プロトンに広がるケトンという…闇?ランスの2019年ツール第8stレビュー

獲得標高差が3,900mあった丘陵コースの第8ステージは、ロット・スーダルの逃げ職人トーマス・デヘント(ベルギー/32歳)が逃げ切り勝利を決めた。一方、総合順位を争う選手ではチームイネオスのゲラント・トーマスが残り16km地点で落車。アシストを使い集団に戻った後、メイン集団からジュリアン・アラフィリップが飛び出し、それにティボー・ピノー追いつき後続と20秒差をつけることに成功した。

フルサングは終わっていない

ランス・アームストロング:ここで2つのことを撤回させてほしい。ジェイコブ・フグルサング…正しくはフルサングだが綴りにgが入ってるし、こっちの方が良く聞こえるからこのまま呼ぶが、ジョージ、やつはまだ終わっていない。あの発言を撤回したい。調子がよく見えるし、確かにアラフィリップについていけなかったのは心配だがな。

ーー君が最初に挙げた優勝候補だったね。

ランス:そうだ。第一日目に落車して、だから彼のツールは終わったと思った。だが、とにかく「彼のツールは終わった」という発言は撤回したい。

もう一つはアラフィリップが総合順位争いにおいて、脅威かどうかという話だ。誰もそれには同意しなかった。特に今年(のアラフィリップに関して)は。いまはわからない。今日、やつに誰もついていけなかった。

ジョージ・ヒンカピー:誰も言及していないけれど、彼(アラフィリップ)は最後の山岳の前に自分でチームカーまでボトルを取りに行ったんだ。明らかにキツい距離でボトルと取りに行き、集団まで戻っていくなんて…なんて力なんだ。

ーーなんで自分で取りに行ったんだろうね。

ヒンカピー:自分一人しかいなかったからじゃない?

ランス:それについて推測したい。俺はヤツが水を飲んでいるところなんて観なかった。

プロトンの70%が使用するケトンとは?

ランス:プロトンにおいてケトンエステル使用の流行は一般的に知られている。完全に合法であるし、俺は誰のことも暴露しようという気なんかない。ケトンエステルの使用は事実だ。そして俺はドゥクーニンク・クイックステップがケトンエステルの最大の消費者であることを知っている。これはとても有益だ。そしてステージのラスト30〜45分に力が必要で(メイン集団に)たった一人なのだとしたら、取るしかない。これは事実だ。

もう一度言っておくと、別に誰に罪を負わせる気はないが、そこに(ケトンエステルは)あるし、チームイネオスも…

ヒンカピー:僕たちが聞いた話では、70〜80%のチームが使ってる栄養補助サプリだ。

ランスの説明によるとケトンは人間の身体の脂肪、糖に続く3つ目のエネルギー源であり、数年前までは非常に不味く値段も高かっただが、最近になり味も改善され値段も落ち着いてきたことでプロトンで広く使われ始めた。またその開発には米国軍が関わっており、国防省とオックスフォード大学の共同研究によって開発されたという。そして自転車ロードレース界では、チームスカイ(当時)が初めに使用を始めたとランスは説明する。

第11ステージの中継の中でも、解説のフローラン・ダバディ氏が「プロトンの半分以上のチームがケトン体を錠剤で摂取している」と指摘し(残り約80km地点から)、同じく解説の入部正太朗選手も錠剤は初耳と言っていたものの「食事を抜いて脂肪を燃やす」状態(詳細には、炭水化物を減らしその分脂肪分をたくさん取ることで、脂肪を分解してエネルギーに変えやすいケトーシスという状態)を自然に作り出す方法に言及していた。

*第9ステージはランス・アームストロングとジョージ・ヒンカピーがレースに出場してツールを観戦しなかったため割愛。