ウルリッヒは元気だよ。ランスの2019年ツール第5stレビュー

二つの3級山岳と二つの2級山岳で脱落していくスプリンターたちの中、大方の予想通りペーター・サガン(スロバキア/29歳)が自身のツール12度目となるステージ勝利を上げた。

チームを失う選手たちの行方

ツールが開幕直後から絶えることがないカチューシャ・アルペシン解散の噂。報道によるとメインスポンサーであるカチューシャが今季限りでの撤退し、解散かどうかは不透明ではあるものの来季以降の契約が残る選手に関しては解除すると伝えられている。

ーートップ選手はチームから狙って獲得されるのだろうけど、それ以外の選手たちに所属チームを探してくれるような代理人とかはいるの?

ランス・アームストロング:(カチューシャに)25人の所属選手がいるとして、10人は何の問題なくチームが見つかるだろうな。だがその他の15人、特に下の5〜10人は血眼になって探さないといけないだろうな。

ジョージ・ヒンカピー:その(上位)10名も契約を得るのに問題はないけど、交渉で優位な立場は取れないだろうね。なぜなら来年の契約がある選手の移籍先を、その代理人は最近まで探していなかっただろうからね。いま頃代理人は選手からプレッシャーをかけられていることだろう。つまりこの遅い時期にチーム解散の可能性というこの状況は選手の価値を下げてしまうんだ。

ウルリッヒの現在

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ドイツ人で唯一のツール総合優勝者でランスのライバルだったヤン・ウルリッヒは、昨年8月に売春婦に暴行をはたらいたとして警察に勾留され、その後精神科に入院。現在はアルコール依存症の治療にあたっていると言われている。そのウルリッヒの近況をランスが語った。

ーー今日のステージはヤン・ウルリッヒが若い時に住んでいた街を通ったね。彼に関する最新情報は…何かあるなのかな。

ランス:俺たちがヤン(ウルリッヒ)と競い合っていた頃、俺たちはポスタルでヤツはテレコム、Tモバイルなどのチームにいた。

その頃彼は今日のフィニッシュ地点コルマールから車で30分程度の街メルディゲン*に奥さんと住んでいた。ここで言いたいのは兄弟(ウルリッヒ)を愛しているということと、あとファンに彼の情報をアップデートしたいということだ。多くは知っていると思うが、俺は彼のところに訪ねにいったし、一週間ほど前に連絡と写真がきた。ヤンは元気だし、約9ヶ月間断酒している。自転車にも乗りはじめたし、人生を取り戻した感じだ。だからファンもファンでない人も、彼の健康状態はとても良いってことを伝えたい。

*地名が聴き取れず

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フィニッシュして10秒で包囲

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ーー今日、君たち二人の反応を見ていて面白かったのが、フィニッシュラインを越えた直後10秒でサガンが囲まれていたシーンだ。ジャーナリストやカメラマンの一団からカメラを顔に向けられ、マイクを突きつけられていた。それを見て君たちは、ため息をつくような表情をしていたね。

ランス:ジロやブエルタだと群衆に放り込まれるが、ツールは他のどの大会よりも選手を守ってくれる(はずなのに…)。

今しがたタフなステージを終えて、勝利して、取り囲まれて、どうして(取り囲むのだろうか)…。とにかく素人の大会みたいに見える。F1レーサーが勝った瞬間、レーシングカーから飛び出して、GoPro持った地元の肉屋に突撃されてる姿を想像してみてくれよ。マジかよ?って思うだろう?

ヒンカピー:ちょっとその意見は反論させてもらおうかな。

僕はこの選手たちみたいに何回も勝っていないけど、グランツールや世界選手権のフィニッシュラインを一位で越えるんだよ?幸せの絶頂で、周りに誰がいるかとか関係ないだろう。チームメイトも近寄ってくるし、成し遂げた大きな成果にしか目に入ってこない。

これは僕の視点からの意見だし、もちろんもっと勝っているサガンにとって迷惑なのかもしれない。そして(多くの勝利を上げてきた)君にとっても同じかもしれないけどね。でも多くの普通の選手にとって勝利したらそんなこと関係ないね。

ランス:肉屋であってもか?

ヒンカピー:関係ないよ。