「エアロポジションは30歳まで」ランスが語る柔軟性の賞味期限

「30歳を越えてあのポジションは不可能だ」

そう語るのはツールで幻の7連覇をしたランス・アームストロング。

今年、好調サンウェブの中でも特に飛躍の年となったマルク・ヒルシ(スイス/22歳)のエアロポジションを見て、そうコメントした。

ヒルシの走りが最初に注目を集めたのが、8月30日のツール・ド・フランス第2ステージ。残り13km地点から飛び出したジュリアン・アラフィリップに唯一食らいつくことができたのが、当時はまだ無名のヒルシだった。

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そして丘陵コースの第12ステージで、残り26kmから単独でアタックを仕掛け独走勝利を決めた。

ランスの盟友ジョージ・ヒンカピーは、この勝利を決して偶然ではなく、狙って掴んだ勝利だと語る。

「(第12ステージは)逃げ切るには難しいステージだったが、ヒルシは逃げ切った。どうやら彼は空力性能の高い方もサーヴェロ(S5)に乗っていたみたいだね。軽量なバイク(R5)よりも重いバイクを選択したんだ」

この日のヒルシは2級山岳を含む4つのカテゴリー山岳(獲得標高差3,400m)にも関わらず、軽量オールラウンダーのR5ではなく、二股ステムが特徴的なエアロロード&ディスクブレーキのS5をチョイスした。

「興味深い選択だ。恐らく最初から単独で逃げる考えがあったんじゃないかな。だから重量よりも空力性能を選んだ。そして中継を見ていて、まるで彼がタイムトライアルバイクに乗りTTポジションを取っているように見えた」

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ヒルシの特徴はそのパンチ力ある走りの他に、身体を限界まで折り曲げたエアロポジションが挙げられる。そして、ヒルシがサイクルコンピュータに両手を置き、それをDHバーのように使う走りは、SNSで話題となった。

しかし、このポジションはヒルシの身体の強さ、そして柔軟性があってこそできる姿勢だとヒンカピーとランスは解説する。

ジョージ「みんな知っているようにあのポジションを取るのは難しい。相当強い体幹が必要だ。しかも彼はそれを長時間に渡り保っていた。感心するよ」

ランス「だけどな22〜23歳だったらあの姿勢は取れるぞ。だが30歳になったらあんな風に身体を曲げることはできない」

ジョージ「たしかに背中が悲鳴を上げるポジションだ。特に今日のような急勾配の登り坂があるようなステージでは簡単じゃない。つまりこの選手は柔軟性と、エアロポジションを取る技術があるということなんだ」