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キンタナがプロコンへ移籍?ワールドツアー昇格を狙う5つのチーム

ニバリがバーレーン・メリダからトレックへ、ランダがモビスターからバーレーン・メリダへ移籍の噂など、ジロが閉幕後活発になってきた移籍市場。

その中でも注目されているのは、モビスターに所属するナイロ・キンタナ(コロンビア/29歳)のフランス籍プロコンチネンタルチームアルケア・サムシックへの移籍の噂だ。

2016年総合優勝以来グランツールで目立った活躍がないキンタナとは言え、まだ29歳。プロコンへ移籍しキャリアを締めくくるにはまだ早すぎる。モビスターから離れるにしてもなぜ資金が潤沢なワールドツアーチームではなく、カテゴリが一つ下のアルケア・サムシックなのだろうか。

その裏にはワールドツアーライセンスを狙うアルケア・サムシックの思惑がある。

ワールドツアーが20チームに?

各社報道によるとUCI(国際自転車競技連合)は、2020年シーズンよりワールドツアーチームを現在の18から20チームに増やす計画があると言われている。

そして4月2日にUCIは、2020〜22年の期間にワールドツアーライセンス申請に興味のある23チームのリストを発表した。そしてそこにはワールドツアーを戦う18チームの他に、昇格を狙う以下の5つのプロコンチネンタルチームが含まれていたのだ。

アルケア・サムシック(フランス)
ヴィタル・コンセプト(フランス)
コフィディス(フランス)
トタル・ディレクトエネルジー(フランス)
イスラエサイクリングアカデミー(イスラエル)

あくまでもワールドツアーライセンス数の拡大は予想段階なので、UCIが昇格の基準を明確に発表しているわけはないが、ワールドツアーライセンス保持には倫理的、財政的、経営的、組織的の各基準を満たしていることが重要とされる。

そしてもちろんUCIポイントのランキングで上位につける(=強い)チームが有利になるのは言うまでもない。

コフィディスとトタルが一歩リード

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この5チームで昇格の最有力と目されるのはコフィディスだ。

現在ヨーロッパツアーUCIポイントランキングでも首位を走っており、ツール・ド・フランスにも常連チームとして知名度も高く、近年はブエルタ・ア・エスパーニャのスポンサーにもなっていることからブエルタでもお馴染みだ。所属選手の数もプロコンにしては多い28名と資金的にも潤沢と言え、UCIとしても安心して昇格させられるだろう。

1位:コフィディス
2位:トタル・ディレクトエネルジー
4位:イスラエルサイクリングアカデミー
8位:ヴィタル・コンセプト
9位:アルケア・サムシック

現時点(2019/06/06)のヨーロッパツアーではコフィディスが1位、それに次いでトタル・ディレクトエナジーが続いている。

同じく本命と言われるのが、4月にスポンサーがフランスの大手石油企業へ変わったトタル・ディレクトエネルジーだ。

2018年度の売上高が2440億ユーロ(30兆円)という天文学的な数字の超大型スポンサーにより、今年はパリ〜ルーベの優勝経験のあるニキ・テルプストラ(オランダ/35歳)と獲得した。今季の補強こそ大人しいが、ある日突然イネオスを上回る資金が注ぎ込まれても何ら不思議ではない。

次点でイスラエルが猛追

ここ数年、上記2チームを凌ぐ勢いなのがイスラエルサイクリングアカデミーだ。2017年にプロコンに昇格したばかりこのチームはユダヤ系カナダ人シルヴァン・アダムスがオーナーを務め、昨季のジロ開幕をイスラエルに誘致するため20億円以上を費したと言われるほどだ。

今年はAG2Rからルディ・バルビエ、トレックからマティアス・ブレンドレを獲得するなど、グランツールで総合順位を争えるチームを目指し補強を進めている。UCIが目指すロードレースの国際化と、昇格に立候補したチームがフランス籍ばかりなことからも昇格の可能性は高い。何しろ根回しの上手さはジロ誘致&2年連続ジロ出場の実績から証明されている。

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そして話は冒頭の戻り、キンタナ獲得の噂があるアルケア・サムシックだが…2018年はサンウェブからワレン・バルギル、今年はアンドレ・グライペルを獲得したものの、昨年はヨーロッパツアーで14位とシーズンを通して2勝しか上げていない。今季もツール・ド・フランスの出場権こそ獲得したが、ここまでたった1勝しか上げられていない。

先日閉幕したジロ・デ・イタリアでアシストがおらず孤立したユンボ・ヴィスマのログリッチェによって、いくら実力が突出していても優秀なアシストとチームのサポートがなければ総合優勝は難しいということが明らかとなった。つまり仮にアルケア・サムシックがキンタナを獲得できたとしても、それでグランツールの総合優勝が近づくなどという簡単な話ではないのだ。

報道によるとキンタナへは年俸3億円の高額オファーをしているようだが、これはアルケア・サムシックがワールドツアー昇格に本気であることへのアピールにしか過ぎず、実現の可能性は低いと言わざるを得ない。

Source: UCI Europe Tour Ranking, りんぐすらいど