2018年ツール・ド・フランスを総合優勝したゲラント・トーマスが、英ガーディアンのインタビューにで、ツール期間中のチームに対する憤りを赤裸々に話した。
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2018年のツールは波乱の幕開けだった。
第1ステージで前年の覇者フルームが残り10km地点あたりで落車。深刻なケガさえなかったものの、トップと51秒差とタイムを失ってしまったのだ。
平坦コースの第2ステージが終わり、トップとフルームのタイム差は依然として51秒。一方ゲラント・トーマスは総合勢の中では実質トップの15秒差だった。
しかし、第3ステージのチームタイムトライアル(35.5km)を前にして、チームはトーマスに「君がパンクしても他の選手を助けにいかせない」と告げたのだ。
(それを聞いた時)座っていて頭がクラクラしたよ。
それはちょっと最低じゃないか?クソ野郎どもが!俺を待たないとか…正気か?
直前のドーフィネで総合優勝をしたゲラント・トーマスは、5勝クラブ入りを目指すフルームとのダブルエース体制と言われていた。しかし、スカイのエースはこの時点でも明らかにフルームだったのだ。
僕は(フルームと同じく)チームはが守ってくれるべき選手だと思っていたから、腹が立ったよ。
だけどチームが適当に下した決断ではない。チームスタッフたちが熟考して議論した結果だ。もちろん文句を言ったが「だめだ」と言い返された。それならば、その現実を受け入れなければいけない。
パンクの可能性は限りなく低いが、起こったらクソな状況であることには変わりない。少し落胆したが、諦めたよ。
だが、トーマスに待ち受けていた厳しい現実はこれだけではなかった。
今大会で一番の難関ステージと言われた石畳の第9ステージ。ここでもフルームは落車、しかし無事トーマスともに集団内でフィニッシュした。
この時点でトーマスは、トップのヴァンアーヴェルマート(BMC)と43秒差の2位。フルームは1分42秒差の8位だった。
事件はその晩のホテルで起こった。
泊まったホテルがとても暑かったんだ。
だから8選手全員の部屋でエアコンをつけたのだが、電源が落ちてしまったんだ。
そしたらスタッフは、「一人分しかエアコンはつけられない。フルームの部屋だけしか。」と言ったんだ。
それに憤ったトーマスは、チームの指示を無視してエアコンを自室まで運び、スイッチをつけた。
「電源が落ちなくてラッキーだったよ」
これらツールでのエピソードが綴られたゲラント・トーマスの二冊目の自伝『The Tour According to G』(Kindle版:¥1,295)が11月1日に発売された。
なお翻訳本が刊行される予定はもちろんない。