「36kmしかTTがない、悲しきツール」をランスが語る

10月16日フランス・パリで行われた2020年ツール・ド・フランスのコース・プレゼンテーション。南仏を中心にフランスを代表する5つの山岳地帯すべて通る過酷なコースに、4度王者のクリス・フルームは「ここ5、6年で一番厳しい(コース)だろう」とコメントした。

幻の7連覇者であるランス・アームストロングは、このコースをどうみたのだろうか?自身のポッドキャスト番組でその印象を語った。

©ASO

これがトレンド

「36kmのタイムトライアルだ。これは救いようがないな」

「俺の三回目の2001年ツールでは168km、2002年は176kmだった。これらは個人TTとプロローグ、チームTTの合計距離だ。」

「2012年ツールは101km、今年は54km、そして来年は36kmだ。TTの距離短縮がトレンドなんだ」

今回のコースで注目を集めたのは、タイムトライアルの距離の短さ。2018年、19年とあったチームTTが姿を消し、2020年ツールでTTは第20ステージの36.2km個人TTのみ

そのためログリッチやデュムランといったTTでタイムを稼ぐタイプより、キンタナやティボ・ピノーなど登りで仕掛ける選手にとってアドバンテージのあるツールとなった。

ツール・ド・南仏

「俺はこの流れに反対だ。なぜならツール・ド・フランスは最も優れている選手が勝つべきだからだ。この時の優れているというのは、登り、タイムトライアル、風を避けれることに最も優れている選手という意味で…って、そういえば来年のツールは風の心配はなさそうだな。なんたって来年はツール・ド・南フランスなんだからな」

来年ツールでもう一つ特徴的なのが、中央山塊、ピレネー、ジュラ、アルプス、ヴォージュというフランスを代表する5つの山脈がコースに組み込まれていることだ。

また第2ステージからトゥリーニ峠(1,593m)が現れるなど、難易度が高い山岳が3週間に満遍なく散りばめられており、反対に完全な平坦ステージがわずか3つと、総合順位を争う選手にとっては気を抜くことができない日が例年より増えたことになる。

「個人TTが36kmしかないツールなんて、バランスの良いレースじゃない。つまりバランスの良くないツール王者が誕生するってことだ」

「36kmなんて冗談でしかない」

実りの見えないイネオス包囲網

また、このようにTTが短くなった理由をランスはこう語った。

「ネットを見ればたくさん目にすることだと思うが、これは仕立てられたコースだ。ティボ・ピノーはキャリアの円熟期に入っている。いまの彼はツール総合優勝が可能だ。彼のためのオーダーメイドなんだ。それとバルデ、そしてたくさんの人が言及するアラフィリップ。」

ツール・ド・フランスの主催者であるASOは、自由にコース設定することができる。今回のコースのように山岳(29つの山が登場する)が多く、チームTTがなくTTの距離が短ければ、チーム力に劣るが山岳(だけ)が得意な選手に有利になるのは明白だ。

「だが、アラフィリップに関してはツールではなく2020年の五輪を目指すと言っている記事を読んだけどな」

今年のツールで14日間に渡ってマイヨ・ジョーヌを着用したジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク/27歳)は、出席したコース発表の場で「来季は総合順位を狙わない。他の目標がある」とコメントした。五輪を目指すと明言はしなかったものの、今季大活躍だったクラシックと、難易度の高く設定されている東京五輪を目指すのは明らかだろう。

「でも、(このツールは)奴にとっても完璧なコースだと思うけどな」