9月29日、バーレーン・メリダがローハン・デニス(オーストラリア/29歳)との契約解除を発表した。デニスは5シーズン所属したBMCの解散とともに今年バーレーン・メリダに移籍し、2年契約を1年残しての退団となった。
バーレーン・メリダの公式発表によると契約解除は9月13日で、発表がこの時期になった理由を「世界選手権への準備の妨げにならないようにするため」と説明した。
デニスのBMCへのこだわり
来年の所属チームを探すことになったローハン・デニスだが、世界選手権2連覇し、今季ツアーオブカリフォルニアでは総合2位につけるなど、総合系選手へ転身の可能性もある同選手へは引く手あまただろう。
そこで、元USポスタル監督でランス・アームストロングのツール7連覇を参謀として支えたヨハン・ブリュイネールが、その移籍先について興味深い考察を披露した。
「これは僕の個人的な見解だけど、彼はとてもBMCのTTバイクにこだわっているように見えた。その上、今日のロードレースではBMCのバイクに乗っていた。それをヒントに考えるに、彼はBMCを使用しているチームに移籍するんじゃないんだろうか?」
デニスは2連覇を決めた29日の個人TTを黒塗りしたBMCで、そしてマイケル・マシューズのアシストとして出場した29日のロードレースを、今度はロゴが顕になった状態のBMCで走行した姿が撮影されている。
「もしかしたらオフシーズンに(BMCがスポンサードするチームが)変わるかもしれないが、現時点でBMCに乗っているワールドチームはディメンション・データ(来季NTT)だ。だから、彼の次の行き先はそこかもしれない。」
*ちなみにこのポッドキャストは世界選手権ロード直後に収録されたため、デニスが13日の時点で既に契約解除されていた事実をブリュイネールは知らない。しかしTTではともかくとしても、ロードでは今シーズン乗り慣れたメリダで走ることも可能だったはずだ。
移籍先はディメンション・データ?
昨年チームを失ったBMCは、今季よりディメンション・データのスポンサーとなっている。そしてチームの顔であるマーク・カヴェンディシュ(イギリス/34歳)の退団が濃厚と言われているいま、世界王者ローハン・デニスの加入は来季より名前をNTTに改めるチームにとって渡りに船かもしれない。
しかし、ディメンション・データと言えばワールドツアーの最下位が定位置の弱小チーム。個人タイムトライアルならばチームの強さは関係ないとはいえ、サポート体制などデニスが万全の状態で、近々の目標である東京五輪金メダルを目指せるかには疑問が残る。
BMCもメリダも、デニスには関係ない
デニスに関する今回の一連の騒動はBMCとしては最高の、そしてメリダとしては最悪のキャンペーンになってしまった。だが、意外にもブリュイネールは自転車の細かい差異はデニスの走りには関係ないと言う。
「両方のバイク(BMCとメリダ)が素晴らしいというのが僕の意見だ。自転車メーカーとはフレームのことだ。(フレームとは)コンポーネントをつなぎ合わせる2つの三角形。一方がより空力性能がよく、頑丈ということはあるかもしれないが、それぐらいの違いだろう。」
「つまり僕の意見としては、ローハン・デニスにどのメーカーの自転車を与えたとしても、それがまとも(なTTバイク)ならば(同じ様に)世界選手権で勝利しただろう。メーカーによる先入観を持たせないようにデニスにロゴを隠した自転車を与え、同じポジションに調節すれば、同じタイム差で優勝しただろう。もちろん良いシマノのコンポーネントやホイール、チューブやタイヤ、適切なハンドルバーは必要だけどね。」
つまりブリュイネールは今回の問題はバーレーン・メリダとデニスの問題であり、メリダのTTバイクに原因はあまりないと示唆しているように受け取れる。
それを裏付けるように、バーレーン・メリダによる契約解除の発表の中で、デニスがUCI調停委員会に付託したとも明かしている。
「(レースとは)身体だけじゃない。頭と身体があってうまくいくものなんだ。」
最近のバーレーン・メリダで言えば、チーム発足の理由にもなったヴィンチェンツォ・ニバリがチーム側の再三の契約延長オファーに対し、頑なに固辞をみせトレック・セガフレードへの移籍を決めている。
多額の資金を有する中東のチームに、いま不穏な空気が流れている。
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