にイネオスのトリプルエースの発言として思い出されるのが、今年はじめにチームが公開した3人のインタビュー動画だ。

この中で「ツールで総合優勝を目指す」と明言したのはフルームだけ。ゲラント・トーマスとベルナルは「勝利に向けて全力を尽くす」的なふわっとした発言だった。

それが一部のジャーナリストの間でちょっとだけ話題になっていた。つまりその発言から「チームは是が非でもフルームに5勝目を上げさせたいんじゃね?」という憶測だ。

そこから推察は進み、フルームの回復がかなり順調で、動画が収録された12月時点でベルナルやゲラント・トーマスに負けない数値を出しているため、今年のツールはフルームがエースという意向が既にGとベルナルに伝えられていた、というもの。

でも、この移籍話をみるに深読みだったということになる。説としては面白かっただけに残念。

まとめと私見です。

正直、サッカーやテニスなど閉鎖空間で行われるスポーツと違い、公道を走り、選手・スタッフ・メディアが集う自転車ロードレースを、フランスで8月から行うのは非常に難しいだろう。

ちなみに先日UCIが発表した新スケジュールによると、ツールは8月29日〜9月20日となっている。仮に8月開催が難しい場合は、同じASOが主催している(厳密には違う)ブエルタをツールとドッキング(あるいは置き換え)して10月20日〜11月8日に開催って方がまだ現実味がある。(ぶっちゃけ年内も厳しいと思ってるし、開催したとしてもたった1人でも関係者に感染者が出たら(メディア関係者含め)その場で中止というレース展開と無関係なドキドキが待っているって…ツラい)

つまり、みんな大好きフルームがツールで5勝目を上げる為には、年俸大幅に下げてイネオスと契約延長するしかないというのがこのブログのまとめです、はい。

他のチームに移籍して総合優勝する可能性はゼロではないけどかなり低いっていう事実を、われわれは2019年ツールでクヴィアト&モスコンが全く機能せずともワンツー独占してしまうイネオスの圧倒的な力の差で見せつけられているから。

ツール=物量戦の時代はまだまだ続きそうだし、いくらユンボがエース級を3人揃えたところで…

あと今回のフルーム移籍話とは関係ないけど、個人的に、チームイネオスはスポンサーがスカイからイネオスに変わったことによって、従来の「スポンサーの機嫌を損ねたら速攻で終わる系チーム」になってしまった(ブライルスフォードが以前より批判していた古き悪しき従来型チームに自らがなってしまった)ことが、すごく気になってる。The Cycling Podcastがそのへんつっついてたけど、一歩及ばずな感じだった。言葉につまるブライルスフォードは面白かったけど。

終わり