将来自分の子どもを自転車ロードレース選手にさせたかったら、シクロクロスバイクを買い与えるのが近道かもしれない。
そう安易に思わせるほど規格外なインパクトが、アムステルゴールドレースのマチュー・ファンデルプールにはあった。
オランダの「1000のカーブ」と称される複雑なレースは、フルサングを擁するアスタナがコントロールしていたが、地元オランダのファンデルプールが残り45km地点でアタック。しかし、わずか5kmほどでメイン集団に吸収されてしまい、ファンデルプールのレースは終わったと誰しもが思っていた。
その後の展開は、ご存知の通りだ。
五輪金メダルが最優先
地元オランダで、最高の形でロードレースシーズンを終えたファンデルポールは、8月下旬から開催されるマウンテンバイク世界選手権に向けトレーニングを開始する。
もちろんその先にある目標は2020年東京五輪。マウンテンバイクのオランダ代表としての金メダル獲得が、目下の最優先事項となっている。
現在ファンデルプールが所属するのは、ベルギーのプロコンチネンタルチームコレンドン・サーカス。しかし、この弱冠24歳のクラシックレーサーには、ワールドツアーチームはもちろん、2020年に昇格を狙う複数のプロコンチームも獲得を狙っている。
また、すでに高額だったオファー金額は、北のクラシックでアラフィリップやサガンを破ったことで高騰し、彼の代理人曰く、ワールドツアーチームに移籍すれば年俸300万ドル(3.3億円)〜500万ドル(5.6億円)は確実であると推察されている。
だが、ファンデルプールはチームとの契約を2022年末まで結んでおり、途中で去るつもりはないという。
いくつかのチームに声をかけられた。でも2023年まで契約が残っているし、それを破棄するつもりはない。
マチュー・ファンデルポール
なぜ彼は、高額年俸と高待遇が保証されているワールド・ツアーチームではなく、コレンドン・サーカスにこだわるのだろうか?
倍額よりも好環境
その理由は二つある。
一つ目は、もう既に十分な金額を得ていることだ。
ファンデルプールの年収は、チームからの年俸やシクロクロス関連のイベントの出演料、キャニオンなどの個人スポンサー料だけで100万ドル(1.1億円)を上回ると言われている。
もちろんワールドツアーチームに所属し、ロードレースに専念すれば、前述したように年俸やスポンサーとの契約金は跳ね上がるだろうが、それは同時にシクロクロスとマウンテンバイクで得られる収入を手放すことになる。
二つ目は、チームがファンデルプールのことを最優先に考え、競技を含めレースを自由に選択できる環境だ。
今季のファンデルプールは、冬にシクロクロス、春先にロードレース(クラシック)、そして夏にマウンテンバイクと、同じ自転車とはいえ異なる競技を走っている。制約の多いワールドツアーチームでは、いまのように自由に行き来できる可能性は低くなる。
また、所属するコレンドン・サーカスのもとには、ファンデルプールを呼びたい多くのレース主催者からの招待が届いており、実質的にファンデルプールの出場したいレースが自由に選べる状況なのだ。
実際、期待されていながらも出場がなかったパリ〜ルーベの主催者も、コレンドン・サーカスを招待していたのだが、チームが初出場では負担が大きすぎると判断したため、回避するに至ったそうだ。
ロード本格参戦は2021年以降
マウンテンバイクで2020年東京五輪の金メダルが目標のファンデルプールにとって、十分な収入と、しがらみの少ない環境が用意されているコレンドン・サーカスを離れる必要は、いまところない。
ロードレースファンにとっては少し残念だが、彼のフルコミットは早くても2021年以降となりそうだ。
しかし、その時であってもまだ26歳(現在のアラフィリップの年齢)と、決して遅すぎることはない。
Source: VeloNews