「力は技術を凌駕する」世界最強ガンナのTTポジションをウィギンスが解説

「トム・ボーネンとブラッドリー・ウィギンス、ファビアン・カンチェラーラに憧れたイタリア人は、その3人を一纏めにしたような走りでジロのステージを制した」

2020年ジロ・デ・イタリア第1ステージ。グランツール初出場で自身初となるステージ優勝を挙げたフィリッポ・ガンナ(イタリア/24歳)を、現地の実況はこう表現した。

そして2012年ロンドン五輪個人TT金メダリスト、2014年世界選手権個人TTでアルカンシェルを獲得したブラッドリー・ウィギンスは、新星のごとく現れた若手の走りをこう分析する。

「彼のTTポジションは悪くない。だが、その推進力を生んでいるのは(それらを凌駕する)パワーだ」

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194cm/82kgという恵まれた身体のガンナは、8月のイタリア選手権個人TTで2連覇を果たすと、1ヶ月後には世界選手個人TTで優勝しアルカンシェルを獲得。そして僅か1週間後のジロ・デ・イタリア第1ステージで、悪天候と悪路のなか突出した走りを見せ勝利を挙げた。

「彼はTTバイクでよいポジションを取っている。しかし(その程度が)俺とは違う。俺も良いポジションをしていた。俺は肩幅が狭く(風を受ける)面積も少なかった。脚だって痩せていて細身だった。それらが(TTを速く走る)助けになっていた。身長や身体の大きさが力を発揮する際のテコになってくれたんだ」

「しかし、(ガンナのように)あれほど身長と体重のある選手には苦労が伴う。82kgもあると、筋肉など身体を小さく縮こませなければならない。その大きな身体で風を切りながら進まなければならないからね。ガンナのTTポジションは悪くないのだが、他の選手の方が空力性能のよいフォームで走っているように見える」

ウィギンスはガンナの速さを、ポジションではなく、その恵まれた体躯から生み出す出力によるものだと(身も蓋もない分析を)語る。

「つまり彼の(それらを凌駕する)パワーが推進力を生んでいるのだ」

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「例えばカンチェラーラのポジションはそれほど(空力的に)優れてはいなかった。あの活躍を生み出していたのはパワーなんだ。風洞実験などでの試行錯誤によって素晴らしいポジションで走る選手がいる。しかしガンナは違う。パワーなんだ。それこそが俺と彼の違いだ」

パワーで押し切るガンナと、最大出力に近いパワーを出せるギリギリの姿勢を見つけ、それを長時間に渡り保つことでタイムを出すタイプのTTスペシャリストたちを、ウィギンスはこう比較する。

「G(トーマス)やフルームのTTポジションを見てみると、ガンナと同じような身長なのにも関わらず、まるで半分の体積しかないように見える。そこが驚くべきところなんだ」

「本来なら彼(ガンナ)はTTの時にあの大きな肩をどこかにしまっておかなければならない。つまり(空力的に優れていないフォームなのに速いということは)それだけ彼の脚が作り出すパワーが圧倒的だということだ」

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