ここからみんなをクリス・フルームの旅に招待しよう。
この数日、旅に出ていた。キッカケはもちろんクリス・フルームによる第19ステージの大逆転劇だ。
感想を正直に言おう。うんざりした。もう、うんざりなんだよね。勝利するクリス・フルームが。スカイの勝利なんて見飽きたよ。
それにスカイが発信し続けている「クリーン」のメッセージも胡散臭いし、サルブタモールだけじゃなくTUEの問題(ウィギンス)なんかも、とにかくうんざりなんだ。
だから僕の第19ステージの率直な感想は、
「どうせイカサマだろう?クリス・フルームはどうせドーピングしたんだろ?というか、そもそもジロに出場するべきじゃなかったんだ!」だった。
それら不満をツイッターの下書きに書いては…削除。これを繰り返していた。ホントに投稿しなくてよかったよ。あそこで自分を抑えられた僕は懸命だった。
その後、数日の間、自転車に乗って、気分を変えながらフルームについてあれこれ考えてみたんだ。冷静にかつ合理的にね。
そしたら、ある結論に至ったんだ。
「そもそも、クリス・フルームがイカサマをするんだったら、なぜこのジロだったんだろう?」って。
フルームは膨大な数の精密検査を受けていて、スポンサーがついていて、ジロに出場するだけで(成績関係なく)主催者から2.6億円も貰うのだろう?*あくまでも噂
つまり、フルームにプレッシャーがめちゃくちゃかかっている状態で、ドーピングのリスクを背負って実行したってこと?
そんなことしたらせっかく貰った2.6億円がパーになるし、彼の立派な業績の中で、ジロをドーピングしてまで勝つ意味があったのだろうか?
「ドーピングするリスク」対「ジロを勝利するメリット(報酬)」
この2つは釣り合わないなんだよね。デメリットの圧勝だ。頭の良い人なら絶対にしない。
これがまずひとつ、僕がたどり着いた答えだ。
その後に考えたのが、僕の個人的な「クリス・フルーム勝利への怒り」という問題だ。
まぁこれが僕だけではないことは、ツイッターやその他SNSを見れば明らかだよね。
自分の中を探って「僕はクリス・フルームの勝利の一体何に落胆しているか?」を考えたんだ。
すると、それは単純に「彼が僕の応援するチームではないからだ」ということが分かった。
応援するチームやヒーロー(選手)が勝つ。それはスポーツを観るファンには最もベーシックな心理だからね。
もし君がクリス・フルームのことが嫌いで、彼の勝つシーンなんて観たくなくて、ドーパーだと思っているなら、ソファに腰かけて自分に正直になってみてほしい。
「フルームのライディング・フォームがかっこ悪い」以外で、フルームを嫌いになる理由はあるのか?、と。
人によっては「大好きなアルベルト・コンタドールをボコボコにした」からフルームが嫌いっていう理由もあるだろう。
「スカイが一番お金持ちなチームで、自転車界に新しく現れたイギリスの手先だから(鼻持ちならない)」という理由とかね。
あとは、スカイがどこか胡散臭かったり、気取っていたり、空気を読まなかったり、そのくせとにかく勝ちまくるし、優秀な選手で集団を抑える退屈な戦術だし…
それが、それらが、君がクリス・フルームが嫌いな理由?
もしそうなら、それでいい。何の問題もない。
僕もクリス・フルームはかっこ悪いと思ってるし、コンタドールが大好きだから共感するよ。 それに「ずっとサイクルコンピュータを見つめながら走る姿が気に入らない」からね。
このように、クリス・フルームの嫌いな所ならいくらでも挙げられる。挙げればキリがない。
でもね。
だけど、だ。
これら「クリス・フルームが気に食わない理由」と、「フルームは第19ステージはドーピングしたはず」という理論には大きなギャップ(隔たり)があるんだ。
現時点でクリス・フルームがジロでイカサマをした証拠なんて何もないんだからね。
僕はフルームやスカイが嫌いだ。
なぜだか分かる?
それは、彼らが僕の応援するデンバー・ブロンコス(コロラド州デンバーのアメフトチーム)じゃないからだ。
でもそれがクリス・フルームがドーピングした証拠にはならないんだよ。
そもそもサルブタモールってなに?
その喘息薬に「フィネストレ峠から80kmを単独で逃げ切る」ほどの効果があるの?
僕はそうは思わない。
サルブタモールには「ライバルたちが逃げを容認してくれて、追わずに後ろで待ってくれる」効果まであるワケ?そんなわけないでしょ。
そういうこと。
そういうことなんだよ。
あっ、あと「フルームのとんがった肘が弱っちくて嫌い」ってのもあったね。
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語り手:VeloNews編集長 Frederick Dreier (@freddreier)
【追記(2018.7.2)】
2018年7月2日、UCIはクリス・フルームのサルブタモール問題に関する手続きが終結したと発表。つまり同選手は正式に2017年ブエルタ、2018年ジロの総合優勝であることが認められ、2018年ツールにも予定通り出場する。