9月27日にプロサイクリスト協会(CPA)の会長選挙が行われ、ジャンニ・ブーニョ(54歳/イタリア)が3期目となる再選を果たした。
しかし、このプロ選手たちを代表する団体には多くの批判が集まっている。
それを知らしめるように、結果が出た翌日の27日にツールで4回の総合優勝しているクリス・フルームは、CPAとの話し合いと、場合によっては新たに選手組織を発足する考えがあるとコメントを出した。
CPAの問題点については以下のエントリに詳しいが、そもそもなぜこの自転車ロードレースでは選手の立場がこれほど弱いのだろうか?
ランス・アームストロングが自身のポッドキャスト番組にて、過去にあった経験を踏まえながら解説してくれた。
ランス:(プロ選手による)組合には団結が必要だ。
しかし、文化も言語も経済状況も違う200人がまとまらなければならない。その全員の意見が一致しなければならない。もし一人でも反対する人がいれば、それは機能しない。
(組合結成の動きは)起こるべきだと思うが、悲観的にならざるを得ない。良い例がある。
ここからランスは現役時代の出来事を例に語り始めた。
舞台はランスが現役に復帰した2009年のジロ・デ・イタリア。ランスはチームメイトのリーヴァイ・ライプハイマーのアシストとして出場していた。
事が起こったのは、第9ステージのミランで行われた周回コースだった。
街中の路面電車のレールやレンガの路面があり非常に危険な状態。それに加え、前日の第8ステージで選手がコースアウトによる大怪我を負ったショックもあり、選手の中でも不安が募っていた。
ダニーロ・ディルーカがジャージを着用していて(この時点で3賞を独占)、カンチェラーラ、(イヴァン)バッソもいた。歴大のスター選手たちだ。
そいつらが俺のところにきて、「おいランス!今日のコースでレースはできない(危険だ)。コミッセールに訴えるべきだ」と言ってきた。
3年のブランクがありながらも、依然プロトンでは多大な影響力を有していたランス。名だたる選手達が彼を頼る中、ランスは選手を代表してコミッセール(競技役員≒審判)に訴えた。
ランス:だから俺はコミッセールに「これは危険すぎる」と言ったんだ。そしたらコミッセールは承諾してくれた。フィニッシュ地点で全員で止まる提案だった。
予定ではコミッセールのデ・ニーロ・デ・ルーカスがファンにマイクを通して「申し訳ないが、危険すぎるのでレースはできない」と謝罪するという手はずだった
だから俺は訴えてきた選手たちに「みんなで止まろう」と伝えたんだ。
また、俺はカンチェラーラに「でも、条件がある。止まるときはお前らは俺の隣にいろ」と言ったんだ。
「デルーカがマイクを持ってスピーチをするときは、お前たちは(選手を代表して)俺の隣にいろ」と。カンチェラーラが俺の左、バッソは右だ、と。
レースが始まり、フィニッシュ地点の500m手前でプロトンがペースダウンした時、あいつらはどこにいたと思う?
後ろを振り返ったら、カンチェラーラは100m後方に、バッソも100m後ろにいた。
お前ら…臆病の赤ん坊かって思ったぜ。
提案通りレースはスムーズにエキシビションのまま終わるかと思いきや、事態は予想外の展開を見せる。
誰もレースをしたくない状態のプロトンがフィニッシュ地点まできた。しかし、レース主催者のアンジェラ・ゾミュノンがその時、何をしたと思う?
彼はそんな事態に怒り出し…けど、まぁ当然だよな。レースが行われないのだからスポンサーや、ミランに本拠地をおくガゼッタ紙もいるわけだからな。
そこで彼はワイルドカードで出場していた3チームの監督に電話して、「いまアタックさせなかったら、お前たちのことは金輪際招待しない」と脅したんだ。
グランツールにワイルドカード枠で出場するプロコンチネンタルチームは、主に主催者へのロビイングによって選出されている。
ランス:その後、アタックが行われ…レースが始まってしまった。
(選手組織がなければ)そんなことが起こってしまうんだ。
ヒンカピー:それは(イタリアに限らず)どの国でも起こりうることだ。
ランス:ああ。プルードム(ツールを主催するASOディレクター)も同じことをするだろう。
立場の弱いチームに向かって「またツールに出場したかったら、レースを盛り上げろ」ってな。
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