今年のツール・ド・フランスで初の総合優勝を果たしたゲラント・トーマス(32歳/ウェールズ)が12月17日、BBC・スポーツ・パーソナリティ・オブ・ザ・イヤーを受賞した。
英国で最も権威ある賞
これはBBC(英国衛星放送)が1954年に開始したイギリス国内の全スポーツ選手を対象とするその年の最優秀選手に贈られる賞であり、今年はトットナムで活躍したサッカー選手ハリー・ケイン、F1でワールドチャンピオンになったルイス・ハミルトンを抑え、ゲラント・トーマスが最優秀賞に輝いた。
Geraint Thomas, the 2018 BBC Sports Personality of the Year! 🙌
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— BBC Sport (@BBCSport) December 16, 2018
動画だと規模の大きさがよく分かる
過去の受賞者を見てみると、昨年はロンドン世界陸上で5000mと1万mの二冠制覇したモハメド・ファラー、2015〜2016年はテニスのアンディ・マリーが二年連続受賞している。
自転車選手としては2012年のブラッドリー・ウィギンス以来6年ぶりの受賞で、2011年のマーク・カヴェンディッシュらを含め5人目*となる。*ブラッドリー・ウィギンス(2012)、マーク・カヴェンディッシュ(2011)、クリス・ホイ(2008)、トム・シンプソン(1965)
ここまで説明して自転車ロードレースファンなら思うだろう。
クリス・フルームはどうした!!??
…と。
受賞どころか…
今年グランツール3連続優勝を果たした現役最強ライダーは、2013年にツールで初優勝を飾っていから2018年まで一度も受賞していない。
それどころか歴代受賞者の3位まで見てもクリス・フルームの名前が見当たらない。候補には何回か挙がっている。
イギリス史上最高の自転車ロードレース選手であるのは間違いなのに…なぜ!?
ケニア生まれのイギリス人
この賞は視聴者の投票によって行われ、選出資格はイギリス国籍のスポーツ選手かイギリスに住みイギリスで活躍した選手に贈られている。(過去にニュージランド人が受賞している)
クリス・フルームはイギリス人の両親もとケニア・ナイロビで生まれ、自転車選手としてのキャリア初期はケニア代表として数々のレースに出場している。しかし、のちにイギリス国籍を取得。現在フルームは世界選手権や五輪をイギリス代表として出場している。
つまり、受賞条件は十分に満たしているのだ。
フルームの届かぬ主張
しかし、フルームの国籍に対してはイギリス国内で様々な批判があり、それらの声を代表するように元イギリス人自転車選手のデヴィット・ミラーが「フルームはキャリアのために帰化した」と批判している。
フルームはそれ意見に対し、インタビューで度々反論している。
「若い頃ケニア代表として走っていた頃、それが卑怯なこと、不誠実なことであるような気持ちだったんだ。僕が国(ケニア)を代表することで、よりケニア的である選手の場所を取ってしまっているんじゃないかってね」
「国籍を(イギリスに)変えて、正しいことをしていると、最初からこうあるべきだったという気持ちになれたんだ」
「家族全員がイギリス人だし、とてもイギリス人的な価値観の下で育ってきた。クリスマスにはおばあちゃんが大きな肉をローストやヨークシャープディングをたくさん作ってれた」
「(本国イギリスからは)何千キロも離れていたが、僕たちはとてもイギリス人の生活を送っていた」
イギリス人であることを受け入れてもらえないフルームだが、本人もそのことには一定の理解を示している。
「たしかに僕はイギリスに住んだことがない。だから、人は僕をイギリス人だと認めたくないのだろう。それはひとつの意見だ。そうだとしても、僕はかまわない」
「(ツールとジロの2連続総合優勝は)個人としてはもちろん、イギリスのために成し遂げたと思っている」
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— Chris Froome (@chrisfroome) 2018年12月16日
クリス・フルームは自身のツイッターで、BBCスポーツ最優秀賞にノミネートされたゲラント・トーマスへの投票をファンに呼びかけた。
Source: Eurosport