ユンボ・ヴィズマからチェレステカラーが消えた訳

ついに開幕した2020年ツール・ド・フランス。

2ヶ月遅れで始まった世界最大の自転車レースの総合優勝最有力と言われているのは、前回優勝者のエガン・ベルナル…ではなく、ユンボ・ヴィズマのプリモシュ・ログリッチだ。

そしてそのユンボ・ヴィズマの選手たちが乗るビアンキ OLTRE XR4の色が、いま注目を集めている。

なぜなら選手たちが乗るビアンキがメーカーを象徴するチェレステ・カラーではなく、全体的に黒いからだ。

そしてその理由には「1gでも軽くしたい」というユンボ・ヴィズマ徹底した考えに基づいている。

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Vengeよりも重いOLTRE XR4

ビアンキのフラグシップモデルにはエアロロードのOLTRE XR4と、軽量のクライミングバイクのSPECIALISSIMAという二種類がある。

しかし、近年のユンボ・ヴィズマの選手たちは、クライマーを含め皆OLTRE XR4に乗っている。

それだけOLTRE XR4に推進力がありフィーリングも優れているということなのだが、その弱点として重量が挙げられる。

一般的にエアロロードは重いのだ。

OLTRE XR4のフレーム重量はサイズ55で980g。現在平坦では世界最速と言われているスペシャライズドVengeがサイズ56で960gなので、それよりも重いバイクでログリッチは山岳ステージで勝利を量産しているのだ。

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平坦コースだったツール第3ステージではチェレステカラーのバイクに乗っていた。

黒いとなぜ軽量に?

UCIはバイクの最低重量を6.8kgと規定しており、他チーム(特にクライマー)が重量規定ギリギリのバイクを使用する一方で、OLTRE XR4は7.1~7.3kgと言われている。

その為ユンボ・ヴィズマはフレーム以外での徹底的な軽量化を図っており、その考えがビアンキのシンボルである特徴的な青緑(チェレステ)を取り除くまでに至ったのだ。

黒にすることで何故、そしてどれぐらいの軽量化が可能になるか、CylingTipsのJames Huangが取材した専門家はこう答える。

黒色は明るい色のバイクよりも50グラムは軽くなるだろう。クリアコーティングの下にカーボンスモークが入っているような色ならば、もっと軽くなるかもしれない」

「塗装の種類や色を変えると重量が代わる。顔料によって白や明るい色はより重くなるんだ。常に明るい色は白のベースコーティングが必要になるんだ。そうでないとくすんだり濁った色になってしまう。一方、単色の黒だとそのベースが必要なくなる」

「熟練した塗装職人はより少ない塗料で均一にコーティングをかけられるから、より少ない塗料で済むこともある」

約50gあまりを軽くするのためにビアンキのブランドイメージであるカラーに手を加えたユンボだが、徹底した軽量化はこれだけではない。

フレームの重量をその他でカバー

ディスクブレーキがプロトンの大半を占めるなか、ユンボ・ヴィズマは頑なにリムブレーキを使用している。

同チームのワウト・ファンアールトが悪路のストラーデ・ビアンケとミラノ〜サンレモでリムブレーキを使い優勝したことで、一時期リムブレーキに注目が集まったが、ビアンキの公表によるとOltre XR4 ではリムブレーキモデルの方がディスクブレーキに比べて60g軽い。

またTermac SL7など近年のディスクモデルの軽量バイクでは問題にならないが、シマノのデュラエースDI2がディスクブレーキだと200~300g重くなることもユンボ・ヴィズマがリムブレーキを使用する大きな理由になっているのだろう。一部報道では選手たちによる要望とも言われている

またツール前哨戦のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネの山岳ステージでは、シマノによるフルサポートを受けているのにも関わらず前輪だけコリマWS+の使用が確認されており(デュラエースC40よりも147g、C24よりも10g軽い)、徹底した軽量へのこだわりが伺える。

来年はついにディスクブレーキ解禁か?

コロナ禍でレースが中断していた今年の6月19日にオランダのADが、ユンボ・ヴィズマが6年に渡ったビアンキから、バイクサプライヤーを2021年以降サーヴェロに変更すると報道した。

サーヴェロはエアロロードのS5、軽量オールラウンドのR5があり、現在サーヴェロに乗るサンウェブはS5はディスクブレーキ、RSはリムブレーキという変速的な乗り分けをしている。

ツールの総合優勝チームとして2021年シーズン迎えるユンボ・ヴィズマが、今後どのようなバイク選択をするかに一層の注目が集まる。