解:収入源が、広告(スポンサー)料しかないから。
自転車ロードレースと他プロスポーツの違い
自転車ロードレースは獲得賞金がチームの収入にならない特殊なプロスポーツだ。
例えば、7月にツール・ド・フランスを総合優勝したゲラント・トーマスには約6,300万円(€50万)と、その他にマイヨジョーヌを着用した毎ステージで約70万円(€5,500)の賞金が支払われた。
しかし、この賞金は(伝統的に)出場した選手の間で分配される。つまり、チームには一銭も入らない。
そう。自転車ロードレースというスポーツは、レース結果がチームの収入に直接影響しないのである。
一方で、昨シーズンにプレミアムリーグ(イングランドサッカー)で優勝したマンチェスター・シティには賞金だけで約54億円(£38M)、F1の強豪であるフェラーリは年間を通してレースに出場しただけで約98億円(£70M)を獲得した。
サッカーやF1と違い、自転車ロードレースは入場料の確保できないスポーツなので、チームの収入はスポンサーからの広告料しかない。
また、ツールを主催するASO等のレース主催から放映権料が分配されない事実は言うまでもない。
広告(スポンサー)料の内訳
すべてをスポンサー収入で賄っている自転車ロードレースのチームだが、スポンサーといっても種類は様々である。
例えばプロトンで最もお金持ちで、常にやっかみの対象となっているチーム・スカイをみてみよう。
2016年のチーム予算は約47億円(£31M)と言われ、その収入の内訳は、
1.タイトルスポンサー
→スカイ衛生放送
2.機材スポンサー
→ピナレロ(自転車)
→シマノ(コンポーネント)
→カステリ(ウェア)等
3.レース出場料
RCSスポート(ジロ他を主催)
ASO(ツール他)
Unipublic(ブエルタ他)等
4.現物支給
→自転車
→シューズ
→コンポーネント
また、予算も人件費(年俸/スタッフ)が77%も占めており、この割合は他のチームも同様か、それ以上と言われている。
脱スポンサー型の開拓の必要性
スポンサー収入に頼る不安定な運営方式から決別しようと、UCIやASOの方針転換を待つのではなく、運営(根本)から変えてしまおうというチームがある。
アイルランド籍のプロコンチネンタルチーム「アクアブルー・スポルト」だ。
アイルランド人の資産家リック・デラニーによって2017年に創立したチームは、同名の自転車用品を売るECサイト(自転車版Amazon)を運営し、その収益が活動費となっている。
つまりチームの成績が上がれば、それがサイトの露出に繋がり売上が増え、チーム強化になるという仕組みだ。
この実験的な取り組みを構築した理由をリック・デラニーはこう語る。
「スポンサーの影響で毎年のようにチームジャージのデザインが変わってしまう。またチームはスポンサー資金しか資金がない。チームがチームとして独立していないのはここ数年の自転車界の動きで明らかだ 」
また、成功を収めているチーム・スカイの未来も、決して安泰ではないと述べている。
「スカイの1ブランド型が、アクアブルースポートの運営モデルに一番近い。しかし、もしスカイが自転車チームから手を引けば存続することはできないだろう」
どうすればいい?
じゃあ具体的に、どんな施策が挙げられるのだろうか?
1.サラリーキャップ
その圧倒的な資金力でチーム・スカイは2012年から2018年の7回のツールで6回の総合優勝を上げている。
その実力の不均等を、選手年俸に制限をかけるサラリーキャップの導入で是正し、低予算のチームでも勝てるようにすれば、コスパのよいプロスポーツが出来上がり、企業によるスポンサードが活発になる…かもしれない。ちなみにUCI会長ラパルティアンや、みんな大好きコンタドールもこのアイディアに賛成している。*ランスがコンタドールをアホ呼ばわりしていたヤツ
2.放送権料の配当
ツールのテレビ放映権料だけでも(フランス国内外を合わせると)約96億円(約7,400万€)と言われており、それを分配すれば総合優勝の順位は変わらずとも、毎年のように新スポンサーの獲得に苦労することが減り、たった7億円の為にファンから資金を募るようなパフォーマンスをする必要もなくなるはずだ。ちなみに複数のトップチームが集まり開催している「ハンマー・シリーズ」もその改革活動の一部である。
3.UCIワールドツアーがツール・ド・フランスから離脱
昔そういう危機があったらしいけど、たぶん(いまは)無理。
結論
我々ファンには具体的に何ができるのだろうか?
それは…
自転車ロードレースというスポーツに本気で変革を起こそうと活動しているアクアブルー・スポートと、ハンマーシリーズを応援して盛り上げよう!
…ぐらいしか思いつかないのですが、教えて分かる人!