「僕を熾烈にマークしていた選手がいたんだ。どうやら彼(ファンデルプール)は、自分の勝利のよりも、僕の負ける姿が見たかったようだね」
レース後のインタビューでそう答えたのは今年世界中の解説者の言語化能力を奪う活躍を見せているワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィズマ/26歳)。
前世界王者のマッズ・ピーダスンが優勝したヘント〜ウェヴェルヘムのフィニッシュ後、シクロクロス時代から10年を越えるライバル関係のマチュー・ファンデルプール(アルペシン・フェニックス/25歳)に対し、珍しく感情を顕(あらわ)にした。
ワウト、ちょっと変だよ。
このワウトによる口撃を聞いたファンデルプールは「ワウトの反応は変だよ。彼は先頭集団の中でトップクラスの選手だ。彼が仕掛けたら僕は反応するのは普通だろ?僕が彼に勝たせないようにレースしたというのは、ちょっと浅はかな考えな気がするけどね」と、すぐさま反論した。
ワウトの言い分にどの程度正当性があるのかはGCNで実際のレースを観てもらうほかないのだが、残り30kmに限定して言えば、確かにファンアールトが飛び出した他選手を追い、その後ろにファンデルプールが付いていたシーンが目立っていた。
そしてお互いが熾烈なマークを繰り広げた結果、ワウトは8位、マチューは9位に沈んだのだ。
大人なマチュー
しかしワウトのマチューへの恨み節は止まらず、冒頭のコメントの後にこう続けた。
「(マチューは)僕が既に(ロードで)何回も勝っていることを忘れているんじゃないかな。(もうロードに慣れているのだから)相手を少し騙すような動きもできたのに(マチューがしつこくマークするからできなかったじゃねーか!)。(マチューのせいで)結果的に僕ら二人とも何も手にすることができなかった」。
これに対し、終始大人なコメントのマチューは、「でも僕は彼を責めないよ。何度か(ブリッジをかける)彼(ワウト)の後ろについたのは事実だからね。でも僕は勝つために走っているし、彼を世界トップクラスの選手だと思っている。つまり彼に追いつかなければ絶対に勝てないんだ」と、この場外バトルのトーンを下げたのであった。
普段はあまり感情を表に出さない(インタビューであんま面白いこと言わない)ワウトが、このレースでは名指しで批判するほど語気を強めたのには理由がある。
マークされるのに慣れるしかない
その理由を同レース3位に入ったマッテオ・トレンティン(CCC/31歳)はこう表現する。
「ワウトは今季の勝ち星の多さを理解する必要がある。なぜなら誰も彼を自由に行かせたくないからだ。これまでは問題なく勝ってきたかもしれないが、勝利を重ねれば重ねるほどレースは難しくなる。ミラノ(サンレモ)以来、彼は手がつけられなくなっている。ワウトは自分の地位(ステータス)に慣れる必要がある」。
さすがベテラン。含蓄がありあまる。
本来ならばパリ〜ルーベ(10月25日)が、ワウトとマチューの2人による決戦の場となるはずだったのだが、フランスで新型コロナの再び感染拡大が深刻化したために中止。
今年2人が相まみえる最後のレースとなるのは、10月18日(日)に開催されるロンド・ファン・フラーンデレン(ベルギー)だ。