ミラノ〜サンレモに17回出場したジョージ・ヒンカピーが、アラフィリップを語る

ランス・アームストロングがホストするポッドキャスト番組『STAGES』。今回は春休みの家主に代わり、アメリカが誇るクラシック・ライダーことジョージ・ヒンカピーを迎えての特別編です。

2つの異なる前哨戦

ーー今日はランス・アームストロングはいないんだ。春休みだからね。彼には子どもが5人もいるし。だから今日はジョージ・ヒンカピーに来てもらっている。

ジョージ・ヒンカピー 彼が自分の城(ポッドキャスト番組)を僕に貸してくれるとは、ずいぶんと信頼されているな。出会って30年たつけど、こんな信頼されたのは初めてじゃないかな?笑

ーーははっ。でも君はミラノサンレモを17回も走っているんでしょ?

ヒンカピー ああ。

ーーだからこのコースを知り尽くしているだろう。総距離291kmという長い距離の他に、このレースにはどんな準備が必要なんだい?

ヒンカピー 優勝候補の選手はたいていパリ〜ニース(3月10~17日)ティレーノ~アドリアティコ(3月13~19日)を走ってくる。そして今日の優勝候補たちのほどんどがティレーノ~アドリアティコ組だった。

なぜなら、フランス(パリ〜ニース)よりもイタリア(ティレーノ~アドリアティコ)の方が天気が良い。

またパリ〜ニースはミラノ〜サンレモまで一週間も期間が空いているのに比べ、ティレーノ~アドリアティコは3、4日だから(その間)練習をしなくてよい。

それに加え、ティレーノ~アドリアティコは5、6ステージあって、大体1ステージ240kmぐらいと距離が長い。なぜなら主催者は選手の為に(ミラノ〜サンレモを想定できるよう)長い距離のステージを用意してくれているんだ。

選手はそこから50kmほどホテルまで自走すればサンレモの距離を走ることができる。僕が現役の頃にもやっていたことだが…正直、本当にそれが必要なのかはわからないけどね。

ーーぶっつけ本番でもいいかもしれないってことだね?

ヒンカピー ああ。特に今年のアドリアティコは厳しいステージだったから、あの後選手が自走していたら驚くけどね。

でも僕が現役の頃はボーネンがレース後に30、40kmとかホテルまで走っていたよ。

ーー結局のところ、1週間も休めるパリニースとアドリアティコはどっちがいいの?両方試した?

ヒンカピー ミラノ〜サンレモを走った17回のうち、半分半分だったかな。でもキャリア後半はアドリアティコにしていた。

ならではの補給タイミング

ヒンカピー ミラノ〜サンレモはとにかくおかしなレースなんだ。進む距離ごとに違ったステージが現れる。

最初の目標地点はトゥルキーノ峠(標高532m/残り142.2km地点)で、10マイル(16km)ほどの大した登りなのだが、ここでは何も起こらない。下ってもまだ100マイル(160km)ほど残っているからね。

でも精神的なことを言えば、そこを気持ちよく上れると「このレースは良い日になりそうだぞ」と感じるんだ。

そして同時にその辺りで「何か食べておかないと最後まで持たないぞ」と感じる。なぜなら通常のレースと違って、残り30km地点でチプレッサ峠に差し掛かってしまうと、今日のようにレースが動いて食べる暇がないからだ。

ストレスが多く、道の両端では観客が写真を撮ろうとコースに乗り出してくるし、車も路肩にたくさん止まっているし。とにかくカオスすぎて補給のことを忘れてしまう。ポジション取りが何より大切なレースだからね。とにかくカオスだよ。

ーー他のレースと比べ、みんな車をどかさないよね?

ヒンカピー ああ、そうなんだ。路肩に止めっぱなしさ。ただでさえ道が狭いのに、その車が更に狭める。なんの対策も取られないまま、もう100年が経っているよね。

ーーしかも時には、その車の間から人や犬が飛び出してくる。

ヒンカピー ああ。それは選手も覚悟しているし、叫んで注意もしているよ。だからエースは集団の中にいるよりも、自分で安全なポジションを取りに行かなければならないんだ。

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走らないと、わからない

ヒンカピー そういえば、今日の残り5,6km地点のポッジオ辺りでアラフィリップは集団の一番後ろにいたね。ホントこれには驚いた。

ミラノ〜サンレモは集団の中で脚を溜めておくのが難しいレースではない。特にチームのエースは自分の周りに1〜3人の選手がいるからね。

これは聞いたこと言葉かもしれないけど、ミラノサンレモは勝利するには最も難しいレースかもしれないが、完走するには最も易しいレースの一つでもあるんだ。プロトンの中でジッとしていられるコースだからね。

ーー君はこのレースを勝つ選手には二種類いて、しかもその確立が5割ずつだと解説してくれたね。最後のポッジオで仕掛けるパンチャーか、スプリンターだ。こんなレース多くないでしょ?

