フルサングのツールは終わった。ランスによる2019年ツール第1stレビュー

今年で3回目を迎えた、幻のツール7連覇者ランス・アームストロングによるツール・ド・フランスのレビュー番組『The Move』。

今年はいままでゲストだった盟友ジョージ・ヒンカピーをレギュラーに迎え、山岳・平坦の共に濃い内容のレビューが期待できる布陣を整った。*いままではランスの興味ないスプリントステージではレビューはそこそこに思い出話に終始することが多かった

カヴェンディッシュは選ばれなくて当然

ランス・アームストロング:2019年ツール・ド・フランスの第1ステージ。ブリュッセル〜ブリュッセル。聞き間違いじゃないぞ。スタートとフィニッシュ地点が同じ場所なんだ。

今ステージのレビューに入る前に、所属するディメンション・データの選考から漏れ、2007年のプロデビュー以来の連続出場を逃したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス/34歳)について議論が交わされた。

ランス:なぜこれ(カヴェンディッシュの落選)について話さなければいけないのか、理解に苦しむ。

ジョージ・ヒンカピー:マーク・カヴェンディッシュだぞ?ツールで通算30勝している。彼が(落選前に)調子いいと言っていたのなら、俺はその言葉を信じる。ツールに彼がいないのは寂しいよ。

ランス:別に俺は批判的になっているワケじゃない。俺はマークが好きだ。だがこれまでのシーズン結果を見れば(明らかだ)。

(中略)

俺でもマーク・カヴェンディッシュは選ばない。完走すらできない選手だぞ?時間制限に間に合わない選手だぞ?

やつのことは好きだし30勝は素晴らしい成績だと思っているが、完走も時間制限以内で走れない選手はツールに出場するべきじゃない。

カヴェンディッシュを除いたディメンション・データは、その代役を託された同じチームのジャコモ・ニッツォーロ(イタリア/30歳)がステージ4位に入った。

ランス:もしマーク・カヴェンディッシュがこのレースに出場していたとしても、4位より良い成績は上げられなかっただろう。

フルサングのツールは終わった

フィニッシュから残り18km地点、バーレーン・メリダのダミアーノ・カルーゾ(イタリア/31歳)の落車に巻き込まれる形でヤコブ・フルサング(デンマーク/34歳)が落車。報道によると目の上を4針縫う他は擦過傷で済んだようだが、ランスは「この落車でフルサングのツールは終わった」と言い切った。

ランス:今大会はいろんな選手に総合優勝する可能性があるが、頭に銃を突きつけられ「一人選べ」と迫られたら、俺はフグルサングを選ぶ。だが今日でその可能性が消えてしまった。やつのツールは今日で終わってしまった。

ーーホントに?

ランス:ああ。

ヒンカピー:終わったかどうかはわからないが、確かなことはよく言われる「落車は不運」が事実ではないということだ。落車に運は全く関係ない。

ランスはツールで「7年で1.5回しか落車していない」と言っている。21ステージを7年走って落車を1.5回しかしないことに運が介在する余地はない(関係ない)。これはハードワークと、常に集団前方を位置取って、トラブルを避け、安全のままフィニッシュできる為の隊列維持に専念するのが主となる目的だ。

だからツール第1ステージの残り15km地点で、彼(フグルサング)が集団の真ん中にいたことが受け入れられない(落車の原因でもある)。

ランス:その(落車の)10分前に集団後方にいたとき、俺は「あいつはあそこで何をしてるんだ?」って言ったよな。その後にこれ(落車)だ。

やつ(フグルサング)は経験豊富な選手だろ?それに出場チームの中でも強いチームメイトを携えている。チームメイトはなんの為にいるんだ?集団前方に位置して危険を回避するためだろ?

Embed from Getty Images

ランス:俺の優勝候補はやつ(フグルサング)だった。でもどうやらもう終わりみたいだな。ほらな、いつものように俺の予想は外れるだろ?

落車はすべてを変えてしまう

落車が付き物である自転車ロードレースだが、総合優勝を狙うエース選手にとってその影響は計り知れないとランスは語る。

ランス:たとえ落車後に再び走り出して、プロトンでフィニッシュできたとしても、全てが変わっていしまうんだ。

ヒンカピー:明日のステージ(28kmのチームタイムトライアル)も簡単ではないからね。

ランス:落車すると睡眠の質、サドルの座り方、マッサージ、とにかく全てが変わってしまうんだ。

ダークホースはニバリ

フルサングの落車シーンを、前方を走行していた選手のサドルについたカメラが撮影しており、そこには倒れたカルーゾをバニーホップで見事に避けヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア/34歳)が捉えられていた。

そして予想の的中率の高さに定評のあるジョージ・ヒンカピーは、今大会総合優勝のダークホースとしてニバリの名前を挙げた。

ヒンカピー:ヴィンチェンツォ・ニバリ。彼がジロから完全に回復ができていれば…彼は過去の総合優勝者だ。プロトンでも随一のバイクコントロール力があり、そこまでのプレッシャーがかかっておらず、他の優勝候補たちはフラフラしている。今日また落車したゲラント・トーマスのようにね。僕はニバリを推す。

Source: Cyclowired