ここがヘンだよ自転車ロードレースのスポンサー

スカイからイネオスへ

ーー決まりましたね。

ああ、俺の予想に反してな。

ーーチームスカイの新スポンサーが発表になり、5月1日よりチームイネオスとなります。

イネオスって、ギリシャの神か何かか?

ーー響きはそんな感じですが…べつに関係ないみたいですね。でも崇め奉りたくなるほど大きな会社です。

2017年の収益が850億ドル(9兆3千億円)か。

ーー売上高だけで400億ドル(約4兆5千万円)、会長のジム・ラットクリフの総資産だけで約3兆円です。

どうしてイギリスはこいつを首相にしないんだ?こんなに優秀なら国内の問題がすべて解決するだろう?

ーーどうやらブリグジット支持派の筆頭みたいですね。

じゃあダメだ。ブライルスフォードもエラいヤツに魂を売ったもんだな。

ーーこの話題、深入りします?

やめとこう。俺のポッドキャストで一番多いリスナーはイギリス人だ。矢文が飛んでくる。

増額でやっかみ不可避

ーー英衛星放送スカイのスポンサー撤退が発表されたのが2018年12月。そのわずか2ヶ月前にはゲラント・トーマスと3年契約、エガン・ベルナルとは異例の5年契約、そしてイヴァン・ソーサと契約(1年)を結んでいます。

つまり、スカイの撤退はデイブ・ブライルスフォード(チームスカイGM)にとっても青天の霹靂だったというわけだ。

しかし、思ったよりも早い段階でイネオスとの契約が固まっていたのかもしれないな。

スポンサー探しに必死になっていたら、あんなに国外のレースに帯同できていないはずだ。

ーー2017年に同様の危機に瀕したキャノンデール(現EFエデュケーション・ファースト)のジョナサン・ヴォーターズは、スポンサー探しに飛び回っていましたからね。

いまの50億円から運営資金が、60億円近くに増額されるんだろう?

こりゃすごいな。

ーー他チームだと高くて20億円程度ですし、EFエデュケーションファーストは約15億円と言われています。およそ3〜4倍の資金ですね、すごい。そして、更に嫌われそうです。

ああ。ただでさえ金でツール優勝を勝ったロボット集団と言われているのに、さらに資金を増したとなればやり玉に上がるのは避けられないだろう。

それにいまのUCI会長はラパルティアンというワーカホリックなフランス人だ。グランツールを6人制にしようするなど、とにかく合法的にスカイを落とそうと必死だからな。

ーーASO(ツール主催者)も、イギリス人ではなくフランス人に勝たせようとレースを作っていますが、結果的にフルームやゲラント・トーマスにも有利になってしまっています。逆に対抗となるデュムランやログリッチがジロを選んでしまうという、悪影響もあって…

愉快だな。どっちにしろ今年もツールよりジロが盛り上がるのは間違いないだろう。去年も面白かった。

ディレクト・エネルジーの新スポンサーはイネオス以上?

Embed from Getty Images

そう言えば、イネオスが騒がれている裏でもう一つすごいスポンサーがついたチームがいたんだろう?

ーーフランス籍のプロコンチネンタルチームのディレクト・エネルジーですね。今年からニキ・テルプストラが加入しました。電気・ガス会社から、フランスの石油会社トタルに変わりました。それもシーズン途中のパリ〜ルーベからと、スタッフも色々と忙しいでしょうね。

給料が上がるだろうし、みんな文句はないんじゃないか?石油会社では世界でも5本の指に入るほど大きな企業だからな。

ーー2018年の総収入が2440億ユーロ(30兆円)って…もはや国家予算じゃないですか。ディレクト・エネルジーが約20億ユーロ(2,490億円)ですから、これまたエラい大企業に買ってもらいましたね。

チームスカイ以上の資金が投入される可能性だってある。なんならAG2RとFDJの3チームを合併させたらどうだ?それでもチームスカイには勝てそうにないのが悲しいけどな。

ーーノーコメントです。ディレクト・エネルジーの年間予算が12億円と言われていますから、どれだけ増額されるかに注目ですね。チームのGMであるジャン=ルネ・ベルノードーによると、2020年シーズンに向けた改変を狙い、ワールドツアーチームへの復帰を目指すそうです。

かつて自転車大国だったイタリア、スペイン、フランスが弱まり、イギリスや中東、最近ではイスラエルや中国の噂も出ている。その中でフランスがまた勢力を戻してくるかもしれないとは、面白くなってきそうだな。

ーージュリアン・アラフィリップというニューヒーローも誕生したわけですしね。

2つの巨大企業

イネオス(チームスカイ)とトタル(ディレクト・エネルジー)。この2つの企業の共通点がなにかわかるか?

ーーえっ、えっと…ヨーロッパの巨大企業ってぐらいしか思いつきません。

実はどちらも ”環境保護活動” に熱心な企業なんだ。

ーープラスチックを作る化学メーカーのイネオスに、石油を売るトタル。たしかに両者とも環境問題に積極的なアピールをしてバランスを取らないといけない商売ですね。

欧州での報道によると、トタルは年間2,200万ユーロ(27億円)を気候変動対策の法律を妨げるロビー活動に使っているらしい。

ーー27億円ですか。たしか昨年73勝したクイックステップの年間予算がそれぐらいでしたね。

驚くべきなのはここからだ。

トタルはその二倍近くの資金を、自然保護活動に費やしているんだ。

ーーそれ矛盾してるじゃないですか!最低だなトタル。テルプストラはそんな企業の名前を胸につけなきゃいけないんですか。なんか、すげー嫌だ。

そして、イネオスも似たようなもんだろう。

UCI規則の形骸化?

Embed from Getty Images
チームスカイが2018年ツール・ド・フランスで着用した、プラスチックパッケージの使用を制限するキャンペーン「スカイオーシャンレスキュー」の特別ジャージ

ーーあれ?でもUCIの規定に、そういったネガティブなイメージを与える企業がスポンサーになれないルールありませんでしたっけ?

ああ。たしかにタバコや酒、ポルノなど、自転車のイメージを損なう恐れのある企業は、直接的または間接的にも関わることを禁じられている。

しかし、だ。

ーートタルもイネオスも、それには当てはまらないわけですね。石油とプラスチックと、どちらもインフラの一部ですし。

しかしまぁ、プラスチックを減らそうとキャンペーンを打っていたチームが、翌年にそのプラスチックを欧州で最も生産する企業をスポンサーに迎えるとは、皮肉すぎてジョークにもならないな。

ーーアメリカ人を持ってしても、ブラックジョークになりませんか。

また、この「サイクリングのイメージを損なう」という基準の線引きも難しい。例えばUAEとバーレーンだって、決して印象のよい国とは言えない側面もある。

ーーある意味、イネオスやトタルよりもこの2チームの方が明らか…な気がします。

そうなんだが…2016年の世界選手権がどこで行われたか覚えているか?

ーーカタール、ですね。

中東は見事、お墨付きを得たわけだ。

ーーなんか知れば知るほど、レースが素直に楽しめなくなってきますね。

自転車は至極クリーンな乗り物だが、金の集まるプロのレースだと、そう単純にはいかないってことだ。

また次回!

Source: CyclingWeekly, CyclingNewsCyclingWeekly