ジロ・デ・イタリア第10ステージを勝利したアルノー・デマール(27歳/フランス)が、今大会2ステージを勝ち、この時点でマリアチクラミーノを着用していたパスカル・アッカーマン(25歳/ドイツ)の態度を、たしなめた。
「アッカーマンはとても強い、しかし少し傲慢だ。」
一回目の休息日明けとなった145kmのショートステージは、チームの歯車…どころか現状チームで一番目立っている初山翔(30歳/NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)とバルディアーニCSFのルーカ・コヴィーリ(22歳/イタリア)が逃げを決め、残り30km地点でメイン集団に吸収された。
主催者が期待していた横風による集団分断の予想は外れ、平和な展開の後、各チームがポジションを熾烈に争う集団スプリントが開始された。
集団牽引にも積極的だったカレブ・ユアン(24歳/オーストリア)率いるロット・スーダルが良い位置でトレインを形成したが、グルパマFDJのシンケルダムとグアルニエーリによる好アシストもあり、アルノー・デマールが勝利を上げた。
一方、ポイント賞でトップに立つアッカーマンが残り1kmで落車に巻き込まれ、無事フィニッシュまで自走できたが、右脚に大きな擦過傷を作る結果となってしまった。
「過信している。」
「アッカーマンにとって初めてのグランツールだ。俺が彼の立場だったらもっと謙虚に振る舞うだろう」
「(彼は)自分の実力を少し過信している。」
ジロで初のステージ勝利をしたデマールは、勝利の嬉しさを語ると同時に、今大会で2勝を上げ一躍注目を浴びるアッカーマンについて聞かれ、こう答えた。
「彼はこれまでグランツールの経験はない。つまり山岳での走り方を知らない。落ち着き、注意深くなくてはならない」
若手スプリンターを傲慢だという理由には、この日の残り98km地点に設定されていたスプリントポイントを取りにいったデマールに対し、アッカーマンが「なぜ中間スプリントを取りにいくのか?」と訪ね、同時に「最後のスプリントのために一緒に脚を温存しよう」と提案したからだと言う。
「謙虚であるべきだ、特にグランツールでは。先は長いのだから」
「(今日の落車は)その代償だ。そして俺はあと1ポイントまで迫っている。」
ボーラ・ハンスグローエのスタッフはレース後「スプリント前の選手はボクサーみたいなもので、(言い争いは)本気じゃない。」とアッカーマンの発言を庇ったもの、先輩スプリンターに公にたしなめれる形となった。
また、アッカーマンには第5ステージ後の記者会見の対応に関しても、記者から批判があがった。
スター選手の責務
この日、UCI(国際自転車競技連盟)が血液ドーピングの疑いを理由に、以下の選手と監督に対して暫定活動停止処分が発表された。
クリスティアン・デュラセク(クロアチア/UAEチームエミレーツ)
クリスティアン・コレン(スロベニア/バーレーン・メリダ)
ボルト・ボジッチ(スロベニア/バーレーン・メリダ監督)
アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア/2015年引退)
レース後、米VeloNewsの記者がアッカーマンに「今回のドーピング騒動について何かコメントはあるか?プロトン内でも話題になっているか?」という質問をした。
しかし、アッカーマンはマイクに声が入らないように「もっとまともな質問を」と、コメントを退けたのだ。
この血液ドーピング事件は、今年2月にシュテファン・デニフル(オーストリア、CCCチーム)とゲオルク・プライドラー(オーストリア、グルパマFDJ)が供述した件と関係があり、その中心でドイツ人医師マーク・シュミットが関与していると言われている。
受け継がれないドイツ人のレガシー
たしかにアッカーマンに直接関係はないものの、ジロ出場中のコレン(バーレーン・メリダ)がレースを去っており、またシュミット医師がドイツ東部を中心に治療を行い、ボーラ・ハンスグローエの本拠地も東側ということから、不自然(意地悪)な質問ではなかった。
その後改めて「質問に答えたくないのか?」と聞かれたアッカーマンは「そうだ。」と返し、席を立った。
ドイツは過去に、Tモバイルやゲロルシュタイナーなどのチームがドーピングの影響から解散し、ドイツ国内の自転車人気が低下、レースも激減したことから、デゲンコルブやキッテル、トニー・マルティンといったドイツ人選手が、ドーピングに対して真摯に対応する態度が受け継がれてきた。
そういった背景もあり、現場で会見に出席したジャーナリストはアッカーマンの態度に驚き、失望したと話した。
Source: VeloNews, Cyclowired, TheCyclingPodcast