ヒンカピー ああ。でも、スプリンターが勝利するには、最後の上りであるポッジオを登らなければならない。でも、ここの勾配はそれほどではないし、練習だったらアウターでも上れるぐらいだと感じるぐらいだ。だが280kmを走ってきた後に上ると、そういうワケにはいかないんだ。

ーーランスも最後2つの登り(チプレッサ/ポッジオ)は思っているよりもきつくないと言っていたが、そもそもレースの総距離が違うから全く異なって感じるんだね。

ヒンカピー 下見をするとたった平均4、5%のなんてことない登りなんだ。でもレースだとそれまでに走ってきた距離や、登りに突入する最初の選手20人たちのスピードだとかなりきつい。峠の表情が全然違って見えるんだ。

地元のヒーロー

ーー君を含め何人かの元選手たちとこのレースを観ていたんだけど、君たちは走ってる選手に感情移入していたね。テレビを観ながらヒヤヒヤしていた。

ヒンカピー そうなんだ。僕を含め、観ていたみんなミラノ〜サンレモを5〜10回は走った経験がある選手たちだから、いまテレビに映っている選手がどれだけリスクを取った走りをしているのかがわかってしまう。だから、ホント自分じゃなくてよかったとホッとしていたよ。笑

ーー先頭集団から一人の選手が飛び出したよね。発音に自信ないけど…(ニッコロ)ボニファツィオ(イタリア/ディレクトエネルジー)

彼は地元出身の選手なんでしょ?だからこそ、あの道を知っていた。

ヒンカピー それは君に言われるまで知らなかったね。是非とも彼のStravaデータを見てみたい。過去最高のスピードで下ったんじゃないか?

ーー彼はモトバイクの後ろについていたけど、下りでも空力効果はあるのかい?

ヒンカピー もちろんさ。あれの有無でポディウムを失ったり、逃げ切りが失敗したりするからね。また、レースではテレビに映る選手はモトバイクの恩恵を受けるものさ。

ーーモトバイクも邪魔にならないように、できる限りの走りをしていたよね。

ヒンカピー ああ。でも、道幅てきに難しかった。そして彼(ボニファツィオ)はあの小さな街でヒーローになったろだうね。

ーーああ。ホントにカッコよかった。

アラフィリップの次なる目標

さて、そろそろレースのフィナーレの話に移ろうか。本当に興奮するラストだった。あの集団で勝てそうな選手が何人かいたわけだけど、そこでも君はやはり勝者を言い当てた。

ヒンカピー ははっ、そうだね。また当たった。数日前にティレーノ~アドリアティコでのアラフィリップの走りを見て、彼が勝つと予想したんだ。登れて、平地スプリントにも強い。調子も良い。また当たって嬉しいよ。

ーーでもシーズンにおける調子の上げ方が、かなり早くないか?しかも若い。一体あの強さは何なんだい?どうして彼はあんなに強いの?

ヒンカピー アラフィリップはいま間違いなくトップ・フォームだし、この勢いはまだまだ続くだろうね。でも今は次の目標とするレースまでは、しばしの休息期間にはいるだろう。

アムステル・ゴールド・レース(4月21日/オランダ)かリエージュ~バストーニュ~リエージュ(4月28日/ベルギー)あたりを、次の目標にしてくるだろう。

僕の予想ではドワールス・ドール・ブラーンデレン(4月3日ベルギー)や、ベルギーのクラシックとかは狙ってこないだろうね。だからこの後は休んで、フレッシュ・ワロンヌ(4月24日/ベルギー) から再開するんじゃないかな。

ーーたしかにこの好調をずっと維持はできないだろう。自転車選手の調子は山と谷みたいなものなんだろう?

ヒンカピー ああ、その通りだ。

ーー休まないと、無理しちゃうと身体を壊して、残りのシーズンを棒に振ってしまう恐れもあるもんね。

ヒンカピー いまはリカバリに専念するべきだ。もしチームがアラフィリップをカタルーニャ一周に出場させたら驚くけどね。バルベルデはこのあとカタルーニャに向かうだろうけど、アラフィリップは走らないと思うよ。
 *アラフィリップはこの後バスク一周レース(4月8~13日/スペイン)に出場予定。

クラシックで注目の選手たち

ーーそのアラフィリップの対抗馬だったのがペーター・サガンだった。プロトンの中で一番愛されている選手。

ヒンカピー プロトンの中の選手から?それともファンから?

ーーごめん、ごめん。ファンからだ。プロトンの中にいる選手からの愛されているは…どうなんだろうね。

ヒンカピー 体調不良から上がってきたみたいだね。ティレーノ~アドリアティコでも二位や三位だったし。今日も4位だっけ?決して悪くない。どうせフランドル辺りで彼の調子は絶頂にいるだろうからね。

ーーまだまだ続いていくクラシック・シーズンで注目の選手は誰だい?

バルベルデ(38歳/スペイン)かな。今日も先頭集団に残っていたし。またマッティオ・トレンティン(29歳/イタリア)も調子が良さそうだった。今日も下りでアタックをしたけどパワーを使いすぎてしまったようだね。でも、調子の良さは見せた。

それにファン・アールト(24歳/ベルギー)も、世界トップの選手しかいない6〜7人の集団に残っていたんだ。この長い距離であの集団に残るなんて、ちょっと信じられない走りだね。