ツール・ド・フランスを走るカヴェンディッシュが3年振りに観られるかもしれない。そんな胸熱な”仮説”がジロ開催中の自転車界で話題を呼んでいる。
カヴといえば4月12日より行われたツアー・オブ・ターキー第2ステージで1159日振りとなる復活勝利を挙げ、そこからなんと3連勝(第2〜4ステージ)。更に最終第8ステージでも勝利し、8日間のステージレースで4勝と完全復活を印象づけた。
そんな生ける伝説に期待されるのは、今年のツール・ド・フランスに出場し、自身が持つ現役最多ステージ通算30勝の更新なのだが…
そこは常勝集団ドゥクーニンク・クイックステップ。昨年のツールでステージ2勝を挙げたサム・ベネットを中心とした2021年の出場メンバーに、カヴェンディッシュの居場所は現状ない。
しか〜し、ここに来て活性化する移籍市場により、カヴェンディッシュにチャンスが巡ってくるかもしれないのだ。
ボーラのスプリンター玉突き移籍
このシナリオにはライバルチームであるボーラ・ハンスグローエの選手事情が大きく関わってくる。
なんといっても今年のストーブリーグ最大の注目は、2021年末で所属するボーラ・ハンスグローエとの契約が満了するペテル・サガン(スロバキア、31歳)の行方。
良好と思われていたボーラとの契約延長の報道が5月に入っても聞こえてこないどころか、ガゼッタ紙がドゥクーニンク・クイックステップに移籍する可能性を報道したのだ。
そしてボーラ・ハンスグローエのもう一人のスプリントエースを務めるパスカル・アッカーマン(ドイツ、27歳)も、UAEチームエミレーツへの移籍が濃厚と言われている。
つまりボーラは数年前のスプリンター渋滞から一転、勝ち星の稼ぎ頭を2人同時に失う形となってしまう事態に。
そんなドイツチームに白羽の矢を立てられたのが、2019年まで同チームに所属しドゥクーニンク・クイックステップに活躍の場を求めたサム・ベネット(アイルランド、30歳)だった。
そして昨日10日、ドゥクーニンク・クイックステップのルフェーブルGMが取材に対し「サム・ベネットの今季限りでの退団」を正式に認めたのだ。
〈移籍動向まとめ〉
ペテル・サガン:ボーラ→ドゥクーニンク?
パスカル・アッカーマン:ボーラ→UAE?
サム・ベネット:ドゥクーニンク→ボーラ?
止まない”ドンパチ”
これら世界トップスプリンターたちの移籍が、なぜカヴェンディッシュのツール出場に関係するのかというと…
「来年他チームに移籍する選手は冷遇される」という自転車ロードレースの悪しき慣習にある。
つまりドゥクーニンク・クイックステップは、今季限りでチームを離れるサム・ベネットを2021年ツールのエースの座から外す可能性があるのだ。*たぶんない
もちろんそれにはカヴェンディッシュが勝利を重ね、復調が本物であることを証明する必要があるが、自転車界のすべてを手に入れた男の復活劇は、ドゥクーニンクのスポンサーへのアピールとしても価値は高い。
個人的にはいまだ関係性が修復されていないカヴェンディッシュとサガンがチームメイトになることについてルフェーブルGMはどう考えているのかをガゼッタさんにはぜひ取材してもらいたい。